また、CD発売日に先駆けて、〈予約注文会〉の形でこの特典会が実施されるケースもままあるのですが、そうなると、CDというブツがないにもかかわらず、本来おまけであったはずの特典会の〈権利〉のみが架空で取引されている気がするのです。ジャケ写すら発表されておらず、「NOW PRINTING」と書かれていると、通常盤タイプAとタイプBの実質的な違いはゼロで……となるとですよ、ほんとに何を売って、何を買っているんだろう、と思えてきます。
ただ、「特典会なんてなくなればいい!」と断罪しきれないのは、特典会の様子を何度も見たことがあるからです。全国各地を行脚しながら、1日に何人ものファンと握手して、サインして、撮影して……アーティストの側からしたら、たいへんな努力を払っています。個人と個人の生のふれあいですから、流れ作業とはいえ、かなりのエネルギーを消耗すると思うんですよね。汗をかいて、足で稼いで、体を張ってCDを手売りしている姿を目の当たりにすると、この商法を完全に否定することは難しいです。
こうした努力はすべて、売上を上げるため、そしてオリコンになんとかランクインするためだと思うと、涙ぐましいかぎりなのですが、その努力の対価として、ファンが同じCDを何枚も買うよう誘導される、というのが、やはりどこかで納得できません。「CDを買ってくれたファンに少しでもお礼をしたい」「好きなアーティストと間近でふれ合いたい」、そもそもの動機やスタートはシンプルだったはずなのですが、どこかアンバランスに歪んでしまった特典会、これからどうなっていくのでしょうか?
今週の当番=風田チヌ
オリコンが4月にミュージックカードのランキング合算集計を取り止め、6月1日にはコンサートチケット付きCDの集計も取り止めたので、こんなことを考えてしまう日々。
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