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「ライトにヤレそうな女」が「めんどくさい女」に変わる無慈悲

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photo by Bruno Quinquet from flicker

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 ちょっと古いデータではありますが、国立社会保障・人口問題研究所がだしている「第14回出生動向基本調査(2010)」によれば、18歳〜34歳の未婚男性の6割、同じ年齢層の未婚女性の5割が「交際している異性はいない」と答えているそうです(出典)。

 この数字は、過去最低のもので男女ともに年々「非異性交際率」が上がっている傾向にあるようです(2002年調査と比較して、男女ともに8ポイント以上の上昇)。これだけ世の中にカップルがいないのは「草食系男子が女性を誘っていないからだ」などと小銭を稼ぐコメンテーターの方々なら言うでしょうか。

 同じ調査では異性との交際をしていない男女に対して「交際を望んでいるか/望んでいないか」も聞いています。その結果は、交際を望んでいる男性は全体の32.6%、女性は25.7%、逆に交際を望んでいない男性は全体27.6%、女性は22.6%となっており、ちょっと整理すると「彼氏/彼女がいない人の、半分よりちょっと多くが、パートナーを欲しいと思っており、残りは別に興味がない」ということになるでしょう。男女ともに似たような傾向があるわけですから「男性が異性交際に興味がない草食系だから、カップルが減っている」と一概には言えなさそうです。

 原因のことはさておき、この調査からは、結婚するのが当たり前、彼氏/彼女がいるのが当たり前という世の中ではなくなってきていることが感じられます。この状況は長期的にみれば出生率低下も招いて大変かもしれませんが、短期的には結婚式会場、あるいはモテや恋愛を煽ってモノを売る商売ぐらいしか困らなさそうなので、大抵の人が現時点では、そういう世の中になっていてもどうでも良い話に感じられるハズ。異性と付き合ったり、遊んだり、セックスしたりするよりも楽しいことがあるからこういう結果がでているのでは……とは薄々感じられます。

 とはいえ、マスメディアというのは、人を煽るのが仕事のひとつみたいなところはあるでしょうから「そうは言っても、お前らモテたいんだろ? モテる方法教えてやるよ」的な「モテたい前提」(略して『モテ前』)な記事は途切れることがありません。最近ではこんな男性向けの記事がありました。

「いい人」なぜモテないのか 自分が女性に選ばれると自覚せよ
(http://www.sankeibiz.jp/econome/news/130720/ecc1307201800002-n1.htm)

 ウホッ、良いモテ前記事、と無意味に興奮してしまいそうですが、落ちついて少し要約します。

1.           どんな女も発情する男を目指すのは難しい
2.           そこそこ普通の人なら、清潔で、積極的に女性を褒めておけばセックスできる
3.           そこそこ普通の人なら、女の人は「あ、この人ならセックスしても良いかな」と思えちゃうんです!
4.           チンチンが小さくても大丈夫ですよ!(女はそんなに気にしてないですから!)
5.           デート中、シャツのボタンを1つ、2つ開けているだけで女性は興奮します!

 「モテ=セックスができること」と短絡的に考えられ、ヤること前提(略して『ヤる前』)な記事になっているところから「モテるってそういうことかあ……?」とツッコミたくなったのですが、1~3のポイントは、個人的に「あー、そういうことってあるかもねえ」と思わなくもなかったです。適当に面白い話をして、適当に話を聞いて、ちょっとお酒を飲んだりなんかしちゃって「あー、どうする? もうちょっと飲んでく?」とか言ってたら、なんかそこそこ上手いこといっちゃったりするじゃないですか。

 しかし、女性を褒めて、相手を気持ちよくさせるアドバイスとしてこの記事が掲げている「待ち合わせ場所に現れた女性には『すごくかわいい』でいいし、しばらく一緒にいる時間をすごしたなら『こんな時間がすごせるなんて夢みたいだ』と声に出せばいい」は、ちょっとないな……『耳をすませば』の世界の恋愛をしてるわけじゃあるまいし……と思いましたし、シャツのボタン開けたぐらいで女性が興奮するのはありえないだろ~それこそまさに「ただし、イケメンに限る」だろ~……という感じではあります。

 第一、これって女性の側にもあんまりな記事ですよねえ。【まずは「セックスしても構わない層」狙いで!】という見出しで、男性ヒエラルキーの図も掲載されているのですが、段階的には「(女から見て)セックスしたくない層」が最下位で、頂点は女から「抱いて!」と寄ってくる層。最下層にいる「いい人どまりの男」が、頂点にのしあがるのは高難度なので、「まあヤッてもいいかな」と女に思わせる層へのステップアップをしよう、とすすめています。

 ……って、やっぱり付き合うとか結婚するとかいう発展性のある「モテ」じゃなくて、とりあえず女とセックスできる男になろう、って話なんですよね。ということはですよ、女性側が「あれ? Aさんってただのいい人だと思ってたけど、最近セクシーだわ。どうしよう、これって、恋……?」なんて真剣交際を考えて男に近寄っていったとしても、男側は「やった! 清潔感と会話力を磨いたおかげでモテてるぞ! よーし、ヤリまくってやるぅ~」と調子に乗ってしまうだけではないでしょうか。

 男も女性から選ばれる立場にあることを自覚し、己を磨いておけという主張をしている記事ではあるものの、結局、男側が「この女ならセックスさせてもらえるだろう」という値踏みをしてこそ関係が成立するという前提。一度セックスをすると情が移ってしまう、というのは世の常であっても、その後、女がヤリ捨てられる可能性がすごく高いと思います。女性の側もそれで割り切っているなら良いとして、そろそろ結婚とかもしたいし~、みたいな女性が、“ヤる前”で来ている男の相手をするのって、将来的な目標に対して、プラスにもマイナスにもならないのでは……(時間の浪費になってしまう点を考慮すれば、明らかにマイナスです)。

 「この人ならセックスしても良いかな」的なライトな感じで関係を進めていくと、もし、女性の側でこの関係をもうちょっと本気で続けてみたい、と思ったとしても、「あれっ? 意外とめんどくさいんですね」と男に疎まれてしまうのではないでしょうか。ライトな感じで始まっていることから「この女、めんどくせえな」と思われた時点で、スミマセン、サヨウナラ、となりがちでしょう。異性よりもモンハン、異性よりもYoutube、異性よりも2chのまとめサイト……といった具合に、恋愛よりも面倒くさくなくて、そこそこ楽しいことがいくらでもある昨今ですから、面倒になったらすぐ関係を切られてしまうのは当然なのです。他とは比べようがないサムシングでなければ、恋愛は続けられません。

■カエターノ・武野・コインブラ /80年代生まれ。福島県出身。日本のインターネット黎明期より日記サイト・ブログを運営し、とくに有名になることなく、現職(営業系)。本業では、自社商品の販売促進や販売データ分析に従事している。

カエターノ・武野・コインブラ

80年代生まれ。福島県出身のライター。

@CaetanoTCoimbra

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