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クリーン化が孕む性産業従事者への差別問題とジェンダーは矛盾しないのか

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(C)柴田英里

(C)柴田英里

 少し前の話になりますが、クールジャパンとして国策になっている“萌え”文化を通じ、志摩市の観光PR・海女PR・地元愛につなげるべく作成されたという三重県志摩市公認海女キャラクター「碧志摩(あおしま)メグ」に対して、海女を侮辱している」とも「女性軽視である」という観点から「公認撤回」を求める署名がおこりました。

 「ゆるキャラ」含め、観光地がキャラクター商法に走ることがすっかり当たり前になってしまった近年では、「萌えおこし」と呼ばれる美少女キャラクターを前面に押し出した地域おこしやアニメとのタイアップによる宣伝なども多くあります。

 メッシーでも記事になりましたが、個人的には私は碧志摩メグ自体は「海女を侮辱している」とも「女性軽視である」とも、「おぞましい」とも思いませんでした。

海女モチーフの萌えキャラが「おぞましい」理由

 しかし、以下のような歴史を踏まえて考えると、近隣の海女から「観光地を、海女を、性的なイメージで宣伝しないで欲しい」という抗議が出ることも妥当であると思います。

●近隣には江戸時代から休憩する船乗りを相手にする把針兼(はしりがね)と呼ばれる遊女が集まり、昭和になっても遊郭の機能が維持された渡鹿野島、俗称“売春島”があること。

●江戸時代、質素倹約令で旅行や贅沢が制限されたおりに、信仰という名目で伊勢神宮に参拝がてら旅行する帰路において、遊郭などで豪遊することが「精進落とし」と呼ばれ、「お伊勢参り」の定番とされていたことなど、日本では昔から、「観光」と「性」は結びつきやすいこと(「秘宝館」なども観光地に多い)。

●伊勢神宮付近の宿泊地古市には女郎屋がたくさんあったこと。

 また、萌え絵を許容するオタク側から、「碧志摩メグへの抗議」に対して、「ババアの美少女に対する嫉妬乙」や「黙れブスフェミ」といったミソジニー全開の言動が出たことも確かで、それについては遺憾です。とはいえ、「表現を規制すること」の問題や、「観光から性を漂白し、性的な要素を含む観光があった時代を忘却し、健全な観光地を目指そう」という“クリーン化”が孕む性産業従事者への差別問題などという観点からは、「観光地を性的なイメージで宣伝しないで」という視点はなんだか腑に落ちません。

 最大の疑問は、2004年には渡鹿野島における行政の隠蔽の下での公認売春の実態を論述した研究書『近代日本の売買春』(藤野豊、解放出版社)が、志摩市行政から激しい抗議を受け回収絶版になった事例があるにも関わらず、志摩市行政公式が“乳袋”“はだけたスカート”“彼氏募集中の17歳”など、性的な要素があると判断されてもおかしくないデザインのキャラクターを観光事業のために採用したことです。

 なぜ、志摩市はこのキャラクターでPRしていこうと決定したのでしょうか?

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柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」

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