インタビュー

日本人の九割は「下流老人」になることが決まっている 『下流老人』著者・藤田孝典氏インタビュー

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『下流老人』(朝日新書)著者・藤田孝典氏

『下流老人』(朝日新書)著者・藤田孝典氏

今年6月、東海道新幹線で71歳の老人が焼身自殺をして、巻き込まれた男女2名が死亡。上下計43本が運休し、106本が最大4時間半ほど遅れるという事件が起きた。その後の報道で、この老人が事件の1年ほど前から「生活が苦しい。家賃(月4万円)を安くして欲しい」と家主に相談していたことが判明し、注目を浴びつつあった「下流老人」が、さらに周知されることとなった。

「下流老人」とは、埼玉県で生活に困っている方の相談事業を行っているNPO法人・ほっとプラス代表理事の藤田孝典さんの造語で、「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」を指す言葉だ。藤田さんは東海道新幹線焼身自殺事件が起きた6月に刊行した『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新書)において「高齢者だけでなく、いまの若い世代も含めた日本人の9割が下流老人になる」と警鐘を鳴らしている。つまり下流老人の定義に従うならば、日本人の9割が生活保護レベルの生活を送ることになる、というわけだ。

「一億総中流社会」が崩壊し、「一億総老後崩壊」へと移行しつつある日本の現在を描いた藤田氏に、いま私たちに何が出来るのか、そして社会制度をどのように変えていくべきなのかについてインタビューを行った。

みんな自分のことで手一杯

―― 今年6月に、東海道新幹線で焼身自殺をはかった老人は、事件を起こす1年ほど前から、「生活が苦しい。家賃(月4万円)を安くして欲しい」と家主に相談していたことがわかり、彼も「下流老人」であったとたいへん話題になりました。事件を通して多くの人が、老後の生活に対する不安や問題意識を共有したように思います。本書は藤田さんの造語「下流老人」がタイトルになっていますが、どんな意図を持って出版されたのでしょうか?

藤田 近年「子供の貧困」や「若者の貧困」がクローズアップされるようになりました。高齢者の貧困も注目を浴びつつありますが、不安を煽るばかりで、具体的な対策方法や現状はまだまだ伝わっていない。それらをまずはまとめる必要があると思いました。

そして、いま漠然と不安を抱えている若者に将来のことを知ってほしいという意図もありました。「下流老人」とされている高齢者は、高度経済成長やバブルを経験し、資産を蓄えやすかった最も豊かな世代です。その世代すら貧困に陥っている人たちがいるということは、若者世代の老後はより悲惨なものになってしまうことになる。今のうちに現実を知っておく必要があるんですよね。

―― 「下流老人」という言葉はそうとうインパクトのあるものですが、読者からはどのような反応がありましたか?

藤田 「差別的だ」という意見もありますが、本書を読んで下さった方は「一億総中流」はもはや幻想で、誰もが「下流老人」に陥ってしまうんだと受け止めて下さっている印象です。

書いているときは、50代が本を最もよく手に取るんだろうと思っていたんですよ。でも年金不安や雇用の崩壊、非正規雇用の広がりを受けて、不安を抱えている30代や40代、そしてブラック企業に犠牲になっている20代も本書を読んで下さっています。

―― 世代ごとの反応に違いはありましたか?

藤田 60代だと「もう手遅れだよね」という諦観の反応が見られますね……。若い世代の場合は自分の親を見て「どうなるんだろう」「自分のことで精一杯で親の面倒なんてみれない」と考える人がいるようです。

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