炎上と免罪
昨年7月と12月、1年に2回も逮捕勾留され、起訴までされてしまい現在絶賛裁判中の美術家・漫画家であるろくでなし子さんも、ジェンダー関連の発言で炎上することが度々ありました。彼女の場合は反フェミニズム思想や強いミソジニーを持った人とのTwitter上のやりとりが炎上したり、フェミニストとのTwitter上のやりとりが炎上したり、様々な観点から炎上していましたが、重なる炎上と逮捕勾留裁判という経験値を稼いだ彼女は、誹謗中傷に対しては適切な法的措置をとれるスキルを身につけ、炎上対応のプロフェッショナル(?)になりつつあります。
炎上した時に自分に非があった場合、適切な謝罪が求められることがありますが、謝罪であるにも関わらず「でもでもだって」というような言い訳や時には逆ギレを発揮する人がいることも事実です。謝罪に“多くを求める”人も案外たくさんおり、「そんなんじゃ謝罪になってない、やり直し!」と炎上がさらに燃え広がることもあります。適切な謝罪力には大きくわけて2種類あるでしょう。
1つ目は、炎上の原因を真摯に受け止め、誠実な謝罪&発展的な議論を起こす社会貢献型、もう1つは人間性やおもしろさによってなんとなく許されてしまう炎上芸人・免罪体質型です。
ろくでなし子さんの場合は、「ろくでなし子」という脱力を誘うネーミングや、被害妄想に走らない明るいキャラクターが炎上芸人・免罪体質型の謝罪効果を発揮し、いつも一人で泣き言も言わずに戦う姿勢が社会貢献型の謝罪効果を発揮しているように思います。
炎上芸人・免罪体質型、社会貢献型のどちらでもないのに、謝罪だけで何事もなかったかのようにうまく切り抜けたのは、2015年3月にCMが大炎上した商業施設『ルミネ』ではないでしょうか。
フォトグラファー蜷川実花やコピーライター尾形真理子といった、女性からの好感度が非常に高い人材を起用し、「女性が自分の人生を楽しむためのおしゃれを応援する」主旨の広告を多く打ち出していたルミネが、職場でのセクハラ・パワハラ、ルッキズムやエイジズムを肯定しているととられても仕方ないCMを作ったのですから、単純に女性軽視の観点にプラスして、「今までの広告のリテラシーはどこにいった?」というルミネのCMが好きだった層の怒りを買うのは必然でした。
これに対してルミネは速攻CM動画を削除のち、簡潔な謝罪文を表明しました。迅速な対応と簡潔な謝罪文(言い訳しない)というのは、とにかく炎上を納める手段としては効果的です。2020年東京オリンピックのエンブレム問題が象徴的でしたが、謝罪に多くを求め過ぎ、相手がいくら謝っても絶対に許さないという姿勢の人は、残念ながら一定数存在するからです。あまり発展的な議論を産むことはありませんが、迅速な対応と簡潔な謝罪文は、こうした「謝っても絶対に許さない」という姿勢の攻撃をかわすには最適です。
もちろん、「なぜ炎上したか」を検証し、それを改善しより多くの人を楽しませる新たな広告を打ち出すことが一番の謝罪であり、有用な宣伝であることは間違いないでしょうが。
後編では、表現規制反対派と規制容認派の問題を中心に、近年のジェンダー系炎上問題を振り返ってみようと思います。
つづく!
1 2