しかし、これらはまだ小ネタかもしれません。本書のトンデモ的真打ちは〈トコちゃんベルト〉でしょう。
トコちゃんベルトとは、妊娠中の骨盤を支えるための妊婦定番アイテムです。骨盤全体を包み込むような一般的なコルセットと異なり、骨盤の下側をギュッと締めることができる構造が特徴です。人によっては妊娠中の腰痛が緩和されたり歩行がスムーズになるなどを実感できると思うので、それを目的に使うなら特に問題はないと思います。
しかし同書ではこれを〈妊活ベルト〉と紹介し、骨盤を整える体操では「骨盤が緩むと下垂した内臓に子宮が押しつぶされて『着床しにくい子宮』になるそう」と説明。この骨盤ケアは、トコちゃんベルト開発者のサロンが指導しているのですが、そもそもトコちゃんベルトのHPっていかにもエビデンスがありそうなそれらしい説明が書いてあるものの、ほとんどがトンデモなんだよなあ。
ベルトをすれば妊娠、って…
私も以前トコちゃんベルトの講習会に行ったことがありますが、骨盤ケアをしないと子どもの頭が歪んで育てにくい子になる! ゆるんだ骨盤に赤ちゃんがハマってしまい、逆子の原因になる。早産の原因etc.なんてうんざりするような話のオンパレードでした(公式ガイドブックらしき冊子にも、バッチリそう書いてあります)。
前出のように腰痛防止などのメリットもありますが、謳われている効果効能の8割は怪しげ。トコちゃんベルトを使ったり骨盤体操をしたからといって妊活効果を下げるものではないけれど、効果が高まるものでもないんではないでしょうか。ついでに「授かり骨盤!」とか言って、いかにも骨盤が妊娠に重要であるというようなイメージを植え付けるのも、アウト。
同書では過去の流産経験にも触れられていて、〈赤ちゃんがいなくなったってことは、このままの私じゃいけないってこと。それから体質改善しようと思って調べまくった〉と、妊活することになった経緯が語られています。大島美幸の場合は初期流産で「多くの人が経験すると知った」とあるので、わかったうえで書いているのは承知ですが、あくまでこれはふんわりした精神論。初期流産は遺伝子に何かしらのトラブルがあったり、たまたま育つ力がなかったというケースが多いと言い、母体側が努力して防ぐことができるケースは少ないのでは。
だからこれを読み〈妊娠出産するためには、せっせと子宝ケアに励まなくてはいけない!〉と誤解してしまうような人が、どうかいませんように……!
以上、妙なトンデモがさりげなく差し込まれている妊活本ではありましたが、改めて笑福(えふ)くんのご誕生、おめでとうございます。
(謎物件ウォッチャー・山田ノジル)
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