女子校生時代、ギャル系の雑誌に登場すると、瞬く間に人気ギャルモデルとなった押切。『Popteen』(角川春樹事務所)誌面では、「日本でいちばん愛されている高校生 押切もえのすべて」などと大特集が組まれるほどの人気だった。しかし彼女は益若つばさのように、うまく「タレント」にスライドすることができず、いったん表舞台を去る。日雇いバイトのフリーター生活を送った後、内向的な性格を変え、ダイエットをして『CanCam』モデルとなり大ブレイク、現在に至っている。ちなみにギャル時代と『CanCam』以降では、驚くほど顔立ちが違う。鼻や口元のシワの寄り方はそのままだが、目の形や二重がまるっきり別人なのだ。そのため整形したのではないかと言われているが、この期間に彼女は「15キロの減量に成功した」そうなので、ダイエットによって顔の肉が落ちて二重になった、という可能性も一応捨てきれない。
だが押切もえの「自分磨き」は、容姿うんぬんにとどまらない。
英会話、絵画、ダンス、読書、坐禅、登山、ゴルフ、フラワーアレンジメント、アロマテラピー、ワインエキスパートの資格を取得、などなど、取り組んできた事柄は多岐にわたる。数年前から料理教室に通っていて料理の腕前はプロ顔負け。和食はもちろん、高級レストラン顔負けのイタリアンやフレンチも作る。テーブルコーディネートも完璧。冗談ではなく、「大真面目に」「全力で」趣味に取り組んでいる。多趣味大いに結構、真面目も立派だが、正直、彼女の頑張りにずっと付き合っていたら誰でも疲弊してしまうのではないだろうか。
著書やインタビューなどで「昔はあんなにダメだった私が、こんなに変われた!」と、ポジティブに頑張ることの大切さを説き続け、「これまでの私の人生の、うまくいかなかったこと全部に『ありがとう』を言おう」とベッキー並みの“無理やり前向き”論を持つ彼女。言っていることは正論で、読む側の心に余裕があれば「そうだね、前向きに頑張らなきゃいかんね」「嫌なことがあっても、前向きにね、うんうん」と納得できるものの、ポジティブ思考を強要されるとやはりツライ。というか、人それぞれ状況は違うわけで、なんでも押切流ポジティブ論が当てはまるわけではない。
彼女自身、年老いてもモデルを続けることが夢なのであれば、もうそこまで自らを奮い立たせることなく、そろそろリラックスしてもいいのではないかと傍から見ていて思う。このまま年を重ねていっても、いずれ30代向けの雑誌に移行して、40代向けの雑誌に移行して、さらに50代向けのファッション誌だってある時代だ。結婚してもしなくても、出る媒体はいくらでもある。
それでは物足りないのか、はたまた「私なんかじゃ、きっと生き残っていけない」と深層では今もネガティブ心理がはたらいているのか……いずれにしろ、磨きすぎて削れてしまわないか、心配になる。押切フォロワーの頑張り屋な女性たちも含め、そもそも「自分磨き」って何なのか、習い事やカルチャースクール通いとは別のものなのではないか、落ち着いて考えてみてほしい。
(清水美早紀)
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