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「個人」よりも「家族」を重視? 『女子の集まる 憲法おしゃべりカフェ』のトンデモぶり

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『女子の集まる 憲法おしゃべりカフェ』(明成社)

『女子の集まる 憲法おしゃべりカフェ』(明成社)

 先週、憲法改正は9条よりも先に24条が行われる可能性がある、という主旨の記事を執筆しました。その記事で私は、自民党による憲法改正草案には「家族は互いに助け合わなければならない」という条文が新たに付記されており、虐待やDVなど、デメリットも多く含んでいる「家族」という関係性に否応なく国民を縛り付けることを批判しました。

 該当記事の最後では、安保関連法案の際に数少ない合憲派としてたびたび報道されていた百地章さんが監修した『女子の集まる 憲法おしゃべりカフェ』(明成社)のとある記述を紹介しています。それは、「今の憲法は『家族』よりも『個人』が重視されていること」を批判する記述でした。

 私には「個人」よりも「家族」が重視される社会が生きやすい社会だとは思ないのですが、本書はどのような考えの下でこうした記述を載せているのでしょうか。『女子の集まる 憲法おしゃべりカフェ』の内容を確認してみたいと思います。

 本書は、災害や社会問題、戦争などのテーマを取り上げながら、それらの問題は現行の憲法にあるとして、改憲の必要性を訴えています。本記事で多岐に渡るテーマのひとつひとつを見て行くことは困難です。今回は「家族」に注目し、問題点や疑問点を指摘していきます。

「非常識なクレーマー最近すごく多くない?」

 本書に通底しているのは、今の日本人は「個人主義」が横行しすぎている、という問題意識です。そして「個人」ではなく、それらが帰属する「家族」や「国家」を重視するべきであり、そのために改憲の必要がある、と主張しています。

 「個人主義」が横行している証拠として取り上げられているのが「クレーマー」です。例として、警察官が暴れている男性を静止したところ「税金で食っているんだろう」と叫んでいたという話を提示した上で、「クレーマーがここ10年くらいで増えた実感がある」「『個人主義』を謳った憲法に問題がある」としています。この記述だけでも、「クレーマーは実際に増えているのか」「クレーマーが増えることにどんな問題があるのか」「仮にクレーマーが増えているとして、その原因が憲法にある根拠は」という疑問がわくのですが、問題はこれだけではありません。

「(制服は子供の人権を侵害しているから反対と国連で訴えた高校生に対して)制服とか校則とかが嫌だったのか知らないけど、自分で稼いで食べているわけでもない子供に下手に「権利」なんて覚えさせちゃ駄目よ! ろくなおとなにならないわ」

 憲法における「個人の尊重」が過剰に美化され、教育されたことで、子供たちが自分勝手になっている、と主張したいようです。しかし、私にはなぜ強制的に制服を着せられなくてはいけないのかがわかりません。学校に制服があること自体は特段否定しませんが、制服を着るか着ないかを、各自で判断することの何が問題なのでしょうか? 制服を着なくなると犯罪率が上がる、学校が荒れるといった問題が引き起こされるのでしょうか? これを「クレーマー」という文脈で、さらには「個人の尊重が過剰に美化されている」として紹介することに疑問を抱きます。

 本書では、「個人の尊重」が「親も社会も関係ない! 自分のために生きろ!」という解釈になっているとも説いていますが、むしろ「親も社会も関係ない!」という言説(があるとしてそれ)を、「個人の尊重」のせいだと決め付けるのは強引です。

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