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事件のたびに繰り返される母子家庭叩きと支援の言葉 その先に1人の人間がいることを忘れないでください

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 大学の夏休みも終わりに近づいた9月22日。沖縄県内で、とても複雑な気持ちになる事件がありました。うるま市で起きた赤ちゃん置き去り事件です。ニュースなどでご存知の方も多いと思います。

 今回はこの事件について、沖縄に住むひとりのシングルマザーとして、沖縄の地域性も考慮しながら、新聞記事などを参考に書いてみたいと思います。ただし、私はうるま市に住んでいるわけではありません。あくまで私が経験してきたこと、耳にしてきたことから分かる範囲、想像できる範囲で書いています。

 私はこの連載では、出来るだけ明るく原稿を書くようにしています。シングルマザーがメディアに取上げられるとき、どうしても「苦しい」「辛い」といった要素が取り上げられることが多く、「かわいそうな人達」として消費されている、と感じているからです。また、苦しさだけを描いてしまうと「不幸話は読みたくない」と敬遠してしまう人もいます。だからたくさんの人に問題提起していくに、この連載では可能な限り明るくしようと心がけています。でも今回は、「上原のワガママだろ!」といった誤解を生まないように、いつもよりテンションを抑えて書きたいと思います。

 本題に入る前に、この場を借りて、赤ちゃんを保護した発見者の団地住民の方には心から感謝申し上げたいと思います。赤ちゃんが無事で本当に良かったです。

 まずは事件の概要を知っていただくために、新聞記事を引用します。

『21日午後4時すぎ、うるま市具志川の県営団地の住民から「赤ちゃんが捨てられている」と110番通報があった。うるま署の警察官が駆け付けると、団地の緑地にビニール袋に包まれて生後1日か2日とみられる女児が置かれていた。同署によると生命に別条はなく元気に泣いていたという。女児は病院に入院した。同署は、保護すべき責任のある女児を置き去りにしたとして、保護責任者遺棄事件とみて親を捜している。(引用:琉球新報9月22日)』

 別の新聞記事には、赤ちゃんを置き去りにした女性に対し「早く名乗り出て」と住民が訴えている、という内容も書かれていました。

 発見者はその後、「(ビニール袋のクチが縛られ、密封した状態で捨てられていたという)誤った情報を訂正すると共に、赤ちゃんが捨てられていた事に対する憤りと、このような事件が二度と無いように」書いたという記事をFacebookに投稿しています。このFacebookの記事は、約2万3千件シェアされ、2,000件を超えるコメントが寄せられていました。またFacebookだけでなく、TwitterなどのSNSでももの凄い勢いで拡散されていました。

 その後、赤ちゃんを置き去りにした女性が逮捕された、という続報が出ています。

『うるま市内の団地敷地内に生後間もない女児が置き去りにされた事件で、うるま署は28日、本島中部に住む中学3年の女子生徒(14)を保護責任遺棄の疑いで逮捕した。県警によると「私が生んだ赤ちゃんを袋に入れて捨てました」と供述、容疑を認めている。○逮捕容疑は21日午前6時30分~午後2時40分ごろまでの間に、うるま市の団地敷地内に生後間もない女児を置き去りにした疑い。調べに対し「お母さんにも話すことができず、どうしていいか分からなかった」と供述しているという。(引用:沖縄タイムス9月29日)』

 このニュースは、県外の報道機関でも流れ、ネット媒体の記事や個人のブログでも「女子中学生が赤ちゃんを置き去りにした事件」として扱われていました。

『「どうしていいか分からなかった」―。生後間もない女児が置き去りにされた事件で、逮捕された女子中学生(14)は警察の調べにそう供述したという。関係者らによると少女は母子家庭で、中学校へは不登校気味だったという。母親は昼夜、仕事を掛け持ち。周囲に相談できる環境がなかったことを専門家らは問題視し、市民からは追い詰められていた少女のケアを望む声が上がった。(引用:沖縄タイムス9月29日)』

 悲惨な事件に対して、ネットでは目を覆いたくなるような反応がしばしば見られます。今回も女子中学生の逮捕にともない、中学生の母親を非難する声が上がっており、さらに女子中学生の名前と写真、母親の写真が晒されていたそうです。“沖縄”で生まれ育った私としては、この事件を、自身の存在感をアピールする材料にしていることに強い違和感を覚えました。

 どんな事情があれ赤ちゃんを捨てた“行為”は、許しがたいことです。そのような行為に対して怒りを覚えることを私は非難も否定もできません。しかし、私の率直な感想は「誰も責めることができない」というものでした。どうしてそのように思ったのか。ここからは、以上のような新聞報道とネットでの反応を踏まえた上で、「うるま市赤ちゃん置き去り事件」について考えてみたいと思います。

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上原由佳子

1988年生まれ。沖縄県在住。シングルマザー女子大生。女子力の欠片もなさを小学1年生の娘ちゃんから指摘される、どうしようもない系アラサー女子。

@yu756ka

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