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元カノが実家にやって来た! 両親元カノ連合VS無職 無職に味方はいないのか!?

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結婚式から帰ってくるのも一苦労でした。飛行機が遅れて終電がなくなり、最寄駅の5駅手前までしか帰れず、金もないので仕方なく歩くことに。深夜に1時間弱かけてキャリーバッグをひきながら歩き続け、帰宅したのは2時近くでした。家についてケータイをみると「借りてたものを郵送するから住所教えて」とミョンちゃんからLINEが来ていました。先日からかなり深刻に愛想を尽かされていて、恋の終わりを感じます。捨てといていいや、と言いたくなりますが、悲しい気持ちになりながら、住所を送信。もうさすがに疲れきっていて、軽くシャワーを浴び、バタン、と就寝。

翌日、起きたらもう昼過ぎになっていました。まぁ、いつも通りの定刻運転ですが。これでもう、またしばらく何の予定もありません。無職に日常が戻ってきました。いやいや……そういえば働かなきゃいけなかったんだっけ? でもなんだかもうどうでもいいような気がしてきました。まぁ、今日は疲れてるから一日寝て過ごして、明日から頑張ろう。よし、そうしよう。

そんな決意を固めて、腹を掻きながら自室から階下に降りていくと、玄関先に見慣れない紺のスウェードのヒールが置いてあるのが見えました。オカンやオカンの友だちが履くとは思えないセンスです。いぶかしく思いながら居間のドアを開けると、ミョンちゃんがお茶漬けを食べていました。

ミョンちゃん「奥山くん、起きるの遅いよ! 身にも心にもすっかり無職がしみついちゃってるんだね」

……じゃ、なくてさ。

僕「なんでいるんだよ!?  君、頭おかしいんじゃないのか??」

もう、ツッコミどころが多すぎてどこから突っ込んでいいのかわかりません。何故、何の連絡もなしに突然東京からやって来て僕の実家に上がりこんでいるのか。学生時代に何度か家に来たことはあったはずですが、どうやってここまでたどり着いたのか? この連載で幾度となく変人扱いされている僕だけどミョンちゃんだってそうとうヤバいよ! そもそもだいたい、僕たちはかなり致命的な喧嘩をして絶賛絶縁中だったハズです。一体なんなんだよ!?

ミョンちゃん「そうなんですよ、お母さん聞いてくださいよ。奥山くんって本当に本当に酷いんですよ?」

と何か僕の母親相手に愚痴っています。珍しく父親も居間にいて、すっかり場の中心はミョンちゃん、彼女の話を両親がひたすらに聞いています。この状況、カオス過ぎる……。僕は現実逃避を決め込んで、無言で天井の木目を数えたりしました。

会うのは通算で3回目とかのハズなのですが、どうやらミョンちゃんと僕の両親はソリが合うようで、何やら和気藹々と会話しています。ミョンちゃんも両親も、僕とは全然話がかみ合わないのに……。たまらずトイレに逃げ込んで、思わず担当編集者に電話しました。ことの次第を話すと、「自虐風自慢乙……」とだけ言われて電話を切られてしまいました。かけなおしても、着信拒否。着信拒否って! 仕事相手(ビジネスパートナー)の電話を着信拒否するって酷いじゃないですか!! 一時は同棲していたこともあるくらいの仲なのに!!!

ビクビクしながら居間に戻ると、まだ飽きもせず何か会話をしています。すぐ「死にたい」と言う癖が未だに治らなくて腹が立つとか、ネガティヴ過ぎるとか、いつも適当なことばかり口にして煙に巻くとか、僕の悪口ばかり話しているようです。

ミョンちゃん「奥山くんってお喋りな癖に、肝心なこと何一つ言わないじゃないですか?  黙って会社辞めるし、東京から京都に戻ったときも、私に何の連絡もなかったんですよ? それが突然、連絡して来て虫が良すぎますよね?」

ミョンちゃんの怒りはとどまることを知らず、晩飯を挟んで延々と僕の悪口を言い続けました。気難しい父ともすっかり打ち解けて(?)何やら僕の将来について話し合ったりしていました。僕はその間、手持ち無沙汰だったので、エヴァに話しかけ……いつも通り噛まれたりしながら時間を潰しました(エヴァはミョンちゃんにはなついています)。

「泊まっていくの?」と母が聞くと、ミョンちゃんは立ち上がり、「今日はホテルとってるんですけど、次は是非お泊まりさせて下さい❤」と母に言い、それから僕の腕を思いっきり引っ張りあげました。「な、なんだよ?」「あんたも一緒に来るんだよ」「はぁ〜!?」もう滅茶苦茶です。しょうがなく、脱衣所で寝巻きから着替えていると(普段家にいるときはずっと寝巻きなので)、「助けてー!」と言いながらミョンちゃんが駆け込んで来ました。そこにドタドタとした足取りで母親がやって来ます。ミョンちゃんは僕の背後に回り込み、母の視線から自分を隠すようにします。だから、母親の視線の先にはパンツ一丁の息子。なんだなんだ。よく見ると、母は手にダイヤのネックレスを持っています。

僕「何それ?」
母親「結婚25周年の記念にお父さんに買ってもらったやつなの。ずっとミョンちゃんに着けてもらいたいって思ってたの」
ミョンちゃん「そんな大事なもの、私なんかが貰えないです……」
僕「いらなくね? そんなの貰って嬉しいと思ってるの、今どきうちのオカンくらいのもんだよ。痛いしハズいって。重いしウザいって。マジで。やめとけよ」
ミョン「……あんたのそういうところ、本気で大っ嫌い!」

僕がそう言うと、ミョンちゃんは突如として猛烈に怒り出しました。その日一番の激しい怒りに僕はタジタジ、それで結局ブチギレた手前、ミョンちゃんはオカンからその大袈裟なネックレスを貰うことになりました。さらにオカンは、会いに来てくれたお礼と称して、何やら交通費までミョンちゃんに渡していたみたいです。

駅前、二人でタバコを吸いながら、ふと彼女の顔を覗き込むと、目をうるうるさせています。もしかして……いや、どうやら彼女は、正真正銘、感激しているらしいのです。「ヤバいね。わたし、昔から本当に奥山くんのご両親好きなの。心が一杯になっちゃった」そう呟く彼女の顔を見ていたら、僕はなんだかさっきまでの自分が少なからず恥ずかしく思えてきました。

「君はすごく良い奴だな」

僕は夜のガードレールにもたれて、そっとキスをしました。

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奥山村人

1987年生まれ。京都在住。口癖は「死にたい」で、よく人から言われる言葉は「いつ死ぬの?」。

@dame_murahito

http://d.hatena.ne.jp/murahito/

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