NATROM「患者さんの気持ちに寄り添っている代替医療者もいるでしょうし、患者さんの気持ちを無視するひどい医師もいるでしょう。ただ、それだけではないと私は思います。〈嘘も方便〉が許されていた昔と違って、今では医師は患者さんに正確に情報を提供する義務があります。末期がんであれば『治りません』と説明しなければなりません。あるいは早期がんであっても、『手術がうまくいっても、○%は再発することがあります』と説明しなければなりません。もちろん、患者さんの気持ちに十分に配慮した上で説明するようにしていますし、正確な説明を行いつつ、患者さんを不安にさせないのも医師の技術です」
「しかしながら、厳しいことを聞かされる側は、どうしても医師の説明を冷たいと感じたり、不安が残ってしまうこともあるでしょう。一方で、少なくない代替医療者は、無責任に『完治します』『副作用はありません』と宣伝します。嘘をついていいのなら、いくらでも患者さんの気持ちに寄り添っている〈ふり〉ができるのです。本当に完治するならいいですが、治らずにいよいよ病状が悪くなってきて、普通の病院に丸投げしてくるケースもあります」
何事も主治医に相談すべし
丸投げされた先で、治ればまだいいけれど……! 結局のところ、代替医療はどのような状況ならば、取り入れても問題ないのでしょう。
NATROM「標準的な医療と共存でき、安価で、安全であれば、代替医療を取り入れてもかまいません。共存と安価の話はしましたので、安全の話をしましょう。金の棒で体を擦るという、ごしんじょう療法は安全でしょう。しかし、代替医療の中にはリスクを伴うものもあります。たとえば、健康食品による肝障害を起こすことは珍しくありません。注射や点滴をしたり、口に入れたりするタイプの代替医療は、取り入れる前に信頼できる医師に確認をしたほうがいいでしょう」
「自分は冷静に判断できる」と思っていても、いざ深刻な病気になるとワラをもつかむ思いで手を出してしまいそうな代替医療。深刻な状況ではなくても、「何となく薬は嫌いだから」という理由で代替医療を選択する人もいそうです。
この記事を目にする方の中には、まだ若く健康な人も多いと思いますが、今のうちに専門家のこうした意見に触れておき、いざ自分や家族、恋人や友人が病気になったとき、どうか適切な判断やアドバイスができるようになりますように。
(謎物件ウォッチャー・山田ノジル)