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処女厨男とチャラ男嫌い女の織りなす、より良い家父長制の展望

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柴田英里

(C)柴田英里

 

 10月、たて続けに、女性クリエイターのトークを聴く機会がありました。

 男性クリエイターや男流作家とは基本的に言わないのに、未だに、女性の表現者には、女性クリエイターだとか、女性アーティストだとか女流作家だとか、“女”を頭文字にする風習にはうんざりです。改めて今も続く男女の非対称性や格差、創造性を男性の特権と位置づけ作られてきた美術の歴史を復習するようで、そこはかとなく嫌な気分になるのです。しかしそれよりも毎度驚くのは、「女性○○に仕事の話を聞く」というような機会であっても、質問者は彼女たちに「好きな異性のタイプは?」とか、「どういう男が嫌い?」とか、「今後、どのような恋愛、結婚を経てどのような家庭を築きたいですか?」と投げかけることが非常に多いことです。これは何かしらの大会で目立った“女性”アスリートに対するヒーローインタビューのような場面でも、よくある光景ですね。

 そうした機会に出くわすたびに「仕事の話聞いてるんじゃないのかよ!」とか、「異性愛者である前提かよ!」とか、「その質問に答える必要ってあるのか?」とか「恋愛と結婚が勝手に人生設計に組み込まれているの何で?」とか、心の中で言いたいことが山ほど溢れ出てきますが、そうした質問に律儀に答える方が非常に多いことにもまた、驚きを禁じ得ません。「答えたくありません」と返しても良いのに、笑顔で当たり障りのない回答をしてあげる女性たち。この一連の流れを見るにつけ、「女性には若いうちからお愛想が求められ、ゆえに内面化されているのだろうか?」「彼女たちは仕事の話から恋愛の話、家庭の話に移行する流れ、そして異性愛者であるという決めつけに対して、何の疑問も抱かないのだろうか?」など、いっそう複雑な気持ちになります。

「チャラ男ファッションが嫌い」と「ビッチ死ね」は同義

 私が聞いた限りでさらに驚いたのは、女性クリエイターや女性作家の多くが、「嫌いな異性、苦手な男性のタイプ」として、「尖った靴をはいた人」「チャラいアクセをつけた人」「ホストみたいに髪の毛をセットしている人」「ギャル男」「ホスト」など、チャラい男性ファッションを上げていたこと。それも、嬉々として、です。

 なぜ、尖った靴にチャラいアクセ、ストレートアイロンなどでキメキメのヘアセットといった装飾性、もっと言えば、媚態的な装飾性が、異性愛者と類推される女性たちから嫌われるのでしょうか。

 単純に、「街でよく遊んでいそう→私を大切にしてくれなそう」「オシャレへの興味が強い→私より自分を優先しそう」「分不相応なオラオラ感がありそう→そんな男はダサい」などといった偏見が発動している可能性もあります。「草食系ルックスの男性しか愛せない」「肌の露出が多い服やアクセサリーは好まない」など、本人の趣味嗜好もあるでしょう。また、「男“なのに”オシャレへの興味が強いなんてキモチワルイ」といったこれまた暴力的な偏見から来ているのかもしれません。

 しかしその背景には、彼女たちの持つ保守的な優等生気質というか、「より良い社会」という言葉を、基本的に「より良い異性愛社会」と捉えられるような無意識の暴力性が潜んでいるように思います。さらに言えば、その「より良い異性愛社会」という発想の根底に、「より良い家父長制」があるのではないでしょうか。

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柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」

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