みなさんお忘れかもしれませんが(なにせ僕自身がすっかり忘れていましたからね)、以前に、無職は仕事を募集していたんです。ところが、その直後に父親から働けと言われてしまい、就活資金を貯めるためにバイトを始めたわけです。それですっかりうやむやになってしまったのですが……結局あれはどうなったのか? というとですね……。
一切仕事が来なかったんですよね!
まぁ、予想された事態ではありましたが……本当に全然さっぱりこれっぽっちも来なかったんですよ。
・YouTubeで特定の動画をクリックしまくって、再生回数の水増しをする仕事
・クラウドワークスとか、ランサーズとか
具体的なアドバイスがこの二つだけっていう。
僕「みんな、お説教ばっかりで、全然仕事紹介してくれないじゃないか!」
担当編集者「当たり前じゃないですか! どこの馬の骨ともわからない無職に誰が仕事紹介するっていうんです? 信用出来ないでしょ、そもそも」
僕「お前言い過ぎじゃね?」
担当編集者「……仕方ないから僕が仕事を紹介しますよ」
僕「いいから早くよこせよ」
というわけで、誰も仕事紹介してくれなかったので、担当編集者が仕事を紹介してくれることになりました。いわゆるひとつの「仕込み」ですね。こんなんでいいんでしょうか……?
なにはともあれ、バイトと、原稿仕事と並行して、テープ起こしやデータリサーチを始めました。リサーチといっても、ネットに公開されてる情報をエクセルにまとめるような作業です。
すべてを同時並行でやるとなると、中々大変になってきました。バイト帰りに喫茶店で原稿を書いている暇もなくなってきたので、最近は電車の中でiPhoneで書いていることも多いです。帰宅してパソコンを立ち上げ、徹夜でテープ起こしをして軽く仮眠をとってバイトへ。
ただこれ、どうにもこうにも地味なんですよね。毎日バイト先でもパソコンに向かってるだけ、家に帰っても、ずーっと長時間パソコンに向かう。長時間ひたすら座り続けているので、座骨神経痛になったりするくらいで。
とくにスペクタクルみたいなものがない。
日々淡々とエクセルで作業してるだけなのでピンチも何も訪れないんですよ。家の中に江頭2:50がやって来ていきなり僕のパソコンを破壊でもしない限り、そうそう困ったことにはならない。だいたいのことはググるか、担当編集者に聞けば解決するし。
担当編集者「でも奥山さん。現実的に、今の連載の延長線上で、何か紹介出来る書き仕事なんてないですよ。なんかもっと専門性とか得意分野がないと、ただのサブカルじゃライターは厳しいしね」
そう……確かに、僕には強みが無いんです。
エロい人間になるぞ
詳しいことが何もないので、文章で食っていくなんて夢のまた夢なのかもしれません。何か強みとか専門分野が欲しい……話題になる前にマイナンバー制度とか勉強しとけばよかった。いや、誰も無職にマイナンバー制度について訪ねてきたりしないとは思いますが……。
そんなことを考えながら、家での在宅仕事の合間に、東京での就活に向けて求人情報を見ていたら、ふっと次のようなページが目にとまりました。
・ゲームのシナリオライター募集
おお、そうだ、その手があったか、と僕は思いました。
たしかに、ゲームには文字が表示されています。その文字を作成している人間というのがこの世のどこかにはいるわけです。
早速応募条件を確認しますが、かなりシビアに実務経験を問うてくる求人が大半です。それでも、ごくたまに未経験OKの求人が存在していました。
それはなんでしょうか?
そう、それこそが、エロゲー。
エッチなゲームの、シナリオライターです。
その瞬間、僕は閃きました。
エッチなゲームのテキストを書いて食っていこう!
なれるのかどうかなんてさっぱりわからないのですが。
というか、ミョンちゃんにフラれそうだな……。許してもらえなさそう……。
そのへんはとりあえず考えないようにして、僕はその日からエロい文章を書き始めました。というのは、未経験者が採用に応募するには、作品を提出する必要があったからです。それで僕は、エッチなゲームに表示されることを想定した文章を書き始めました。
…………僕は一体何をしているんでしょうか?
深夜、両親の寝静まった実家で、僕はただひたすらに、自分にとってエロいと思われるテキストを書きつけていきました。
薫先生は淫靡な素肌を露わにして……白い乳房が…………ああっ……だめっ…………僕は一体何をしているんでしょうか⁉︎(二回目)
しかしこんなことで照れたり恥ずかしがったりしていては、立派なエロゲーライターにはなれません。照れを、恥ずかしいと思う気持ちを捨てないといけない。
というわけで近ごろの僕はというと、寝る間も惜しんで、エッチな文章を書き続けているのです。そんなわけで、寝不足の生活が続いています。
しかし作業は困難を極めました。僕の乏しい性経験では、とてもアブノーマルなことなんて書きようがない。それで想像力を羽ばたかせていく必要があるわけです。僕は想像しました。自分が筋骨隆々のマッチョな男(五郎丸歩風)になり、次から次へと女を抱いていくところを。
書いている最中に、知人のエロゲーマニアの女の子にメールで送りつけて僕の官能的な文章を読んでもらったりもしました。
「全然、濡れないかなぁ……こう、表現が古臭いんじゃない?」
がーん! かなりショックでした。そう、筋骨隆々のマッチョなど、エロゲーの世界では基本的に求められていないのです。勉強のために僕はエロゲーを何本か購入し、早速プレイしてみることにしました。
あなたの知らないエロゲーの世界
僕も知らなかったんですけど……エロゲーの世界って深いんですね。いや、エロだけじゃないんですよ。
わかりやすくいうと、映画で言えば日活ロマンポルノってジャンルがありますよね? ポルノ映画なんですけど、芸術性を評価されていて、実際見てもオナニーのオカズにするというより、はっとさせられるようなカットや、何か深い感動があったりする。今でこそ日本を代表する映画監督となった黒沢清だって、昔は「神田川淫乱戦争」なんて映画を撮っていたくらいです。
で、ある種のエロゲーってそれに近いものがあるんです。芸術的で、深い。何も僕が言い出さなくても、昔から言われていたことみたいですが。
例えば、エロゲー黎明期に発売された古典的名作である「雫」は、先日しQちゃんも抱かれた、サブカルの帝王大槻ケンヂ先生の影響を色濃く受けた作品といわれています。オープニングから狂っていて、突然高校の教室で授業中に女生徒が立ち上がり、「セックス」とつぶやく、そして発狂する、なんてシーンからゲームは始まります。彼女は毒電波に操られていて……毒電波って一体何なのか? 「毒電波とは空から降り注いで人を狂わせたり、おかしな行動をとらせたりする、言葉通り毒のような電波のことさ。目には見えないし、知らないうちに脳内に侵入するから防ぎようが無いんだ」と作中では説明されています。うん、僕は完全に犯されている気がしますね、毒電波に。
狂気といえば「さよならを教えて」も負けてはいません。エログロ・スプラッタ描写のオンパレード。小説で言えば『家畜人ヤプー』とかマルキ・ド・サドの『ソドム百二十日』みたいな作品です。寺山修司の映画とかが好きな人も楽しめるかもしれません。僕はエロゲーマニアの友人に貸してもらったのですが、プレミアがついていて、amazonでは12万を超えている伝説の作品です。
その他にも同人ゲームながら大ヒットを記録し一世を風靡した「月姫」や「ひぐらしのなく頃に」など……え? いまいち凄さがわからない? インディーズバンドがオリコンで1位とるようなもんですよ。じゃあゴールデンボンバーみたいなもんか? それはだいぶ違う!! とにかく凄いことなんですよ。
そして何より僕が好きなのは「CROSS†CHANNEL」。のちに作家としてもデビューしたシナリオライター田中ロミオ先生の最高傑作です。なんかよくわかんないんですけど、「適応試験」っていう国家試験みたいなのがあって、社会にうまく適応出来るかどうか判断してる。で、その点数が極端に悪いと、社会不適合社として特別な学校に入れられる、みたいな設定があるんです。要は就活に出てくるSPIの性格適性検査のエグいバージョンみたいなやつでしょうか。僕なんか正直に答えたら絶対点数悪いですよね。でも、あのSPIってどれくらいの人が正直に答えるんでしょうか? うろ覚えなんですけど、「一人でいるのが好きだ」「芸術家肌だ」みたいな、イエスって答えた瞬間に即落とされそうな質問ばっかりで、とてもじゃないけどあんなの正直に答えられないですよね。そもそも世の中に性格適性検査の傾向と対策なんてのが出回ってる時点で、狂っていると思うのですが……。話が逸れましたが、普通の学園青春ものと思いきや、二転三転し、人生とは何かと深く考えさせられる作品内容に、僕はすっかり感動して……。
…………何か、読者の方々がささささーーーーっと引いていく音が聞こえるような気がします。完全にドン引きされてる気がする! ただでさえ呆れられているのに、何か本格的にやってはいけないことをしてしまった気がする……。絶対コメント欄に「messyって女性向けサイトのハズなのに、なんでオタク向けエロゲーのレビュー記事が紛れ込んでるんですか……? 気持ち悪い」って書かれるに決まってる! 待って! もうこのへんにしておくので、堪忍して!
……まぁ、ともかくです。数々の名作エロゲーを一通りプレイしたあとの僕は思いました。今までの僕は間違っていた、と。これからはもっと真摯に、エロゲーに取り組んでいかなければならない、と。
睡眠を削ってエロゲーをやるアラサーの息子。両親が知ると泣くかもしれませんが……。
こうして僕は毎日、来る日も来る日も飽きもせずエロい文章を書き続けているわけです。
……僕は一体何をしているんでしょうか?(三回目)
バイト代が出た
そうこうしているうちに、バイト代が出ました。今働いているバイト先はどうやら、20締めで月末払いという感じのスタイルのようです。
が、思ってたより少ない……! 7万5千円しか入っていない。所得税が引かれてるとか、社食の天引きがあるにしろ、どう考えても安い。明細をよく見て、はっとしました。土日に手当てがあるとか言ってたのに、全くついてない。バイトに手当てがつくなんてちょっとおかしいとは思っていたのですが、聞いてた話と違う。抗議しようと、僕にその話をした社員を探したのですが、見つかりません。
僕「あのー、◯◯さんってどちらにいらっしゃいますか」
社員「あー、あの人辞めたよ!」
辞めたんだ! そんなのアリなのか。不条理だ……。こうして僕の淡い期待はあっさりと潰えました。
さて、更にです。
僕は両親に借金をしていたのですよね。友人の結婚式やら、ミョンちゃんとの旅行などでそれなりに出費がかさんでいて……それら全てを働かず借金でまかなってきたので、膨大なものとなっています。その額、18万円。
なんと、借金すらまだ返しきれていないんですね……。これぞまさにマイナスからのスタート……。こんなんで……一体いつになったら就活を始めることが出来るんでしょうか? 下手したら就活資金を貯めるバイトをしてるうちに連載が終わってしまう。
いや、ここは期限を区切らないと、なんだか、だらだらとバイトし続けてしまうような気がします。それなりに居心地自体は悪くないので……。
調べてみたところ、平均16社面接を受けて、4社二次面接に進み、1社の内定を得るというのが平均的な就職活動のようです。すると、20回の面接を受けるとして、東京までの交通費は一体いくらかかるのでしょうか。
一次面接は全て夜行バスにするとして、片道で5千円、往復で1万円くらいでしょうか。二次面接は、行きだけでもなんとなく気合を入れて新幹線で行きたい気がします。すると新幹線片道1万3千円と帰りの夜行バスが5千円で往復1万8千円。合計で23万2千円の計算になるでしょうか。ただ、朝漫画喫茶でシャワーを浴びたり空き時間喫茶店で粘って時間を潰したりと雑費のことを考えると、30万円くらいは必要な気がします。
なんか、学生時代の就活って、それなりにお金はかかりましたが、一次面接は大体大阪でやってくれることが多かったのでそこまで大変ではありませんでした。今の方が大変な気が……。というか、東京で就職したいなんて考えてるから大変なだけで、地元なら今すぐでも就活出来そうなものですが、でもミョンちゃんに会いたいし……地元に友だち1人もいないし……。
というわけで、当面の目標を30万円貯金することに設定しました。
で、僕、一月の後半に誕生日を迎えるんですね。29になってしまうわけです。出来れば……28歳の間に履歴書を発送してしまいたいです。となると、そのあたりを目処にバイトやめて就活を始めたいなと。
そんなわけで、これからしばらくは、連載の最後に体重に加えて新たに貯金額を記載することになりました。正直、なんかシビアな感じがして僕自身はすごく嫌なんですけどね。どうにかこうにかこの数字を日々改善出来るように、頑張ります!
現在の身長体重
身長:172cm
体重:71kg(前回から2kg痩せた)
目標体重60kg
現在の連勤
28連勤(残り19)
現在の貯金額
-11万円(親への借金)
目標金額30万円