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『俺物語!!』は至上最強の男と至上最強の女の保守的な恋愛物語である

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柴田英里

(C)柴田英里

 コミック累計450万部を突破している少女漫画の大ヒット作品、『俺物語!!』(原作:河原和音、作画:アルコ/集英社)。2013年版「このマンガがすごい!」オンナ編1位、同年の講談社漫画賞少女部門受賞作品でもあります。その勢いのままメディアミックスも進み、現在実写映画が公開中で、アニメ化もされました。私は、単行本10巻まで出ている漫画とアニメをチェックしました。

 『俺物語!!』は一般的な少女漫画のヒーローのビジュアルイメージ(つまりイケメン)からかけ離れた男性を主人公とし、彼が電車内で痴漢に襲われているところを助けた女子高生大和凛子と不器用な恋愛関係を築いていくピュアラブストーリーです。主人公は、人並み外れた身体能力と行動力と正義感を持つ男子高校生・剛田猛男です。同性からは頼りにされ厚い支持を集める猛男ですが、いかつい顔(太すぎる眉毛、分厚いくちびる、角刈りなど)とごつい巨体(身長推定2m、体重推定120kg)ゆえに異性から恋愛対象として見られることのない少年時代を過ごしてきました。

 今作を初めて読んだとき、なんかだか保険のCMを見ているような気分になりました。主人公の猛男が、「表面的なきらびやかさはないが、堅実・健全・安心で頼りがいがある素晴らしい男性性の持ち主」として描かれていると感じたからです。猛男とヒロインの大和は、お互いのルックスを含め気に入って付き合っているのに、猛男の描かれ方が「アンチルッキズム」的であるため、彼の持つ「男性性」のみがクローズアップされているように見えたのです。

男にとっての「かっこいい男」は少女漫画ヒーローにいなかった

 猛男は、大和と付き合う前は、好きになる女性に振り向いてもらえることがない非モテ男性(実際には猛男のことが好きな女性キャラクターは大和以外にもいるのですが、不器用で鈍感なので、非モテだと自認しています)でしたが、非モテ自意識をこじらせることなく、モテない自分を受け入れていました。女性たちは猛男の親友でスマートなイケメン・砂川にばかり惚れます。しかし猛男は鬱屈したルサンチマンをイケメンや女性たちに向けることは全くありませんでした。

 女性からの評価とはうってかわって、周りの男性たちからは絶大な人気を博しており、彼の高すぎる身体能力や行動力、強い正義感、漢らしさは、常に多くの男性たちから羨望の的です。あらゆる年齢層の女性にモテモテの親友砂川からも絶対的な信頼を寄せられています。つまり、猛男は、多くの男性から熱狂的に支持される男性性の持ち主であり、“多くの女性が評価するイケメン男性”も、最も評価する男性なのです。男らしさのヒエラルキーで頂点に立っていると言って過言ではないでしょう。

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柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」

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