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親学のいう「伝統的子育て」はどの時代の子育てなのか

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高橋史朗『家庭教育の再生 今なぜ「親学」「親守詩」か。』(明成社)

高橋史朗『家庭教育の再生 今なぜ「親学」「親守詩」か。』(明成社)

 以前、安倍政権が「家族」を連呼する背景を探るべく、『安倍政権が「家族」を連呼する背景にある「親学」のトンデモっぷりに迫る』という記事を書きました。日が空いたので簡単に要約します。

 安倍政権が政策や改憲で、「家族」を前面に押し出そうとしていることは周知の通りです。しかしわからないのは、なぜそこまでして「家族」に執着するのか、という点です。一定の合理性を持った政策として打ち出されるのであれば、ある程度の説得力はあるでしょう。しかし、そうは思えない。少なくとも現段階で、政権は、打ち出している政策や方向性の合理性を、国民に対して納得できるように示していません。どうも、特定の議員・団体による偏った価値観によって政策が作られているようにしか見えないのです。

 そこで現政権が「家族」に執着するのはなぜかを考えるにあたって、前回は、安倍総理が議員連盟の会長を務め、政治の中枢にいる議員が数多く所属している「親学推進議員連盟」による、「親学」という特殊な教育論の内容を紹介しました。「家族推し」の政策と「親学」には密接な関係があるように見えてならないためです。

 なお「親学」の提唱者は、明星大学教授の高橋史朗氏。バリバリの保守派で、ユネスコが「南京大虐殺」に関する資料を世界記憶遺産に登録したことへの抗議して、外務省が提出した意見書を作成した人物でもあります。前回は高橋氏が書いた『家庭教育の再生 今なぜ「親学」「親守詩」なのか』をもとに、「親学」とは一体何かを探っていきました。

伝統的子育ては150年前? 高度経済成長期前?

 高橋氏の提唱する「親学」は「学級崩壊や非行は『伝統的な子育て』が崩壊したため。『伝統的な子育て』が復活すれば、そうした問題は解決できるし、(一部の)発達障害は事前に予防できる」というものです。これは「発達障害は親が原因だ」と主張するものだとし、関係団体や報道などで強く批判されたことでご存知の方も少なくないと思います。

 ちなみに非行の象徴として、少年の「万引き」と再犯率が取り上げられていますが、未成年による万引き検挙数は減少傾向にあり、むしろ60代の高齢者に増加傾向があることが警察庁の発表でわかっています。子供の非行の象徴を「万引き」とすることが間違っているわけです。また、再犯率の高い子供の特徴として「犯罪を犯しても大目に見る子供だそうです」と高橋氏は書いていますが、「親に規範意識がないから、子供が罪を犯すんだ」という論調が正しいのだとしたら、犯罪を犯す子供の親に規範がないのは、さらにその親も規範意識がなくて、そのまた次の親も……ということになりかねません。いったいどこまでさかのぼれば、「伝統的な子育て」によって非行が抑えられていることが証明できたのでしょうか……。

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