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櫻井よしこ率いる武道館フェス、「日本らしい憲法を取り戻せ」「中国がヤバい」連呼で、極右オジ様が拍手喝采の不気味

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武田砂鉄

武田砂鉄/論男時評(月刊更新)

 本サイトを読まれる方が日頃手にすることがないであろうオヤジ雑誌群が、いかに「男のプライド」を増長し続けているかを、その時々の記事から引っ張り出して定点観測していく本連載。今回はスピンオフ的内容で、あるイベントのレポートをお伝えする。

 毎月、定点観測している雑誌が『WiLL』と『正論』だが、12月号は、否応にも『WiLL』の「総力大特集 櫻井よしこさんへエール」に目がいく。16Pものカラーページでは彼女の軌跡を知らせるいくつもの写真が並び、対談や本人の寄稿に加え、「わが櫻井よしこ論」と題して4名の男性論客が櫻井賛美を記している。あたかもカルチャー雑誌でアイドルや俳優を根こそぎ持ち上げるかのような大ボリュームだ。

 編集長が編集後記に「もっともっと櫻井さんという人を大切にしなくてはと組んだ今月号の特集」と記したように、次々と礼讃が重なる。「日本がドリーマーたちによっておかしくなろうとする時、必ず立ちはだかってくれるのが、櫻井さんである」(門田隆将『「櫻井よしこ」は日本の宝』)、「日本が憲法改正を成し遂げ、戦後レジームから脱却した暁には、櫻井さんは『日本を変えた女性』として名を残すことになるでしょう」(中山紘治郎『櫻井さんは日本のメルケルだ!』)と、抵抗勢力を蹴散らす保守のアイコンとして、崇められている。

1万人を超える極右の皆様が武道館に集った

 テレビや新聞で取り上げられることは稀だが、保守団体「日本会議」の存在は、今や政権運営の指針に染み込んでいるといっても過言ではない。特別顧問に安倍晋三首相・麻生太郎元首相、そして現職の閣僚が7人、衆参両院で280議員が参加しているこの団体。現政府の施策からは時折「伝統的な家族像を重んじる」といった見識がこぼれてくるが、この考え方もまさしく「日本会議」の中軸にある思想だ。その日本会議の提携団体「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が、日本武道館で「1万人大会」を開くという。目指すのはもちろん早期の憲法改正。この団体の共同代表に名を連ねているのが櫻井よしこである。定点観測する雑誌群に必ずや登場する彼女が、どのように愛されているのかを確認するためにも、日本武道館へ出向いてみることにした。

 九段下駅から日本武道館へ向かう道すがら、配っていたビラをもらうと、沖縄県の翁長知事を糺弾する内容だった。国連で演説を行った翁長知事、そして彼を担いだとするNGO団体の活動を「日本民族分断国連工作」とし、言葉を尽くしてバッシングしている。武道館へ向かう列の8割が男性。9割が中高年だ。そもそも平日14時スタートの大会に馳せ参じることができる世代は限られる。受付で「これを胸に貼ってください」と渡されたのが、「今こそ憲法改正を!」と書かれた黄色いシール。その決意表明にはそもそも賛同できないので、貼らずに歩いていると、係員から「必ずシールをつけてくださいっ!」と咎められる。3階席の最上部まで超満員、1万1000人(主催者発表)を超える極右の皆様が集っている。

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武田砂鉄

ライター。1982年生まれ。東京都出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、2014年秋よりフリー。著書に『紋切型社会──言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社、2015年、第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞)、『芸能人寛容論──テレビの中のわだかまり』がある。2016年、第9回(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞を受賞。「文學界」「Quick Japan」「SPA!」「VERY」「SPUR」「暮しの手帖」などで連載を持ち、インタヴュー・書籍構成なども手がける。

@takedasatetsu

http://www.t-satetsu.com/

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