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【厚木ネグレクト死事件】自炊も掃除も金銭管理も役所手続きも不得手な父親の、破綻した育児

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育てられなかった親たち

Photo by Tom Reynolds from Flickr

 神奈川県厚木市のアパート一室で昨年5月、死後7年以上が経過したとみられる斎藤理玖(りく)くん(5=当時)の遺体が発見された事件で、殺人罪と詐欺罪に問われている父親の齋藤幸裕被告(37)の裁判員裁判が9月15日から横浜地裁(伊名波宏仁裁判長)で行われた。

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 9月24日に行われた被告人質問のリポートを続行する。若妻との間に長男をもうけ、新婚の3人暮らしが始まったが、それも3年で終わりを迎えた。妻が「買い物に行ってくる」と出かけたまま行方をくらましてしまったのだ。こうして理玖くんと斎藤被告との2人暮らしがスタートする。

「食事はあげていた」主張の中身

弁護人「理玖くんに、育児として何をしましたか?」

齋藤被告「公園に連れてったりして遊びました。家からはちょっと遠いっすね。20分弱くらい……車で。月に1~2回くらい連れて行きました」

 理玖くんは保育施設に入所していなかったので、この公園が唯一の外出であると思われる。

弁護人「あとは? 食事は?」

齋藤被告「主にコンビニ……とか、スーパーで買ったもの、多かった」

弁護人「1日何食?」

齋藤被告「最低、2回はあげていました」

弁護人「内容は?」

齋藤被告「おにぎり、パン、500ミリリットルのペットボトルかパックの飲料」

弁護人「それが1日2回?」

齋藤被告「はい……休みの日はちゃんと……2回のときは、仕事してる以上、やむを得ない……朝あげて、帰ってあげて……」

 離乳食を終えた時期の幼児の食事について、保健所の指導や育児書・育児雑誌などでは「朝食・10時おやつ・昼食・15時おやつ・夕食」の一日五食がのぞましいとされている。発達段階にある幼児の消化器では、一度に大量の食事を処理できないため、回数を分ける必要があるためだ。しかし齋藤被告はそのような情報も知らなかっただろう。齋藤被告自身「1日2食が多いっすね」と述べ、自身にとってはこれが“普通”であることを主張した。しかし、毎食同じ食べ物では栄養バランス的にかなり心配になる内容だ。弁護人からもそこは突っ込まれた。

弁護人「食事は、それ以外に、牛乳や卵、チーズとかは?」

齋藤被告「あんまりあげた記憶がないです」

弁護人「トマトやレタスなんかは?」

齋藤被告「もしかしたら、サンドイッチかなんか、あげたかもしれないですけど……記憶では十分な量を与えていたという認識はありません」

弁護人「おにぎりにパン、ペットボトルの飲料……栄養のバランス欠けてないですか?」

齋藤被告「そう思います。当時は考えてなかった。毎日毎日、必死で頑張ってたんで……」

 量的にも質的にも問題のある食事を与え続けていたことを、今なら自覚できるようだが、当時も「これでは理玖くんが弱ってしまう」ことを認識していたのか、それとも齋藤被告が言う通り、“必死に頑張っていた”から、食事を与えるだけで精一杯で、栄養バランスや量には気が回らなかったのか。真実はわからない。

 衛生面はどうだったか。お風呂については、妻の失踪直後は被告が入浴させていたという。

齋藤被告「電気、水道、ガスが止まるまではちゃんと入れてました」

 妻が出て行ってから公共料金を払っておらず、電気、ガス、水道の順に止まってしまった。ゆえに理玖くんはその後、真っ暗な部屋で過ごすことになる。齋藤被告はさらに、理玖くんの脱走を防止するため、雨戸を閉め切り、窓やドア、引き戸にガムテープを貼って外に出られない状態にしていた。電気が止まっても昼間は日が差し込むはずだったが、ガムテ目張りにより、昼夜、真っ暗な部屋で理玖くんは過ごしていた。

弁護人「風呂に入れなくなってからは体を拭いたり?」

齋藤被告「してました。アパートの外に水道があるので、バケツに水を汲んで、タオルで拭いてあげたりとか」

弁護人「水が止まる前は?」

齋藤被告「ちゃんと……風呂に入れてました」

弁護人「電気、ガスが止まって、水が止まるまでは少し時間がありますよね。水が止まるまではどうしてました?」

齋藤被告「………水しか出ない時期、そのときも体を拭いてあげることしかできませんでした」

弁護人「どのくらいの頻度で?」

齋藤被告「けっこう、頻繁にやってた記憶があります。んーと……2日に1ぺんはやってた記憶…」

 3歳の子どもはそれなりに汗をかくし、育児指導の常識に照らせば「2日に1ぺん」は全然頻繁ではない。だが、齋藤被告はそれまで育児をやっていなかったうえ、妻が出て行ってからも「子育ての常識」とされる情報にアクセスすることはなかったようだ。被告自身、生育した家庭環境、特に風呂の頻度などについては、被告の家族への証人尋問でも問われることがなかったため不明だが、被告本人の感覚として、2日に1度、体を拭いてあげる行為が、本当に“頻繁だ”と感じていたかもしれない。

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