シングルマザーのところにはシングルマザーが集まる?
――ははは……だいたい本人が一番能天気ですよね。私もしょっちゅう友達とか親に怒られてます。周りのほうがソワソワしてるっていうか。私も自転車乗ってて怒られたことありますよ(笑)。そうそう、Kさんと話してて、なんかこの家にシングルマザーが集まってくるみたいな話、面白いなって思ったんですけど。
Mさん あ、その話聞いた? やっぱりシングルマザーのとこにはシングルマザーが集まるのよ。旦那さんがいるお母さんたちとは、どうにも話が合わないっていうかね、そう言うとちょっと語弊もあるんだけど、子供の学校の行事とかPTAの集まりとか、平日の昼間ばっかりじゃない? Yが産まれたばかりで、Kが中学1年だったときに、Kの保護者の会合を抜けて仕事行ったりすると、よそのお母さんから「なんで赤ちゃんがいるのに働いてるの?」とかそういうくだらない質問されたこともある。まぁ、シングルじゃなかったら子供が小さいうちくらい仕事を休めたり、そもそも主婦になれたりするってことよね。主婦ってことを否定するつもりは全くないんだけど、そういう発想の人がいるんだなぁって思ったよ。その人たちはもう、根本的に私とは物事の優先順位が違うのよ。何か決めなきゃいけないことがあるってときに、いちいち「主人に聞いてこなきゃ」とか言うんだもん、「お前は犬か!」ってツッコミたくなっちゃう。でも、そんなの目くじら立ててもしょうがないよね、私だってこういう生活を自分で選んだんだから。でもね、お父さんのいないお家には自然と人が集まるの、お母さんたちも子供たちも。知ってた? お父さんってきっと邪魔なのよ(笑)。
――それはなんとなく分かるかも。小さい頃、友達の家とか遊びに行ったときにお父さんがいるとちょっと縮こまっちゃうというか、緊張するような感覚はあったような気がする。ちなみに、結婚していた頃、つまりKさんのお父さんも一緒に住んで生活していた頃にも、Mさんは「お父さんって邪魔」って思うようなことはあったんですか?
Mさん んー、夫は伝書鳩みたいに毎日きっちり21時に帰ってくる人だったから、Kが赤ちゃんだったころは、それまでに晩御飯をしっかり用意するみたいなのが大変だったかな。けどそうそう、今は笑い話だけど、シングルになる前から私の住む家には人が結構集まることもあって、Rのお母さんともう一人お母さん友達と子供たちとで家で遊んでからご飯を食べているときに夫が帰ってきて、私たちの散らかしっぷりに夫がイライラし始めたから、母3人が一斉に掃除を始めたなんてこともあったなぁ(笑)。でも、離婚してからの方が腹の立つことは多かったかも。
――なるほど。ちなみに、“お父さん”は邪魔だけど、Mさんの“彼氏”が家に居るのは邪魔じゃなかったんですか?
Mさん 彼氏のタイプにもよるよね。離婚後に付き合った10歳年下のアメリカ人の彼(Kさんの話にも出てきた彼)は一緒に住んでるような感じだったけど、KともKの友達ともよく遊んでくれて、Rなんかも彼のことが大好きだったよ。それに、Kのこともちゃんと叱ってくれて、Kも怒られると「○○(彼の名前)なんか大っ嫌い!」とか言ってちゃんと喧嘩もできてたし。でも、彼はツーリストビザだったから3カ月おきに日本から出なきゃいけなかったから、手っ取り早い韓国へ出るっていう方法をとってたんだけど、それを繰り返して3回目くらいのときに、入国管理局から私に電話があって、「こういうことを続けられると困る」って言われた。けど私は“彼が日本に住めるようになるから”結婚するっていうのは変だなって思ったから、「日本に住むための結婚はしたくないです」って言った。そしたら「あなたは正しい!」って言われたんだけど、これは褒められてないよね(笑)。それで、彼は次の3カ月のタイミングでアメリカに帰ったんだけど、帰国から何カ月かたった頃にKが「クレヨンしんちゃんの映画が始まるよ!」って電話したら、また日本に来たの。それでその時の来日で今度は就職活動も上手くいって、英会話教室の先生になれたんだよ。まぁ、それくらい、子供との距離が近いと、もし“お父さん”になってたとしても大丈夫だったかもしれないけどね。
――そっか。でもじゃあなんでその彼とはお別れすることになったんですか? 聞いても大丈夫?
Mさん その彼とは、私から別れたというか、結局10歳も下だったせいか、彼は何でも私に聞いてくる感じで、Kと彼と、子供が2人いるみたいな気持ちっていうか、それがすごくストレスになってきて、それで相談して彼が一人暮らしを始めたの。その後も今もずっと仲は良いんだけど、まぁその「子供が2人いるみたい」な状態をストレスと感じ始めたくらいからか、もしかしたら最初から、恋愛対象ではなかったのかも。だから別々に住み始めてからは、特にそういう恋愛的な関わり方ではなくなったっていうだけ。その後、彼は日本で逆玉的な結婚をして今は2児のパパよ。
――ありがとうございます。では、少し時が経って、その後Yくんのお父さんにあたる方ともお付き合いをするわけですよね? Yくんのお父さんは、一軒家を買って4人で「家族」みたいな形で暮らそうとしましてたと思うんですけど、「入籍したい」とは望まれなかったんですか?
Mさん 実はYの父親とは、Yを妊娠したと分かったときにはもう別れてたの。だから、FAXで知らせたのよ。時代を感じるわね(笑)。そしたら、しばらくFAXが届いてることに彼は気が付かなかったみたいで、連絡がないから私が電話したら彼はすごく喜んでね、それで早速2人で神社に行ったもんよ。そういう、子供が生まれるのを仲良く心待ちにする関係っていうのは作れてよかったんだけど、やっぱりある日、結婚の話を持ち出されたね、「親のために籍を入れよう」って。けど私は、もう別れていたっていうのもあるけど、結婚があまり自分に向いてないとも思ってたから「私、結婚はしないよ」って。彼は多分少しはショックだったみたい。けど、冷静に話し合って、しばらく別々に住みながら関係を保ってたの。そうしてしばらく暮らしていたら、次第に私が、新生児を抱えてたから仕事量を減らしてた関係で金銭的に家賃を払うのが難しくなったこともあって、彼は「一緒に住もう」って家を探し始めた。家を見るのは楽しかったけど、そこでもやっぱりあまりに価値観が違い過ぎたね……。
――Yくんのお父さんと、Yくんは今でも会っていますか?
Mさん 最近は小学校高学年になったY自身があまり積極的に会いたい感じじゃないから、しばらく会ってないかな。向こうは休みの日しかダメだし、Yは休みの日は友達と遊びたいって気持ちの方が大きいみたいだし。私は二人に会ってほしいとは思ってるよ。けど、Yの気持ちに任せてるから、今はそんな感じ。