インタビュー

闇に対峙する女、無自覚な男。5時間17分にわたる『ハッピーアワー』をあなたは見たか

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HappyHour

左から、あかり/芙美/純/桜子。
『HappyHour』(C)2015 神戸ワークショップシネマプロジェクト

 5時間を超える大作映画『ハッピーアワー』。市民参加による「即興演技ワークショップ in Kobe」から誕生した作品で、演技経験のない4人の女性たちが、ロカルノ国際映画祭で最優秀女優賞を受賞したことで話題となっている。

 神戸に住む30代後半の一般女性4人を主軸にして流れるストーリー。彼女らの家庭や仕事、日常生活が淡々と描かれていき、最初は他人の人生を覗き見しているような感覚だが、一時間を過ぎた頃から自分が彼女らの人生に参加しているような気分になっていく。不思議な浮遊感を味わった。

 あらためて主な登場人物を紹介しておく。ごくごく平凡に見える4人の女性たちだが、それぞれにそれぞれの悩める事情を抱えている。

 純は夫との離婚を求めて裁判中。夫は決して別れる気がなく、どこまでも純に執着する。純の「もうあなたを愛していない」という率直な言葉も、夫には納得できない。

 正義感あふれる看護師・あかり。怒りを見せるシーンが多いが、一番喜怒哀楽の表現がわかりやすいタイプである。

 専業主婦として家庭を守る桜子。仕事ばかりで不在がちな夫や、思春期の息子とのコミュニケーションがうまくとれず孤独だ。

 芙美は編集者の夫と二人暮らし。共働き夫婦だが、互いの仕事上の関わりが増えていくにつれて不和が広がる。

 4人はそれなりに孤独で、人生を楽観視してもいない。この映画に「女友達がいれば、結局大丈夫」なんてメッセージはない。『セックス・アンド・ザ・シティ』よりも普通で、平凡で、身近な4人だ。

 この映画は、5時間17分という規格外の長尺ということもあるが、見終わった後、誰かに話したくなる作品である。そこで、映画『ハッピーアワー』を上映する関西の劇場支配人4名(男2:女2)と濱口竜介監督で、男とは/女とは/その関係性/恋愛における行き違いなど、作品を題材にしつつ、誰にでも興味を持ってもらいやすい男女の関係や相違点を男・女双方の視点から話し合う座談会を開催。この映画が訴えかけていたものを語り合った。

<座談会前編:仮面を脱がない男、わかってほしい女。

【座談会参加者】
濱口竜介監督(37)=
松村厚/第七藝術劇場支配人(53)=
田中誠一/立誠シネマ支配人(38)=
吉田由利香/京都みなみ会館館長(27)=
林未来/元町映画館支配人(41)=

「好き」を言葉にするか否か

写真左から、田中/吉田/林/濱口監督/松村

写真左から、田中/吉田/林/濱口監督/松村

 吉田さんは、これまで付き合ってきた人は、ちゃんと「好き」って言ってくれる人だった、って言ってたじゃないですか。で、男の人で、ちゃんとそういう風に「好き」って言える人は、多分ですけど、女性のことを姫扱いする人なんですよ。

吉&林 へえ~!

 多分ですよ。女性を立てる男の人ということです。

 姫扱いってなんやろ……?

 要は、基本的に「君が全部決めていいよ、君が選んだものが全部正解」とかっていう感じ。

 私の付き合ってきたのは、そういう人では無かったけれど……。でもなんか、なんとなく、男性って、自分が言われたいことを相手にも言う人が多いのかなって思ってて、たとえば、私を褒めてくれたとしたら、じゃあ、私も相手を褒めなきゃっ、て思うことが多くて。だけど「今日の服装可愛いね」って言われたら、私はどうやって褒めたらいいんやろう……とか考えたりして。

 吉田さんはあれですね。リアリストですね!

 ギブ&テイクな関係ですね。

 ああ~、ギブ&テイクは思います。だから、「好き」って言われたら、まったく同じ言葉では返さないにしても、ある程度の愛情表現はしないといけない……とか。

 それさあ、「好き」ってどういう時に言われるん? 二人きりでいて、「好きだよ……」みたいな?

 いや、なんかエスカレーター上ってる時とかにも普通に言われますし……。

一同 うおお~(笑)!

 なんですか? それ!

 なんだそれ!

 日常でどんどん「好き」と言う男の人と付き合ってきたんですね!

 日常的にどんどん言われますね。

 それはね、言いたいんですよ。そいつ(彼氏)が「好き」って言いたくなったんですよ。その瞬間、言いたいんですよ。

 ああそう、言いたくなった時に言う人が多かった。

 でもそれって、「俺はこんなに好きだって言ってるのに、君は俺のこと好きじゃないの?」って不穏な感じになることもありませんか?

 だから、そうならないように吉田さんは気をつけているんですよね。「好き」をギブされたら、「好き」をテイクするように。

 そう、私も「好き」を返してる。その時、自分の心に「好き」っていう感情が湧き上がってなくても、返すようにしてる。

 え~!

 そのときには、「好き」な感情が盛り上がってないとしても、俯瞰してみたら「このひとのことは好き」って思うから、言われたら返すようにしてますけど。でも、言ってきたほうは、今ちょっと感情が、ある線を越えたから言ってきているわけで……。

 ああ、そういうことも踏まえつつ、返すってことね。

 踏まえつつ、俯瞰してみると「好き」ですよ~って。

 すっごい球が飛んできても、平静に打ち返すみたいなね。

 そうそう。「好き」パコン!「好き」パコン!みたいな。でもたまには、球が返ってこない時がある方がいいんでしょう? 男の人って。

 や、男は球は全部打ち返してくれた方がいいんちゃう?

 そうなんでしょうか。あの、私は彼氏に「好き?」とか聞かれても「……わからん」みたいなことを平気で言う人だったんですよ、20代になるまでは。自分の「好き」とかいう感情をほぼ出さない、彼氏であっても言わないタイプだったんですけど。今になって思うと、「好き」は言ったもん勝ちですよ。

 そう思います?

 特に男性に関しては。男性の方が「好き、好き」って言われてたら、気になって好きになってその女性を好きになってしまうっていうことが、ある気がする。

 それは、片思いの話ですか?

 片思いに限らず。だから女性は、自分の正直な「好き」よりも少し大きめに、常に伝えている方が、男性にはいいんじゃないかって気がしてます。

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