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なぜ、早期の子ども貧困対策は社会全体にとって必要なのか

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Photo by Graeme Law from Flickr

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 努力だけではどうにもならない問題があります。育児をするにも、働くにも、勉強をするにも、円滑にそれをするために必要な環境があります。もちろん過酷な環境の中でも、死に物狂いの努力によってそこから抜け出し、大成功をおさめている人もいます。しかし、頻繁に成功者が現れるわけではありません。メディアで見かける成功者は、稀な存在だからこそサクセスストーリーとしてメディアで取り上げられるわけで、多くの人は大成功をおさめられるわけではありません。

 衣食住も危ぶまれる中で、必死に努力をして、心や体を壊してしまう人がいます。「死に物狂いの努力」の結果、「死」に繋がってしまうことがある。だから、過酷な環境におかれている人たちに、死に物狂いの努力をさせてはいけないと思います。まずは過酷な環境こそどうにかしなければいけない。

 低所得世帯の子どもが大人になってから貧困に陥ってしまう「貧困の連鎖」という言葉があります。親を選べないにもかかわらず、親の所得によって子どもの将来が決まってしまう、これが「貧困の連鎖」です。親が努力を怠ったのかもしれません。何か責められるようなことをしていたのかもしれません。しかし、それを子どもが背負わなくてはいけない社会は不条理で不平等です。だからこそこの連鎖を断ち切らなければなりません。

 ご存知の通り、日本では「子どもの貧困」が社会問題となっています。2012年に16.3%と過去最高を記録した子どもの相対的貧困率(所得が全人口の中央地の半分未満の世帯)は1990年代半ばから上昇傾向にあります。貧困の連鎖に絡め取られる子どもが、これからもさらに増えていくかもしれない。こうした状況を放置すれば、格差がより広がることになります。この格差は、ただ金持ちが増える、というものではなく、生存を脅かされる人が増えていくという類のものです。いま貧困状況にある人だけの問題ではなく、自身が貧困に陥る可能性が高くなるということでもありますし、そうした人々を助けるための社会保障費が増大し、社会が成り立たなくなるというリスクも抱えています。だからこそ、貧困に陥る前に手助けをしなくてはいけません。

新しい子どもの貧困対策

 政府は12月21日に、子どもの貧困対策を決定しました。ニュースでは2つのポイントが重点的に報道されています。ひとつが保育料、もうひとつが児童扶養手当です。

 現在、保育料は、3人以上が保育所にいる場合、2人目は半額、3人目移行は無料という制度となっています。この場合、1人目の子どもが小学校に上がったとき、2人目が全額、3人目が半額となり、負担が増大します。そこで今回の子どもの貧困対策では、「所得が360万円以下」の世帯に関しては、兄弟の年齢にかかわらず(保育所にいようが、小学校以上にあがろうが)2人目は半額、3人目以降は無料という制度に変更することになりました。

 児童扶養手当については、今年10月22日から始まった「児童扶養手当増額キャンペーン」によるオンライン署名が功を奏し、これまで2人目の加算額が5000円、3人目以降は3000円だったものを(一人目は満額の場合4万2000円)、2人目を1万円、3人目以降を6000円に引き上げることが決まりました。ただここでも、これまで2人目にはなかった所得制限が設けられ、世帯によっては増額されない場合があります。

 制度は充実してきているように見えますが、一方で、「所得制限」への疑問も生まれます。また多子の世帯でなくても、貧困に喘ぐ世帯がある中で、なぜ多子世帯にターゲットを絞っているのでしょうか。

 今年4月に、政府は日本財団と協力して、低所得世帯の子どもを支援するための寄付金を募る「子供の未来応援基金」を発表しました。この基金は、報道直後から「なぜ民間に頼るんだ。それは国の仕事だろう!」という激しい突っ込みが各所から飛び交いました。報道から8カ月たった12月12日の報道時点では、募金開始の10月から2カ月で集まった寄付金がたったの315万円ほどだということが分かっています。これっぽっちのお金で、解消されるほど、子どもの貧困は生ぬるいものではありません。民間ではなく、政府が本腰を上げて取り組まなければならない問題のはずです。6人に1人の子どもが貧困状態にあるという問題を、国が放置し続けていいはずがありません。

 それに、いま子どもの貧困問題を本格的に解決しようとすることは、政府にとってもお徳な可能性があるんです。

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