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AV撮影自粛要望 多機能トイレ利用者は車椅子ユーザーだけじゃない

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Photo by nanao wagatsuma from Flickr

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 昨年5月「女性が暮らしやすくなる空間へと転換する『象徴』として、トイレを中心に取り上げる」とした提言をまとめ、有村女性活躍担当大臣(内閣改造の際に退任)が「『トイレ大臣』と呼ばれてもいい」と言い放った出来事を覚えているでしょうか? 募集されていた「日本トイレ大賞」の受賞トイレも知らぬ間に発表されていたようです。

 トイレ大臣を思い出したのは、1月3日に配信された産経新聞の記事を読んだからです。

多機能トイレでAV撮影か 身障者団体がメーカーに「強く自粛を要望します」

 AVの撮影が、車椅子ユーザーの排泄や、介助、おむつの交換などがスムーズに出来るように配慮された多機能トイレで行われており、その影響でカップルが多機能トイレで性行為を行っている可能性がある。多機能トイレを必要としている車椅子ユーザーが使用できずに困ってしまうので、多機能トイレを使ったAVの撮影を自粛して欲しい、と身体障害者のセクシャリティに関する支援を行っている特定非営利活動法人ノアールが要望書を出したという記事です(「多機能トイレでの撮影に関する要望書」)。

 多機能トイレで撮影されたAVは確かに存在します。それが多機能トイレの目的外の利用をどれだけ助長しているのかは私にはわからないのでここでは言及しませんが、肝心なのは、本来の目的外の利用者がいるということでしょう。産経新聞の記事でも、多機能トイレからカップルが出てきたり、高校生らしき女性が3人で出てくるなど、一見すると多機能トイレを必要としていない人が利用しているという実態が紹介されていますし、皆さんもそうした方々を見たことがあるのではないでしょうか?

 国土交通省の発表によれば(多機能トイレへの利用集中の実態把握と今後の方向性について)、車椅子ユーザーのうち約94%が多機能トイレで待たされた経験を持ち、約71%が「障害者に見えない人」が多機能トイレから出てくることを経験しているようです。

 排泄を我慢しにくくなるような障害は多数存在します。また、たとえ健常者と同程度にトイレを待つことが出来る障害であっても、多機能トイレが施設内に十分に設置されていないために、トイレに辿りつくまでの時間が健常者よりも多くかかる場合もあります。施設のバリアフリー設備が十分でなければ、必要な時間は倍増します。さらにはバリアフリー設備があったとしても、スロープの角度が急、エレベーターが駅のホームの端にあるなど、見掛け倒しの「バリアフリー」ということも往々にしてあります。そうした困難を越えてようやく辿りついた多機能トイレは使用中。なんとか我慢して待っていたら、出てきたのは「障害者に見えない人」だったら、恨みに近い感情が沸いてくるのではないでしょうか。

 記事の中でも、要望書を公表したノアールの理事長である熊篠慶彦さんが以下のように話しています。

「健常者が多機能トイレで性行為をしていようと、着替えをしていようと、証明のしようがないのが実情だ。たとえカップルが出てきたとしても、『介助が必要だったので2人で入っていた』と言われれば、何も言えない。しかし、どうしても消化しきれない気持ちが残るのです」

 熊篠さんのお話、ほとんど同意できるのですが、今回はあえてこの発言に「待った!」をかけたいと思います。というのも、これでは「障害者に見えない障害者」が割を食ってしまうのではないか、と思うのです。

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