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再犯率は高くない性犯罪…加害抑止策の可能性を探る

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「平成27年板犯罪白書」より

「平成27年板犯罪白書」より

 昨年末、キングオブコメディの高橋健一氏が女子高校生の制服を盗んだとして逮捕されました。高橋氏は、20年ほど前から窃盗を繰り返しており、600点もの制服を盗んでいたこともその後判明しました。

 messyでは、窃盗事件である本件の「性加害」という側面から、北原窓香さんが執筆をされています(20年前から制服を盗んでいたキンコメ高橋の逮捕。精神医学から性加害について考える)。

 「夜道を歩かないように」「露出した服を着ないように」など、性犯罪では被害者に防犯意識を押し付けるような啓蒙が行われます。加害者に非があるにもかかわらず、被害者が自由を制限されてまで対策を練らなければならないのは理不尽です。

 対策として望ましいのは電車内や地域などを「被害が起こりにくい環境」に変えることや「加害の要因」を取り除いていくことでしょう。そこで本記事は、昨年11月13日に公表された「平成27年版犯罪白書」を紐解いていきたいと思います。

異なる増減を見せる強姦と強制わいせつの認知件数

 まずは性犯罪の概要を抑えます。性犯罪は強姦罪、強制わいせつ罪、強盗強姦罪などいくつかの罪に分類されます。ひとくくりに「性犯罪」といっても認知件数の増減などは内容によって異なります。

 例えば、強姦の認知件数は、昭和39年の6857件をピークに減少傾向にあり、平成26年には1250件となっています。一方、強制わいせつは、昭和62年以降、増加傾向にありました。特に平成12年の急増が著しく、平成15年には過去最多の1万29件を記録しています。その後、数年は減少していましたが、平成22年から再び増加。平成26年は7400件(前年比3.3%減)となっています。

 なお強姦は、平成9年から平成15年にかけて一時的に認知件数が増加している時期があります。「平成14年犯罪白書」は「女性警官による事情聴取など、被害者が被害を申告しやすくしたため」と分析しています。これは、実際に起きた犯罪の増減と認知件数の増減が異なる可能性があることを示しています。施策が大幅に方向転換されることで、認知件数が増えたり減ったりするわけです。そもそも性犯罪の場合は、羞恥心のために被害申告を躊躇するといった理由で、認知されていない犯罪(暗数)が多いとされています。データはもちろん重要ですが、数値化されていない被害者が多数いることを忘れてはいけません。

 同様のことは強姦にも言えます。平成12年からの急増は、平成11年に警察庁が「女性・子どもを守る施策実施要綱の制定について」を通達し、「女性・子どもを犯罪等の被害から守ること」を要請したことが大きな要因でしょう。「女性専用車両」が京王線で導入されたのも平成12年ですから、この時期は、性犯罪が大きく注目されていたのだと思われます。

 「女性専用車両」の話が出たのでついでに述べると、昨年11月に朝日新聞に掲載された「痴漢から守るための『女性専用車両』、効果を探ると…」という記事で、「女性専用車両」の効果が探られています。記事によると、警察庁は「(専用車両の効果について)お答えすることが困難」と答え、鉄道各社も、大阪市交通局は「御堂筋線で、一定の効果はあった」、南海電鉄は「(申告件数は増加しているが)女性に安心感を与える効果があった」と評価にばらつきがあります。効果不明や非公表、「データを取っていない」という鉄道もあり、「女性専用車両」の効果はきちんと検証されていないのが実情のようです。

 「女性専用車両」は、一部の男性から非難や「別の車両での痴漢が増加するのでは」といった疑問の声もあがっています。「女性専用車両」に一定の効果があったとすれば、次は適切な車両数や時間帯の分析を行うことが可能ですし、効果がなかったのであれば、どのような手段を取りうるのかを再考するきっかけとなるでしょう。今後の効果検証に期待したいところです。

 さらにもう一点。強制わいせつが行われる場所は、実はその5割が「屋外」であり、「電車内」は4%程度でした。屋外(おそらく夜道でしょう)での被害がほとんどですから、「強制わいせつ」と聞いて「(車内での)痴漢」のみを思い浮かべるのは適切ではありません(もちろん、割合が低いからといって「(車内での)痴漢」を見過ごしてよいというわけではありませんが)。

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