靴下重ね履きをすると足裏から毒が出て、〈冷え〉とともにさまざまな病気が治る! そう謳われる〈冷えとり健康法〉※を、現役医師はどう考える? 年末の記事「今年もスピ界は盛りだくさんすぎました。☆トンデモオブザイヤー2015☆決定!」にて、改めて続報を、とお知らせしておりました、専門家(=医師)による体験談、いよいよご報告です。
※冷えとり健康法
体の冷えを追い出すと、あらゆる不調が改善するという健康法。耳鼻咽喉科の医師であった進藤義春氏によって1980年代に発案された。冷えとり健康法の考える「冷え」とは一般的にいわれる〈冷え性〉のことではなく、〈下半身は冷たく、上半身は暑い〉〈体の奥に冷えがたまり、表面が熱くなる〉という状態を指す。冷えをとるための基本ケアに、絹と綿(または毛)の靴下を重ね履きして毒を出すことが推奨されるのが特徴。
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今回、冷えとり健康法を体験してくださったのは、東京・目黒にある「五本木クリニック」の桑満おさむ院長。当連載では以前、デトックス記事にもご登場いただいています。
さて、シルクと綿の靴下を重ねれば重ねるほどに毒(冷え)が出るという不思議な冷えとり健康法ですが、ズバリ〈靴下重ね履き〉の効果はいかがですか。
桑満おさむ先生(以下、桑満)「結果からお伝えしますと、靴下重ね履きで過ごし、毎日血圧測定と採血を行いましたが、検査値に変化はまったく現れませんでした。私の場合〈血圧少々高め・コレステロール値高め・大腸ポリープあり〉ですので、冷えとり健康法で症状が改善されれば、数値に何かしら変化が現れるはずです。一瞬、足がポカポカする!? と感じたときがありましたが、結局それは床暖房が入っていたというオチでしたね(笑)」
好転反応って、結局何なんですか?
冷えとり健康法は〈毒(冷え)が出るまでに、人によっては何年もかかる〉という設定ですから、信じて続ければいつかはきっと! なのかもしれません。って、それを強調しては〈効果が出るまで使い続けなさい〉と謳われる、EM菌と同ジャンルですね。失礼しました。
もうひとつ、冷えとり効果のひとつとして注目される、好転反応〈めんげん〉はどうでしょう。
桑満「今のところ、冷えとりでいうところの〈めんげん〉も確認できていません。めんげんは古代中国の本が出典で、〈メンケン〉〈瞑眩〉と表記されることもありますが、某東洋医学の大家によると、正しくは〈めんけん〉と読むもので、〈めんげん〉と呼ぶのはインチキなのだとか。鍼灸師さんにもこの用語を頻用する人がいるようですが、めんげんの発生率は1000人にひとり程度の割合とのこと。つまり、好転反応という名の副作用が多発する代替医療や健康法は、ニセ医学と考えてよさそうです」
1000人にひとりとは、驚き! 冷えとり健康法では、いかにこの〈めんげん〉が出たかという報告が一種のハイライトとなっていて、冷えとりの女王(服部みれい氏)は、高熱後に部屋にたちこめた悪臭を〈お冷えさま〉と名づけて敬い、巷の冷えとりガールたちは悪化した湿疹の写真を嬉々としてアップしています。ところがこの〈めんげん報告〉こそがニセ医学の象徴であったとは、冷えとり健康法ヤバし!? 数多くあるめんげん報告を見ていると、症状の悪化を〈毒出し〉と解釈し、一般的な治療を避けている人が多く見つかるのも、怖いです。
桑満「プラセボ的な効果が得られるケースもあるでしょうが、一般的な治療や医療機関の受診を否定するということは、治療の機会が奪われる可能性が否めません。ちなみに当院(五本木クリニック)では、靴下の破れた箇所に応じて現代医療の技術をもって検査を行う用意はありますので、靴下重ね履きの効果は実際どうなのかを知りたい方は、歓迎いたしますよ。ただし、院長診療に限りますのでご注意ください(笑)」
〈傲慢や冷酷(な性格)も冷えが原因〉と謳われているので、数値化できないものもたくさんありそうです! 冷えとりガールたちの報告では、不妊や婦人科系疾患、アトピーなどが改善されたというものが目立ちますが、どれも自己判断なので、実際のところはどうなのでしょう。
桑満「それが叶えば、更年期外来や不妊クリニックなんてとっくに閉鎖されているはずですよね。現時点では決定的な治療法がないはずの病気が、靴下や半身浴で温めれば一気に解決するなんてありえません」
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