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「奨学金返済のために風俗で働く女子大生」 社会問題を解決するために「風俗」を掲げる手法の限界

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Photo by 渺 渺 from Flickr

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 奨学金を返済するために風俗で働く女子大生の存在が注目されています。火付け役は、昨年10月に上梓された中村淳彦氏による『女子大生風俗嬢 若者貧困大国・日本のリアル』(朝日新聞出版)でしょう。本書は、生活費を稼ぐために、あるいは昨今問題となっている「奨学金」の返済をするために、女子大生が風俗で働いている実態を描き、日本で貧困が深刻な問題になっていることを示しています。

 11月には『NEWS23』(TBS系)でも、「学費借金400万円 増える 風俗で働く女子学生」という特集が組まれました。しかし、togetter「NEWS23で取り上げられた奨学金を風俗等で返済する女子大生特集を観た人々」を見れば明らかなように、番組で取り上げられたのは、風俗ではなくキャバクラで働く女子大生でした。キャバクラも風俗の一形態ではありますが、「風俗」と聞いて私たちが思い浮かべるのはデリヘル、ピンサロなどの性風俗です。「風俗」という言葉のほうが「キャバクラ」よりも話題性があると踏んだ、番組側の戦略なのでしょう。

 しかしこうした手法をとることは問題の実像を曖昧にしてしまいます。問題の根幹にあるのは、貧困や奨学金であるにもかかわらず、この取り上げ方では「風俗」ばかりひとり歩きしてしまうリスクがありますし、そもそも「風俗を扱えば話題になる(からキャバクラとは書かなかった)」という考え方は、風俗を特別視しているという意味でスティグマを制作側が持っているのではといぶかしんでしまいます。

 そもそも、私は「奨学金を返済するために風俗で働く大学生」は決して多くないと考えています。奨学金は、卒業後に借金という形で圧し掛かってきますが、在学中は支払い免除となっているので、「借金をしている」という感覚が弱い。卒業後の奨学金を返すために在学中に働く人は少ないのではないでしょうか。もちろん、経済的な余裕が無い中で、奨学金を使って大学に通っている学生には、生活費や学費を稼ぐために風俗で働く人もいるでしょう。しかし、それは「奨学金の返済」が目的とは言えない。そもそも問いの立て方が間違っているのではないかという疑念があります。

問題は「風俗」にあるのか

 さて、以前より「福祉行政は風俗産業に敗北している」「風俗がセーフティーネット化している」といった言説が見られます。そうした現実はあるのかもしれません。経済的困窮など様々な事情で困難な状況に陥っている人々への福祉はまだまだ十分だとは言えない。ただ一方で、風俗はあくまでビジネスであり、福祉として、セーフティーネットとして期待するべきものではありません。

 さらに言えば、脆弱な社会保障・社会福祉を批判するために、「ビジネスであるにもかかわらず、風俗がセーフティーネットとして機能している」という論調を展開することは、「“あの風俗”がセーフティーネットになってしまっている」という、風俗への否定的な価値観がうかがい知れます。または「セーフティーネットとしての風俗」なら“まだ”許せるという意識の現われなのかもしれません。

 風俗を「コンビニバイト」に変えてみてください。「コンビニバイトがセーフティーネットになってしまっている」。何を言いたいのかよくわからなくなりませんか? なぜ「風俗」では成立するのに「コンビニバイト」では成立しないのか。それは風俗に対しての特別視があるからです。あくまで風俗はビジネスの一形態でしかありません。こうした言説を展開する人の価値観が透けてみえる可能性があります。

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