連載

あなたの考える理想の男らしさってなんですか? 「男らしさ」に馴染めない無職の葛藤

【この記事のキーワード】

IMG_2749

社内での配置転換があり、バイトの内容と勤務地が変わりました。京都から兵庫まで通うなど、今までよりだいぶ遠くなりましたが、自分から希望したことなので、前向きに頑張りたいところです。就職活動も年度内には始めます。

さて、その新バイト初日のことです。

業務内容はというと、ヒーローショーみたいなものの裏方です。

初日は研修で、とりあえずそのショーの全公演を客席で見ることになりました。ちびっこたちが中心の客席の、端の端で、ひっそりとたたずみ、ノートにメモをとるアラサー男性。だいぶ浮いています。

ところが、事件は起きました。

ある回で、お客さんが、小さい男の子1人と気難しそうなお父さん、そして僕の3人のみ、という事態が発生しました。平日で、全然流行ってないそのショーは閑古鳥が鳴いていたのです(閑古鳥って、どんな鳥だろう)。

「さあ! みんなで一緒になんとかかんとかのパワーを送ろう!」

嫌な予感しかしません。このショーは、お客さんとキャラクターが会話しながら即興でストーリーを変えていくのがウリの演目です。要はエチュードみたいなもの。子供は棒立ちでキョトンとしています。お父さんは仏頂面で舞台上をにらみ続けている。ヒーローは懸命に2人に話しかけ続けています。不穏な空気が漂ってきました。

「そ、そこのお兄さん! お名前は?」

遂に心が折れたヒーローが僕に絡みだしました。お前さっき自己紹介しただろ! 心の中でキレながら「奥山と申します」と応じます。研修中とはいえ、客の数が少ないときは、子供たちや付き添いの保護者の方々に混じって一緒に盛り上がるという不文律みたいなものがあったからです。

「じゃあ奥山ちゃん、手拍子とかけ声をお願い!」

これも仕事のうちです。僕はぎこちない笑顔で、ヒーローにうながされるまま「ひゅー!」と叫び、手拍子をしました。もちろん、2人は地蔵状態です。

どうすんの、これ!?

「じゃあ、奥山ちゃんのオリジナルダンスが見てみたいな〜。そしたら元気が出るかもしれないな~。Let’s music start!」

ヒーローのかけ声にあわせて、会場中に音楽が鳴り響きだしました。気分はもう完全にヤケクソです。脳裏には『パルプ・フィクション』のジョントラボルタの姿が浮かんでいました。

数瞬後、会場には、髪と腰を振り乱しながら激しく踊り狂う僕がいました。ただ無心に、刹那的にイマを生きる僕が……! ヒーローの忍び笑いと、「や、やり過ぎだよ〜」という声がシーンとした会場に虚しく響き渡ります。

「止めてくれるか!!」

遂に我慢の限界を迎えたお父さんの怒声が、その地獄みたいな時間をやっと止めました。

1 2 3

奥山村人

1987年生まれ。京都在住。口癖は「死にたい」で、よく人から言われる言葉は「いつ死ぬの?」。

@dame_murahito

http://d.hatena.ne.jp/murahito/

[PR]
[PR]

messy新着記事一覧へ

男がつらいよ 絶望の時代の希望の男性学