お風呂のあとにお湯がジャーって出ちゃうの、まんこ鍛えたら治るかな?――人類がまんこに加えてきた、美白・脱毛・装飾などなどの“まんこカスタマイズ”の歴史をふりかえる連載「まんこカスタマイズAtoZ」。今回は、「膣トレ」のお話です。(連載・全10回予定)
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膣の締まりをよくするトレーニング、通称「膣トレ」。
この言葉を広めたのは、お察しの通りあの女性誌です。2009年、『an・an』(マガジンハウス)の「感度がアップしてしかもキレイになれちゃう膣トレーニングBOOK」から話題になりました。
ですが、実はこの「膣トレ」には、なんともう70年近い歴史があるってご存知でしたか? ということで今回は、人類が膣トレを誕生させるまでの秘話から、専門店に聞いた最新膣トレグッズまで、膣トレ70年史を一挙に振り返ってまいりたいと思います!
なぜ膣トレをするの? 膣を鍛えて得られる効果
膣トレで鍛えられるのは、正確には「骨盤底筋群」と呼ばれる筋肉です。ここを発達させることにより、女性、また女性器の持ち主には次のようなメリットがあります。
(1)膣オーガズムを得やすくなる(いわゆる「中イキ」)
(2)尿モレ対策になる
(3)膣から子宮が飛び出てしまう病気「子宮脱」の予防になる
(4)入浴後に膣からお湯がジャバーって出ちゃう現象が改善される
(5)自分自身の女性器をきちんと知り、大切にする意識が育つ
2010年に出版された『ちつ☆トレ』(荻原かおる著 マガジンハウス)には、以下のような膣トレ体験報告が挙げられていました。
・始めて3日で膣イキを体験しちゃった(香さん・23歳)
・尿モレが完全になくなり、締まりがアップ(Tさん・43歳)
ということで膣トレは、自分のためになるものなのに……なぜか「膣トレは女が男を喜ばせるためのものだ!!」って思ってる人も、世の中にはいますよね。
それは、誰のための膣トレか
例として、雑誌『SAPIO』(小学館)に掲載された記事をみてみましょう。
男の気持ちを分かっていない 女たちの勘違いが「暴走中」なのでは?
女性誌で百花繚乱のセックス特集。でもよくよく見てみると、どこかマヌケでピントがずれているような……。
ヤバい。見出しの時点でもうヤバいです。見事に期待通りのイタさ。もうニヤニヤが止まりません。このうえ更に期待感をあおるのは、これに続く文章を書いているのが、あのみうらじゅん氏であるということですね。
だいたいにして、「膣トレ」と聞いただけで男は萎えるものなんです。「私、膣トレやってんだ」って言われたら困るよね。
まずは「ズボンの上からでも勃たせる大特集」をやってほしい。ズボンの下にはパンツもあって、セックスに至るまでに2回障壁がありますからね。「ズボンから勃っていたらこっちはもう大丈夫」ということに早く気付いてほしいですね。そこをお留守にして、いくら『an・an』を買って膣トレーニングをやられたとしても、杉本彩さんじゃないんだから、順序逆転もいいところです。
(SAPIO 2010年9月29日号/通号493 p.86~88より引用)
あ~あ……やっちゃってるわ。
ひいき目に見れば、これはあくまで男性読者を喜ばせるために発表された文章だからこんなことになっちゃってるんだろうと思うんですが、それにしたってこちらの発言はあまりにも雑でした。
「膣トレは尿モレや子宮脱防止になる!」など、女性はセックスをすぐ「医学」や「健康」に結びつける癖があるんですね。
(SAPIO 2010年9月29日号/通号493 p.86~88より引用)
違うの。違うのよ、みうらさん!
そもそも膣トレっていうのは、男性医師が始めたものなのよ!!
膣トレ誕生秘話
そうなんです。この世に膣トレを生んだのは、男性産婦人科医なんです。その名はアーノルド・ケーゲル、1894年アメリカ生まれ。彼が膣トレを開発したのは、自分のちんちんを締めあげてもらうためではありません。産後の尿モレに悩む患者たちを救うためでした。
当時の医学では、尿モレは手術で治すことになっていました。しかし、その手術の効果は、たった6カ月しかもたないというお粗末なものだったのです。
「手術以外の解決策はないものだろうか……」
もちろん、手術をしていればお医者さんは儲かります。けれど、たった6カ月しかもたない手術を繰り返し、患者たちに大きな負担を強いることに、ケーゲル先生は疑問を抱いたのです。
さっそく彼は研究に取り掛かりました。忙しい日々の中で、診察や治療もこなしつつ、病院から帰宅した後、自宅で妻にも意見を聞きながら……。やがてついに尿モレ解決策をまとめあげたころには、研究開始からなんと15年もの月日が経っていました。
そんな努力の結晶として発表されたのが、膣圧計測器「ケーゲル・ペリネオメーター」です。これは、messyの膣トレコンテストでも使用された機器の原型となったものですね。自分の膣の締まり具合を数値で把握できるようにすることで、膣トレをサポートし、手術なしで尿モレを解決しようというわけです。
ケーゲル先生はその後も、膣圧計測器を安い値段で多くの患者に提供し、「ケーゲル体操」と呼ばれるトレーニングを世に広め続けて生涯を終えました。
ちなみにケーゲル先生自身は、前妻に毒殺されかけるなど、かなり女運の悪い男性だったようです(参考記事:シカゴトリビューン ※原文英語)。それでも多くの女性のために、ケーゲル先生が私欲を捨てて努力したからこそ、今の私たちには膣トレがあるのですね。
だけどぶっちゃけ、思うよね。
体操よりも、楽したい……。
ということで最後には、専門店に聞く最新の膣トレグッズをご紹介いたしましょう!
入れとくだけでOK!? Bluetooth対応!? 最新膣トレグッズラインナップ
今回お伺いしたのは、女性のみで運営するセックスグッズストア「LOVE PIECE CLUB」。ネットショップもありますが、ショールームにずらりと並ぶ膣トレグッズはなんとも壮観です。
上品なスタッフさんに案内され、女性限定の店内で見る最新膣トレグッズは、色や形もさまざま。さくらんぼ型の可愛いボールや、入れておくだけでOKなめんどくさがり屋さん向け、バイブ付きで一台二役のタイプなど色々ありました。
その中でもヤバかったのが……「マジックケーゲルマスター」。
なんと……
こいつ……
しゃべるんです!!!!!!
ぴよっと出ているしっぽは、Bluetooth用のアンテナ。これでスマホと連動し、「しめて~ ゆるめて~」などと声をかけてくれるんです。
他にも、膣圧を測る機能はもちろん、膣トレを続けるとアプリ内の植物が育っていく楽しみなど、膣トレを続けられる工夫がいっぱい!
ケーゲル先生、膣トレもここまで来ましたよ……。70年前のお医者さんの15年間の研究に敬意を表しつつ、現代に生きる私たちも、まんこをしっかり鍛えていきましょう。ほかならぬ、自分自身のために。
参考文献:
Deborah Sundahl 著 「Female Ejaculation and the G-spot」p.40
荻原かおる著「ちつ☆トレ」p.3
取材協力:LOVE PIECE CLUB(http://www.lovepiececlub.com/)