「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」ヒロイン・モコはなぜモテない
さて、実はここからが本題なのですが『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』という作品を紹介したいのです。「ワタモテ」は現在、毎週月曜深夜2時からテレビ東京で放映されているアニメですが、これがもう、とんでもない面白さで、見ていて3分に一回はげらげら笑えます。日常生活でめったに笑うことのない殺伐とした私の生活の、貴重なオアシスです。最近私は主人公の黒木智子(愛称モコっち)のことばかり考えており、もうモコがかわいくてかわいくて、仕方ありません。
先程も書いたとおり、あまり人間のキャラクターに感情移入できない私が、「ワタモテ」では、初めてと言っていいほどのレベルで人間の主人公感情移入できました。これまで触れたアニメ・実写・小説・漫画・演劇など、ジャンルを問わず、ここまでに感情移入できた人間のキャラクタ―はモコが初めてです。
「ワタモテ」は、同性・異性を問わず、モテないというか人望のない女子高生・モコが、そこから脱却すべく奮闘する日常を描いた作品です。モコは学校に友達は一人もおらず、お昼は一人で食べたり、小説を読んだりして過ごしています。学生時代、常に友達に囲まれていた人には分からないと思いますが、こういう人、リアルにいるんですよ! 私ですが。なので、モコには感情移入しっぱなしなのです。
加えて、「ワタモテ」では、アニメならではの素晴らしい表現が使われていて、モコがクラスで孤立している時、クラスメイトは灰色で描かれます。私もクラスや職場で孤立していた時、周りがグレー一色に見えたので、効果的に色を使ったこの表現、すごく心に刺さります。さらにモコが困った時や焦ったときは、ピカソのキュビズム風にモコを描くことで表現されていますが、これもすごく効果的で素晴らしいと思います。
【モコの非モテ要因その1:容姿非端麗】
まず、モコの容姿ですが、かなり斬新なルックスです。左右対称でどこにも不具合がないシータとは正反対と言っていいでしょう。モコは左右非対称の髪型しており、前髪は右目をほとんど覆い尽くしています。その目ですが、青いクマと、丹念に描かれる下まぶたのしわに囲まれているという、衝撃のキャラクターデザイン。
顔だけでも充分不気味なのですが、立ち姿にも左右対称な要素はほとんどなく、猫背で、女子高生のシンボルである制服は全体的によれっとしており、スカートも昨今あまりみないひざ下丈というバランスの悪さ。そして靴下は、なぜか三つ折り着用です。
シータとは反対に、見る人をむしろ不快にさせるためにデザインされたキャラクター、モコ……。
モコだって、なんとかルックスを改善しようとネットで情報を検索しているのです。シータのような生まれつきの美人とはこういうところが違います。けれどアヒル口、デコ出し、モテポーズでキメたはずの己の姿を鏡で見て、吐いてしまうモコ……。
これもよく分かります。私も自分の姿があまりに醜いので、あまり鏡は見ないようにしているからです。ええ~そんな人、リアルにいるのぉww? って思った、容姿端麗なそこのアナタ! アナタは、こんなコラム、読む必要ないですからね。
【モコの非モテ要因その2:誰に対しても笑顔を向けることができず、話すのがおぼつかない】
モコはシャイなあまり、小学校高学年以降、家族以外とは話せない体質になってしまいました。高校では話しかけられるのが久し振りすぎて、担任の「気をつけて帰れよ」の言葉にすら、返事の言葉が思いつかず、ひきつった表情で会釈するのが精いっぱいです。
会話力を回復しようと、一番身近な異性である弟に「1日1時間私と会話して」と頼むのですが、弟は、「うざい、死ね!」と拒否。それに対し、「トークしてくれなきゃ、自殺する」となお喰い下がる、モコ……。
確かに自殺をたてに、思春期の弟を強制的に自己啓発に巻きこむのは「うざい」以外の何ものでもありませんが、ちょっとここで、シミュレーションしてみましょう。これが、シータだったら、ということを。1日1時間私と会話して、と潤んだ黒目がちの瞳でシータに見つめられつつ、頼まれた日には、断れる人はいないのではないでしょうか? 少なくとも、私は断れません。
シータのような資質に恵まれないモコは、自殺をたてにしてでも努力するしかないのです。その辺は少し大目に見てあげてください。そんなことより、モコの努力を評価しようではないですか。弟に死ねと言われても、うざがられても、努力が実らなくても、頑張るモコの姿勢(しかも間違った方向で!)が、私にはすごく涙ぐましいし、いじらしいのです。
【モコの非モテ要因その3:感情を表に出せない】
運にも恵まれないモコは、教科書を忘れても誰にも「貸して」といえず、雨が降れば傘が壊れます。雨宿りに入った公園で、たまたま隣り合わせた男子2人に話しかけられますが、当然ながらモコはうまく話せません。
なんとか盛り上げようと放った渾身のギャグは声が小さくすぎて男子に届かず、「え、もしかして俺に言ってる?」と言われる始末。モコは、じわっと涙が出てきてしまい、泣いているところを見られたくない一心で、トイレに行くのですが、その時ウケを狙って「野グソ的なものでもしてこようかなって……」と言い、男子2人を凍りつかせます。
このエピソードも、私は涙なしには見れませんでした。そして、なぜ私が何か言うと、必ずその場の空気が悪くなるのか分かった気がしました。たとえばシータが「野グソ的なものでもしてこようかと」と言えば、男子2人は「かわいいのに気どってない、いいコだなあ!」と思うことでしょう。もしくは、月9出演の香里奈さんが言ったとしたら、「モデルさんで女優さんなのに、さばさばしてて、かっこいいなあ!」と思われることでしょう。
けれど、不気味な表情に髪型で、目の下にクマのあるモコや私が言うと……場を凍りつかせるだけなのですね。いやぁ、勉強になりました!
さらに注目すべきは、「泣いているところをみられたくない」というシータと真逆なモコの心理ではないでしょうか。下手に言葉でウケを狙うより、せっかく涙が出たなら、それをおおっぴらにした方が、男子に優しくしてもらえたかもしれないのに、そんなこと思いもしないモコの方が、私は好きですが。
私の文章では100分の1も伝わりませんが、「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」は、本当に面白い番組ですので、皆さん、ぜひご覧になってください。現在ニコニコ動画でも毎週土曜日深夜0時30分から配信されていますので、放映されていない地域の方は、そちらでも、ぜひ!
■歯グキ露出狂/ テレビを持っていた頃も、観るのは朝の天気予報くらい、ということから推察されるように、あまりテレビとは良好な関係を築けていなかったが、地デジ化以降、それすらも放棄。テレビを所有しないまま、2年が過ぎた。2013年8月、仕事の為ようやくテレビを導入した。