こんにちは、相変わらずダメなアラサー奥山です。
今回は読者の皆さんに「いい歳の取り方って何?」という相談をしていました。早速頂いたアドバイスを読んでいきましょう。
“「新しい自己イメージの獲得」ってそのときに位置してる環境から要求されて、それに応えようとしてそれらしく振る舞う術を表面的に身につけていってるだけのような気がします”
“まず、10年前の自分宛に手紙を書いてください。次に、10年後の自分宛にも手紙を書いてください。そして、10年経ったら返信の手紙を書いてください”
“男性が32、3でもまだまだ若造でいられるのは男性社会から見た仕事人としてなわけで、私生活や恋愛観まで30過ぎで大学生ノリの男性は痛いな~と思う”
“なんかタイムスリップして何回も元に戻るSFみたい。怖い…”
“本当は身近な人の良い所を真似する方が簡単ですが、尊敬できる人は現れましたか?”
さて。なんだかたくさん、いろんなアドバイスをいただいてしまいました。
無職の朝は早い
“奥山さんの理想の30代がどんなのだったのか知りたいです”
僕の理想の30代像、それは一言で言えばカリスマでした。
今ごろ僕は、「情熱大陸」に出てるハズだったんです。
新進気鋭の……なにかのクリエイターとして!
デザイナーズマンションに住んでてパーティー三昧、町を歩けばサインを求められ……。
僕はいじめられていた10代の頃、そして大学を卒業してからもずっと、本気でこう思って生きてきたんです。ふざけてたわけではありません。
成功すればみんな自分に、なびくときがくる。だから今は他人にどう思われても気にしない。気にしちゃいけない。人がらを良くしようと、気を割いてる余裕があったら、小説を書くんだ。傑作を書いて、絶対成功してやる。お前らみんな見返してやるからな。
自分の能力が社会に認められれば、人格破綻者でも、向こうから人が寄ってくる。いやしくも作家を目指すのだから、人に好かれようなんてセコい考えは捨てなきゃダメだ。成功した芸術家はみんなそうだ。ありがちな人生経験なんかを積んで、人間的に成長してる暇があったら、小説を書かなきゃ。
そうして……みなさんご存知の通り、ただの痛い無職のアラサーが出来上がったわけです。そんな人生を送って残ったのは……孤独に強い、というクソの役にも立たない能力だけでした。
生き直し
“理想の自分と現実の自分との距離が離れているのかもしれません”
“一度人生設計図を書いてみて、そうなるには自分には何が足りないのかを考えてみるのはどうですか?”
人生設計図はもはや完全に破綻しています。
他の人が健全に成長し、大人になってきた時間を、僕はただただ引きこもり過ごしました。レベル上げを怠ってストーリーだけ進めたせいで、ボスに歯が立たなくなったRPGのように、今の僕はかなり苦しい状況です。仕事を辞めたのは三年前。今では親からは就職しろと促され、元恋人のミョンちゃんにも幾度となくフラれました。完全に自業自得ですが。
と、この原稿が書き終わらないうちに、僕は誕生日を迎えてしまいました。ついに29です。いよいよ30代まで残り365日。既にカウントダウンは始まっています。
“自覚的に自分の年齢を意識している男性って、際立って大人に見えます”
年齢に自覚的に。コメント欄のアドバイスを思い出します。
どうやらこのへんで、人生の設計図を描きなおす必要があるようです。もう大学生には戻れません。時間は不可逆で、やり直せないのです。全部受け入れて、これからのことを考えなくちゃいけない。
友人K「俺は金があって酒飲んでセックスしてオシャレな暮らしが出来たらそれで良いよ」
大学時代に交わした会話を思い出しました。居酒屋で、友人はそんなことを言っていました。
僕「でも、人は死ぬんだぜ」
友人K「それがどうしたよ。どうでもいいよ、そんなこと」
何か根本的なところで人種が違うんだな、とそのとき僕は思ったものです。僕は、死ぬことがどうでもよくありません。「死は僕の脅迫観念なんだ」というウディ・アレンの言葉に僕は共感します。
生まれてきて死んでいくまでにやらなければならないことがあるような気がしてしょうがないんです。
別にそんなことないのかもしれないけど。
友人K「結局、お前は何が不満なんだよ?」
社会人になって、同じ友人と飲んだときに言われました。「とりあえず金には困らない。もっと人生楽しめよ。海外旅行でも行って女買ったり酒飲んで踊ったりしようぜ」僕はため息をつきました。「今日死んだら後悔すると思うんだ」
僕「楽しいとか楽しくないとか、どうでもいいんだ。楽しいことの総量が、自分の幸福の総量を増大させることが、僕の人生の主目的にはなり得ないんだ」
相変わらずわけわかんねぇな、というリアクションを彼はしました。
友人K「じゃあ何が大事なんだよ?」
僕「仕事だよ」
大真面目に言うと、Kは吹き出しました。「やる気もない、興味もない、働きたくない、口を開けば会社の愚痴ばかりの冴えないお前が言うことかよ?」全く言い返す言葉も浮かびません。
友人K「ってか奥山、お前会社で何やってんの?」
僕「電話機を使って誰かに電話したり、居酒屋でおべっか使いながら、片手間にExcelやWordで書類やデータを作ってる。手と口を使う簡単なお仕事だよ」
友人K「じゃあ一番苦労してることは?」
僕「朝起きて会社に行くこと。次点で笑うこと」
僕の言うことは矛盾しているのでしょうか? 僕自身の中では全く矛盾していないのですが、世間的にはそれは矛盾に見えるのかもしれません。
“自らの殻を破る一歩が踏み出せないのかな。彼は。あんま難しく、また愚痴っていても仕方ないよ、と、思うけど。”
僕はとくに自分に殻があるなんて思っていませんでした。ただ、人からはそう見えるみたいで、昔からよく「殻に閉じこもるな」「殻を破れ」みたいなことを言われて生きてきました。そんなに殻に閉じこもってるように見えるんでしょうか。自分で意識出来ていないだけで、それは真実なのかもしれません。
“奥山さんはDAIGOを目指そう!”
早速バイト先で「おはウィッシュ~」と挨拶してみたところ、素無視されてしまいました。こういう殻の破り方じゃダメみたいです。
もう少し真剣に考えてみます。
僕は、リア充になります!
小説を書かないなら。あとの人生、一生懸命仕事を頑張るのがいいのかもしれません。ボロボロになるまで働いて、早く死ねれば御の字。これは……結局は今までの僕の延長線上の発想だと思います。目標と定めたことに一点集中して、他のことは捨てる。そういう生き方を確かに僕はしてきました。
その結果、コミュニケーション能力の著しく低い、痛い人格破綻者の、無職アラサーが出来上がってしまいました。
これが僕の殻なのかもしれません。
この生き方の欠点は、もう、わかり過ぎるくらいわかっています。もしそれがダメだったとき、どうやって生きていっていいのかわからなくなる。
例えば会社員を頑張って、他の何もかも捨てて頑張って、50で会社が倒産したらどうでしょう。他の何もかも捨てて頑張るなんて、そんなに褒められたことじゃないのかもしれません。
僕は今まで出会った色んな人に迷惑ばっかりかけて生きてきました。それでもいいと思ってた。弱い人間だから被害者で、傷つけられてばかりいた、なんてそんなことはありません。書くことを心の中で言い訳にして、他人を傷つけたり、損なったり、酷いことをしたことが何度もありました。
そんな生き方は……もう、僕自身が嫌になったのです。
“奥山さんは奇矯な人に憧れているような感じがします。でもなんだかんだでやることはやり、常識から逸脱することができない、そんな自分が嫌なのかな”
「人と仲良くしてはいけない」ということが、作家を目指す人間としての僕の「常識」だったのかもしれません。
だから僕は……理想の30代……決めました。
これからは、リア充を目指すことにします!
リアルが充実している、友人が多く交友関係が広く、毎日を楽しく生き生きと暮らす、そんな人間になります。「友達いらねぇー!」なんて言ってる場合ではありません。なるべく外に出て人生経験を積み、タフな大人になることを目指します。
……なんだか政党のマニフェストみたいに嘘くさいですね。でも本当の気持ちなんです。
だからこれからは、もっと楽しんで生きる。その方が、コミュニケーション能力が身について、仕事もうまくいくような気がします。人生を楽しんで、仕事も楽しんで、頑張れる人間になります。
ダメだ。書けば書くほど嘘臭くなってきました。これは一体何なんでしょうか? まるでエログロナンセンス映画に突如としてミッキーマウスが出現して歌い出すような違和感。僕が何かポジティブなことを口にしたら、途端に、記事から何かのリアリティが失われていく……。正体不明の謎の現象です。ネガティブ磁場が強すぎるのでしょうか。誰か、何故こんな現象が発生するのか、よければ原因を教えもらえないでしょうか? 僕には一生ネガティブな発言しか許されないのか……。僕みたいなヘタレは、一生、死んだように生きてるのがお似合いなのか。
いやいや。そんなこと言ってる場合ではありません。
慣れ親しんだ不幸や悲惨や苦痛、絶望だけでなく、金稼いで酒飲んでセックスしてオシャレな暮らしをして、そういう全部を味わった体で、全身全霊で仕事を頑張る。欲しいモノもやりたいことも行きたい場所も、考えるまでもなくたくさんあるんです。今まではそれを我慢するという自分の殻に閉じこもっていただけ。30代は、封印していた欲望を解放することに一生懸命になります。それに、仕事も頑張りたい。一緒に働く人に自分の存在価値を認められて、死後も残るような仕事がしたい。
それに……。
なんかそんな気がする! きっといける気がする!
…………ぼ、僕はヤバい奴じゃありません! そんな侮蔑的な眼差しで僕を見ないで下さい!!
だからとりあえず、これから就活を頑張ります。来週頃には貯金も目標金額に達するので、いよいよ無職を本格的に卒業し、有職アラサーになるため活動していきます。疾風怒濤の無職アラサー就活編、乞うご期待!
“なんかタイムスリップして何回も元に戻るSFみたい。怖い…”
そんなことはもう……言わせません!
最後のセーブ地点は過ぎて、あとはラストダンジョンを突っ走るだけです。
こっから先は、後戻りなし言い訳なしの真剣勝負です。
……うまくいくのかな…………正直かなり、不安です。