ブラック風俗店
私と同じようなケースでお店と揉めたケースがないかインターネットで調べてみたところ、「体験入店を辞めたいと言ったら、店の規約で辞めるときは一カ月前に言わないと罰金になると言われた」、「お店を辞めたいと言ったら、急に言われても困る、今辞めるなら親や学校にバラすと脅された」など、辞めるときにお店側とトラブルになった相談や体験談がいくつもヒットしました。
私がそれまで働いてきたお店は「辞めたい」と言えばスパっと辞めさせてくれましたし、理不尽な要求をされたこともなかったので、この件では自分の甘さを反省すると共に、風俗業界の怖い部分を見たような気がしました。
ただ、このお店のように私が面接や体験入店のみで本入店をしなかったお店の中には、「ブラックっぽいな」と思うお店はいくつもありました。やたらと規則が多く、罰金規定も多い。女の子の前でスタッフを怒鳴り散らす。スタッフが明らかに堅気じゃない。こちらが出来ないと言っているプレイ内容を「それくらい出来ないとこの業界じゃ生きていけないよ」と無理に押し付けてくる……などなど。
風俗業界のブラックなルールでキャストを縛り、お店の都合のいいようにキャストを扱い、そのブラックな世界から抜け出せなくさせていく。違和感があるお店はどこもそんな空気が漂っていました。私が賠償金を迫られたお店も、面接時に何となくそんな空気を感じたんですが、早くお店を決めたいという焦りとお金欲しさに判断力が鈍ってしまったのかもしれません。
私のようなケースが法的にはどう判断されるのかということも自分なりに調べてみましたが、相談した知人が言っていた通り、そもそも雇用契約を結んだわけでもなく、事前に辞退を申し出ているので賠償金を支払う必要はなさそうでした。
仮に賠償金を理由に無理に働かされることがあれば、強要罪や労働基準法第5条の「強制労働の禁止」にあたり、お店側は法的に罰せられます。また、「体験入店を辞退した場合、◯万円の罰金」という雇用契約を結んでいたとしても、労働基準法16条で違約金や損害賠償金をあらかじめ決めることは禁じられていますし、そのような罰金の規則は労働基準法第13条により無効になるとされています。これは「遅刻◯分◯千円、当日欠勤◯万円」という罰金規則にも当てはまるかと思います。
また、「辞めるときは一カ月前に言わないと辞めさせられない」と言われた場合も、民法第627条で「期間の定めのない労働契約については、各当事者はいつでも解約の申し入れをすることができ、解約の申し入れから2週間を経過することによって終了する」とされています。
正直、性的サービスを提供するという風俗の仕事の性質上、「辞めたい」、もうこの仕事はできない」と女性が思った場合、それ以上働き続けることは精神的にも肉体的にもかなり難しいのではないかと思います。だからこそほとんどの風俗店の求人情報に「辞めたいときに辞められます」と書いてあるのだと思うし、良心的なお店ならその通りに無理に引き止めることはせず、すぐに辞めさせてくれるかと思います。
ただ、今は何かトラブルに見舞われてもインターネットを開けば似たような事例がすぐに調べられますし、そこから解決の糸口を見つけられることも多々あるかと思います。風俗業界でのトラブルに関しても、「警察に相談するか法テラスの無料相談を利用しましょう」と促す文言が知恵袋の回答などでも多く書き込まれているので、泣き寝入りするケースは少なくなってきているのかもしれません。
しかし一方で、「この仕事を選んだ自分が悪いのだから」、「こういうリスクも込みの高収入なのだから」と後ろめたい気持ちから自分を殺して、この業界の闇に飲み込まれたまま抜け出せずにもがいている女性たちがまだまだ沢山いるのかもしれないなぁと感じる今日この頃です。
(朝比奈ゆきえ)