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マイ ファースト フェミニズム 欲望に狂い続ける中村うさぎに感銘を得た

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(C)柴田英里

(C)柴田英里

 中村うさぎさんのフェミニズムに出会ったのは、中学生の時でした。

 当時は角川スニーカー文庫と富士見ファンタジア文庫の作品を中心にライトノベルの文化が広がっていくさなかで、私は水野良『ロードス島戦記』(角川スニーカー文庫)や深沢美潮『フォーチュン・クエスト』(角川スニーカー文庫)といったいわゆる王道の物語よりも、神坂一『スレイヤーズ』(富士見ファンタジア文庫)やあかほりさとる『爆裂ハンター』(角川スニーカー文庫)、それに中村うさぎ『極道くん漫遊記』(角川スニーカー文庫)といったギャグ色も強く、邪道・外道といわれるような物語を好んで読んでいました。

 当時、あかほりさとるがライトノベルのあとがきで、「極道くんよりも作者の中村うさぎの私生活(いわゆる、ショッピングの女王的な生活)の方がずっとハチャメチャで面白いからエッセイを書くべきだ」とすすめており、私は中村うさぎそのものに興味を持ちました。アクションRPGにおいて普通の人は選択しない極悪非道の選択(極道プレイ)をし続けるとどうなるか?という雑誌『コンプティーク』(KADOKAWA)の企画から生まれた極道くんよりもハチャメチャって、一体どういう人なのだろう、と期待を膨らませて数年過ぎたところに、『だって、欲しいんだもん!—借金女王のビンボー日記』(角川書店)の文庫を本屋で見つけ、抱腹絶倒した次第です。

 庶民は子供時代に「自分が持っている(使える)金額以上にお金を使ったらいけない」と教え込まれます。その教えは「借金をするときっと怖い目にあう」みたいな脅し・偏見とともに刷り込まれ、2時間ドラマの借金取り像でイメージを補強しながら私たちは「借金したらアカン」と身の丈にあった金銭感覚を育みます。そんな庶民感覚から遠くはなれた世界が、『だって、欲しいんだもん!—借金女王のビンボー日記』には描かれていました。

 同書は序盤こそ、私が客観的と信じる己に内面化した規範(いわゆる、“常識”というやつ)に基づいて、「持っている金額以上にお金を使ったらダメじゃん」とツッコミを入れながら読んでいましたが、しかし徐々にツッコミは「なんでこの人はこんなに大変そうなのに、こんなに活き活きしているんだろう」という疑問に変わり、読み終わるころには爆笑しながら自分の今までの“常識”が少し書き換えられているという、大変楽しい読書体験をもたらしてくれるものでした。

 とことん享楽的に、自分の欲望に忠実になり、心の中で「これは失敗だよなあ」と思ったとしても、自分自身が納得するまでストイックに“狂い続ける”。誠実な狂人としての「買い物依存症体験&考察記」であった『だって、欲しいんだもん!—借金女王のビンボー日記』は、私がフェミニズムと出会ったキッカケでした。

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柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」

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