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NHK不妊治療特集「捨て石に」発言の波紋。子を産まないことを責めても無意味、仕事と家庭の両取りを「ワガママ」にさせる働き方こそが諸問題の源

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Photo by Mindaugas Danys from Flickr

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 2月13日午前にNHK総合で放送された『週刊ニュース深読み』の特集は、「子どもは欲しいけれど…不妊治療 理想と現実」だった。

 番組では、専門家として元日本生殖医学会理事長の吉村泰典さん氏や、自身の体験をつづったマンガ『不妊治療、やめました。~ふたり暮らしを決めた日~』(ぶんか社)の著者である堀田あきおさん、かよさん夫妻などのゲストを招き、まず不妊治療を行う夫婦が増加していることを説明。高度医療技術は進歩を続けるが、高齢出産は母子にかかるハイリスクがあること、体外受精の成功率は40歳で8.3%であること(この数字を高いと見るか低いと見るか)、経済的にも負担は大きいことなどがあり、当然ながら「誰でも、何歳でも望むように出産できる」わけではない。もちろん不妊治療当事者も「誰でも、何歳でも望むまま出産できるようにしてください」などとは言っていない。

 さて、不妊治療は健康保険が適用されず高額の治療費がかかるため地方自治体が助成する制度もある。たとえば東京都では、年齢や回数制限をもうけたうえで、治療のステージごとに7.5万~25万円を助成する東京都特定不妊治療費助成がある。番組内では不妊治療に税金が投入されることへの反論としての視聴者の声も取り上げた。たとえば、「出産を望むならば若い時期に行動すべきだった」という趣旨の苦言や「不妊治療ではなく子育て世帯にもっと税金を使ってほしい」といった趣旨の要望である。

 しかし司会の小野文惠アナウンサーは「40代の不妊治療をもっと手厚くしないと少子化は止まらない」という意見を読み上げ、次のように自身の体感を話し、不妊治療への助成に肯定的な見方を示した。

「私も40代なので、20歳くらいの時に高齢出産のニュースを見て『50歳くらいまでに産めばいいのかな』と思っているうちに手遅れになりました。でも、ちょっとでも希望があるならと希望をつなぐ人たちの気持ちは、痛いほど共感できますし、そこに手を差し伸べないのは、無念っていうか……」

「良い捨て石になるには、どうしたら」

 小野アナウンサーは現在47歳で、大学卒業後に新卒でNHK入社し23年のベテランである。既婚であるが子供はいない。新卒で大企業に正社員として就職すれば、20代のうちは出産に現実味がないとしても無理はない。そして小野アナウンサーは最初に配属された山口局に勤務していたころ、同僚アナウンサーと結婚をしたが彼の異動によりすれ違いとなり離婚、4年前に別の男性と再婚したという経緯がある。だからこそ次の言葉には重みがあった。

「20代30代の、今、もうちょっと仕事頑張らないとっていう時期、産めるような社会でもなかったですよね?」

 男女問わず一度でも戦線から離脱してはならない、という企業社会の空気をあらわしている。その小野アナウンサーが、番組後半で発した「捨て石」という言葉も、視聴者に波紋を広げた。

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ヒポポ照子

東京で働くお母さんのひとり。大きなカバを見るのが好きです。

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