芸能事務所が所属タレントを「守る」べく、メディアとの付き合いを避けたり交渉したりというのは普通のことだが、スターダストのように多数のタレントを抱えた巨大な組織となればやはり、スキャンダルの一切ない清廉潔白なタレントだけというわけにはいかない。タレントがスキャンダルを起こしたときに「このことを報道するなら、自社の所属タレントは今後一切、そちらのメディアの取材を受けない」と圧力をかけるのが、芸能事務所お得意の“交渉術”だが、よく考えてみればおかしな話だ。「自社に不利な報道を許さない」なんて、脅しでしかないからである。
たとえば過日、日本中が大騒ぎになったSMAP解散騒動では、ジャニーズ事務所のメリー喜多川副社長が発信する情報“だけ”しか扱わないマスメディアが複数あった。ジャニーズ事務所は人気タレント、つまり太く濃いファンを多数抱えるタレントが多く在籍しており、テレビやCM出演も非常に多い。そのタレントたちが一斉に「このメディアには出ない」と引き上げることになれば、メディア側は困るというわけだ。
しかしである。ジャニーズ同様に人気タレントを複数マネジメントするスターダストが、日刊スポーツや東スポと絶縁したからといって、日刊スポーツと東スポ側になにか不利益があっただろうか。たとえば今回、映画賞の式典に夏帆が出なかった。だから何かといえば、別に、である。夏帆が欠席しても、他の事務所に所属する綾瀬はるか、長澤まさみ、広瀬すずが出席しているのだから、誌面用に華のある写真はいくらでも撮れた。夏帆の不在でメディア側が困ることは何もなかったのではないだろうか。
そう考えてみれば、ジャニーズ事務所にしろ、バーニングやナベプロにしろ、「脅し」を駆使してメディアを統制してきた他の芸能事務所に対しても、メディア側がいくらでも反旗を翻すことは可能なのではないだろうか。くだらない年寄りの馴れ合いはもうやめて、スポーツ紙も週刊誌も自由にペンを執れば、もっとメディア自体も面白くなるはずだ。
(清水美先)
1 2