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「女性の仕事」は誰でもできる? 保育士不足、介護離職問題が解決しない理由とは

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Photo by Stephen Topp from Flickr

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前回は編集さんからの依頼で急きょ時事問題を扱いました。今回は、女性をとりまく社会問題、特に「女性活躍」という視点から掘り下げてみたいと思います。

初回で行った問題提起はどちらかというと、大卒ホワイトカラーの職場での男女格差の話ですが、日本社会でこれだけ「格差」が注目される中では、女性内格差、男性内格差も男女格差同様に、あるいはそれ以上に真剣に取り組んでいくべき課題だといえるでしょう。

社会学、経済学は社会科学と呼ばれる学問領域で、経済格差や社会格差、ジェンダー格差について研究しています。そして、社会科学の知見から結論づけるなら、日本ではメディアが強調するような形での明確な格差は拡大していません。むしろ、昔から存在していた格差にかかっていた、経済発展と一億総中流意識というベールが剥がれ落ちるなかで、その存在に気付く人が増えているという方が正確です。つまり、社会・経済的格差が広がっているというよりは、社会・経済的格差に対する意識が広がっているのです。また、今後、格差がある状態を放置し続ければ、それが格差の連鎖、格差の拡大につながっていく可能性は十分にあります。

社会的な評価が低い「女性の仕事」

話題の「一億総活躍」あるいは女性活躍推進法案が見ているのは大卒ホワイトカラーの女性たちですが、一連の「総活躍」議論は、家の中にいる女性、ホワイトカラーではない女性を見ているものではありません。また、女性の活躍によって没落していく男性がいることにも目を向けていません。つまり、一億総活躍の議論が見据えているのは「わかりやすく能力の高い人だけの総活躍」であり、女女格差、男男格差といった内部格差を広げかねない施策でもあるのです。

能力の高い人が活躍するということも重要なことですが、問題は女性が外に出ることによって、家庭内での子育てや介護を担う人がいなくなることです。OECDの調査によれば、日本の男性の家事育児の参加率の低さは先進国でもダントツですが、諸外国でもやはり女性の方が負担していることに変わりはありません。

クリックで拡大 (OECD Balancing paid work, unpaid work and leisureより)

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・日本の男性の家事労働時間は、「男尊女卑」と思われがちな国よりも短い。
・女性の社会進出が進んでいる国の女性たちよりも、日本の女性の外部労働時間は長い。
・日本の女性より外部労働時間が長いのは、スウェーデン、カナダ、オーストリア、スペイン、アメリカ、エストニア、ポルトガルの女性。
・日本の女性より家事労働時間が長いのはトルコ、メキシコ、ポルトガル、イタリア、オーストラリアの女性だが、彼らの仕事十字時間は日本の女性より短い。
・日本の男性の外部労働時間は先進国の中でダントツ。これでは家事をする時間があるわけがない。

この図と分析が示すように、日本の女性は外部労働時間も相当の長さですが、とにかく家事育児負担が多すぎます。よく指摘されていることですが、日本の男性の長時間労働は国際的に見ても異常な数値です。このように異常な長時間労働をしなければ「男性と同じように働ける」ことを認めてもらえず、さらに長時間の家事労働まで負担しなければならないとすれば、日本の女性が「女性らしい働き方をしよう」「女性らしい生き方をしよう」と、生き方をシフトしていくのもうなずけます。だって、物理的に不可能ですから。

一方、アメリカなどではホワイトカラーの高給取りの女性は家事・育児を外注していますが、ベビーシッターやメイドの多くは低い時給で働くマイノリティや移民の女性たちです。つまり、「男性並みに働く女性」が「母親・主婦・嫁の仕事とされる家事・育児を安く引き受ける女性」に外注することで成り立っているのです。しかし、これでは社会経済的地位の低い女性が家事を引き受けているだけで、「男は家事をしない(できない)」という構造そのものを変えることは出来ません。

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古谷有希子

ジョージメイソン大学社会学研究科 博士課程。東京大学社会科学研究所 客員研究員。大学院修了後、ビジネスコーチとして日本でマネジメントコンサルティングに従事したのち、渡米。公共政策大学院、シンクタンクでのインターンなどを経て、現在は日本・アメリカで高校生・若者の就職問題の研究に従事する傍ら、NPOへのアドバイザリーも行う。社会政策、教育政策、教育のグローバリゼーションを専門とする。

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