児童扶養手当の審査が防ごうとしていること、それによって阻まれる正当な受給
もちろん、児童扶養手当の厳重な条件・審査が、不正受給に対して練られた対策であることは理解できますが、だからといって受給資格がある者が“何故か”嘘をつかなくてはいけないとか、申請の過程で心的ダメージを受けなくてはいけないなんて、オカシイですよね。ましてや、私は姉や姉のパートナーとそれなりの信頼関係やコミュニケーションがある中での今回の事例ですが、例えば、同じような構成で生活を送ったことがある人が<同性の姉妹(または兄弟)のパートナーである異性>から暴力を振るわれるなどして、それから逃げるように別居した場合でも、児童扶養手当の受給を改めて申請しようと思うと、私と同じ書類を書かされるわけです。<暴力を振るってきた人間、しかも他人>と“事実上の婚姻関係にあった”と。ただ、“異性”であるというだけで。
もうひとつおかしなところがあります。【私+私の子供+姉+姉のパートナー男性+姉とパートナー男性との子供】の5人がひとつ屋根の下に暮らしていて、姉と姉のパートナー男性は、<事実上の婚姻関係>カップルです。が、一方で、私と姉のパートナー男性もまた、婚姻関係どころか恋愛関係も一切なく金銭的な援助もないのに、<事実上の婚姻関係>カップルとしてみなされる。これでは、姉のパートナー男性が事実上<重婚>をしていたことになるんですね。これはなんというか、区政の穴というか、重婚を禁じている国の制度の矛盾ですから、私にはとても滑稽に見えます。
こういった諸々の心的ダメージを考えると、嘘の一つもつきたくなるよ……以前の住居形態・家族構成を隠す方が楽だよ……と思いますね、そりゃぁ。こういう心理こそ、不正受給に繋がっていく可能性、大いにありますよね。そんなの、ただの悪循環じゃないですか。何を防ぐための対策なのか……なんてことを悶々と考えさせられます。
また例え話になってしまい恐縮ですが、離婚して子供と二人暮らしをする女性(父子家庭ももちろんありますが、私の状況からも考え得るようにここでは“女性”の立場を中心に据えて考えます)に、新しい彼氏が出来たとします。女性は児童扶養手当の所得制限にかからない程度に年収が低く、子を育てるにあたって手当を受給していましたが、彼氏が週に3日ほど(や、それ以上など、頻繁に)女性の自宅を訪れ、女性と子供と過ごす時間をつくるようになったとしましょう。そうすると、今の児童扶養手当の規定では、女性は「不正受給をしている」とみなされて、児童扶養手当を打ち切られてしまう可能性があります。この男性と女性は恋人同士であって、男性が女性に生活費を渡すことなどなかったとしてもです。行政からしたら、恋人である男性が女性の家に来る=生活費を貢いでいる、ということなのでしょうか。あるいは、この男女がさっさと結婚して家計を同じくすれば良いということなのでしょうか。
これでは、手当を受給する、所得の低いひとり親は、恋愛をするなと言われているようなものです。それどころか、異性を含むルームシェアもできない、血縁のない親類との同居もできない。ひとり親を救う手立てであるはずの「児童扶養手当」は、ひとり親を孤立させるための制度と化しています。私には、「月々4万円(満額受給の場合)欲しくば、一人ぼっちで食いしばってシンドイ子育てをしないと許さない」とでも言われているかのように思えます。