カルチャー

「女は子供を産みたいはず、でしょ?」女の性と生殖を考える。中村うさぎ×牧村朝子×柴田英里/messyプレゼンツ@新宿眼科画廊

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左から、牧村朝子さん、中村うさぎさん、柴田英里さん

 現代美術彫刻家でコラムニストの柴田英里さんからこの企画がmessy編集部に持ち込まれたのは昨年10月のことだった。その時点で何をトークテーマにするかは柴田さんの中ではっきり固まっていて、タイトルは「女は子供を産まなければ一人前として扱われないのか。自分だけの部屋、女・仕事・死」。ゲストにフランスで同性婚をしたタレント・文筆家の牧村朝子さん、ゲイの夫を持ち「産まなかった女」であり「死にかけた女」でもある中村うさぎさんの2名を招きたい、という点もそのときから決まっていた。

 そして年が明けて1月。山口智子さんのロングインタビューを掲載した「FRaU」(講談社)が発売されて、一気に「子を産む人生だけが是か」の議論が噴き上がった。実にタイムリー。2月下旬、そのままのトークテーマで、めでたく希望通りのゲストに参加いただき、満員御礼となった新宿眼科画廊イベントスペースでの模様をレポートする。

「女は子供を産まなければ一人前として扱われないのか。自分だけの部屋、女・仕事・死」

 まずは登壇者3名の立ち位置を明らかにしておきたい。3人とも、「子供を産んでいない」女性であること。柴田さんは連載の打ち合わせで筆者の自宅に来てくれたことがあり、そのときに娘(保育園通いの幼児)に非常に良くしてくれた。彼女の私物であるプリパラのカードをたくさん持って来て見せてくれて、娘は「英里ちゃんスゴイ!」と尊敬の眼差しを向けていた。お土産に、といって、子供用の可愛らしいヘアゴムとアクセサリーまでくれた。そんな柴田さんは、だからといって「子供好きか」と言われればそういうわけでもなく、「産みたくないと自認している女性」だ。

 牧村さんは、フランス人女性のモリガさんとフランスの法律に則って同性婚をしている女性だ。第19回文化庁メディア芸術祭、アート部門優秀賞受賞作のひとつであるアーティスト・長谷川愛さんの作品「(不)可能な子供、01:朝子とモリガの場合」に、遺伝情報をカップルで提供している。これは実在する同性カップルの一部の遺伝情報からランダム生成した子供の遺伝データをもとに「家族写真」を制作した作品である。28歳で、「今は産んでいない女性」である。

 そして、三度死にかけ、一度は心肺停止・二度は呼吸停止という「死から生還した」、文筆家の中村うさぎさん。ホストクラブ通いや買い物依存症に美容整形、デリヘル体験などをエッセイにしたためてきた。若い頃に結婚歴があるが、子供はもうけずに離婚。「産まなかった女性」だ。閉経を記念してHKB48(閉経Bフォーティエイト)を勝手に結成したりもしていた。

 冒頭、柴田さんは、議論を巻き起こした「FRaU」での山口智子さんの発言を読み上げた。

「子どもを産んで育てる人生ではない、別の人生を望んでいました。今でも、一片の後悔もないです」

柴田「これは、山口智子さんが子供を持つ女性を批判しているわけではなく、自分の人生を肯定する言葉ですよね。これが炎上した。どのような批判の言葉があったか列挙すると、『負け惜しみだ』『本当は欲しかったくせにできなかったんじゃないのか』『不妊でもないのに産まないなんて』『社会の存続のために産むべき』『産まないのはワガママ』など。簡単に分けると、『(1)女の体で生まれたからには、産む喜びを味わいたいはず』『(2)社会保障制度のために産むべき』『(3)出産と育児の不自由を回避して自由を謳歌するのはずるい』という」

うさぎ「確かにわがままですよね。わがままですけど、わがままじゃいけないのか?」

柴田「世間的には、わがままってダメなことらしいですね」

うさぎ「私は今月末で58歳なんですけど、閉経して10年経ちました。産みたいと思わないまま。あんまり私は、親からも産め梅って言われてないし、プレッシャーとかも感じないで来られましたね。私は子供嫌いなんですよ。よそん家の子供も嫌いだし自分の子供もたぶん嫌いだろうなと。(出産で)すごい痛い思いとかするのもイヤだし」

柴田「でも、不思議と今、そういうことを言えないですよね。発言しづらい世の中ですよ」

うさぎ「えっ、そうなんですか? すごい普通に言ってたけど(笑)。牧村さんはご両親から干渉されない?」

牧村「産めとは言われないですね。フランス人の女性とフランスの法律で結婚しているんですけど、それ以前は『孫の顔が見たいなあ』と言われることはありました」

うさぎ「じゃあカミングアウトと同時にプレッシャーが消えた?」

牧村「同時に、ってわけにはいかなくて、わかってもらうまでに時間はかかりましたが、今は大丈夫ですね」

うさぎ「うちも今の夫がゲイなので、作れって言われてもどうやるんだっていうね(笑)」

牧村「私、うさぎさんの入籍の話大好きなんです。ここで聞かせていただいてもいいですか?」

うさぎ「入管(入国管理審査)の話ですか?」

牧村「そうですそうです、結婚の話で入管ってどういうことだって感じだと思うんですけど(笑)。超かっこいいんですよ」

うさぎ「かっこよくはないけど、うちの夫が香港人のゲイで。新宿二丁目で知り合ってめちゃくちゃ仲良しになったんですよ。彼が留学生だったのでスチューデントビザで訪日していて、卒業とともにビザが切れちゃうんですね。でもまだ日本にいたい、香港に帰りたくないというので、じゃあ入管に一緒に行って、ワーキングビザを取る方法を教わろうと。そうしたら入管のおやじがすんごいイヤな奴だったんですよ。『周富徳みたいに料理の達人とか、日本のためになる外国人ならいいけど、何の技量も才能もない普通の外人にポンポンとワーキングビザなんてあげられないねえ』って言い方をされたんですよ。じゃあどうすればいいんですかってきいたら、『日本人の女と結婚すればいいんじゃなーい』って。もうカチンときて、売り言葉に買い言葉で『ああ結婚すればいいんですね!』と。まあ入管を出てすぐに、しまったこれ私が勝手に決めることじゃない、彼の人生なんだわと我に返りましたが(笑)。私はバツイチでもう結婚しないと思うしどっちでもいいけど、どうする? と彼にきいたら、『自分もゲイだしノンケの女性を騙して結婚するのなんて出来ないから、それなら全部わかってくれてるあなたとするのがいいと思うから』と言うので、じゃあそうするかあ、と。この話で合ってる?」

牧村「その話です。それが好きなんですよ~」

 こんなふうに、うさぎさんの入籍を振り返るところからイベントは幕を開けた。

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