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「介護の予算を削ってでも、子育てに金を注げ」はなぜ暴論か 介護もまた「女性の問題」である理由

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Photo by Parker Knight from Flickr

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前回までは勤労・子育て現役世代の女性についてお話をしてきました。若年世代や現役勤労世代に対するアピールは票にもならないので政治家がなかなか育児や就労の問題に本腰を入れず、有権者の多くを占める高齢者の意見ばかり政治に反映されている「シルバーデモクラシー」になっている、などとも言われています。

40代以下の利用者が多いネットメディアでは、高齢者に対する財源や保障を削って、育児・教育に財源を回すべきだという意見がよく見られます。しかし、高齢者の世帯によほどの金銭的余裕がない限り、病気や要介護に陥った場合、金銭的にも物理的にも、公的援助や家族の援助を受けずに自立して生活していくことは困難になります。つまり高齢者への補助金や支援をカットしてしまうと、その負担は同居であれ別居であれ、子世代が間接的、直接的に負担することになるか、生活保護など他の公的援助を頼ることになるので、結果的に財政負担は変わらない、あるいはむしろ増大する可能性があるため、何の根本的解決にもなりません。

2015年を境に戦後のベビーブーム世代が全て65歳以上に達し、日本社会の人口構造は大きな転換を迎えました。子育てや教育の問題はボディブローのように日本社会を少しずつ痛めつけていくのに対し、高齢者介護問題は、ダイレクトに親世代、子世代、孫世代に影響を与えます。現実的に少子高齢化の進む日本で最も緊急度が高く「今そこにある危機」なのは高齢者介護問題なのです。

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古谷有希子

ジョージメイソン大学社会学研究科 博士課程。東京大学社会科学研究所 客員研究員。大学院修了後、ビジネスコーチとして日本でマネジメントコンサルティングに従事したのち、渡米。公共政策大学院、シンクタンクでのインターンなどを経て、現在は日本・アメリカで高校生・若者の就職問題の研究に従事する傍ら、NPOへのアドバイザリーも行う。社会政策、教育政策、教育のグローバリゼーションを専門とする。

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