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フェミニズムは男への復讐が最終目的ではないと教えてくれる映画『駆込み女と駆出し男』

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(C)2015「駆込み女と駆出し男」製作委員会

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大泉洋と戸田恵梨香主演の『駆込み女と駆出し男』。公開時に見たときは、フェミニズムを感じさせるラブ・ストーリーだと思っていました。ところが、今回見直して見たら、印象ががらっと変わりました。

開始直後に流れる、縄で縛られてどこかへ連れて行かれる大勢の女義太夫たちのカット。彼女たちは路上で芸を披露して風紀を乱したとして、さらし首にされることになっていたのでした。女義太夫たちは、この物語に直接的な関係を持つ人たちではありません。それでも冒頭にこのカットを入れてくるということは、江戸時代、そしてこの映画を見る現代の女性たちには、理不尽に縛られている部分があるいうのを示唆するものだと考えていいでしょう。

この映画の舞台は1841年の江戸時代です。当時は、男性から離縁をつきつけることができても、女性からは離縁を申し出ることができませんでした。そこで、離縁をしたい女性たちは、幕府公認の「駆け込み寺」であった鎌倉の東慶寺に向かいました。東慶寺への駆け込みに成功すると、女性たちは御用宿である柏屋で聞き取り調査を受けます。そこで離縁するに値する事情があると判断されれば、夫と離婚の交渉が始まり、それでもまとまらない場合は、東慶寺で二年間を過ごし、離婚を成立させるのでした。

鉄屋の女将のじょご(戸田恵梨香)は、夫の代わりに鍛冶場を取り仕切る働き者で、日々、炉の火を管理しているため顔に火ぶくれの跡がありました。ある日、夫の浮気や放蕩に耐えられなくなったじょごは、「お暇が欲しい」と切り出します。働くじょごのことを、「男を顎で使うのがうれしくてたまらねーんだこの火ぶくれは」となじる夫でしたが、同時に「はま鉄屋にはお前の技術が必要」と引き止めます。それでも、じょごの決意は固まっていました。

じょごは決して男を顎で使うタイプの女性ではありません。むしろ腕の良い職人として、鍛冶場の男性たちにも信頼されていました。じょごが働かないと自分は食べられないくせに、女が働くことを女だてらにと非難する夫の様子からも、夫の性質がにじんでいます。酷い仕打ちを受け、駆け込み寺に向かうか悩んでいたじょごが、ご先祖様の霊前で語る「ええ鉄は見分けがつく、でも男は見分けはつかねえ」という言葉が染みます。

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西森路代

ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクショ ン、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、 TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

twitter:@mijiyooon

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