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男性による「男性嫌悪」が潜んでいることに、男自身は気付いていない? ジェンダーギャップの解消を阻害するミサンドリー

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柴田英里

(C)柴田英里

 日本において、「ジェンダーギャップ指数世界101位」、「セクハラやパワハラの被害者は圧倒的に女性が多い」という現状は、フェミニズムやジェンダースタディーズの不足と必要性を切実に示すものであり、「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」というネーミングセンスを正気かつ無邪気に発揮できている程度には、日本における女性の地位は男性に比べて相対的に低いように思います。

 ジェンダーギャップ指数世界101位の中でもとりわけ大きな問題である「女性の貧困」の背景には、「男性は女性よりも相対的に年収が高い」という悲しい現実と、「男は仕事、女は子育て」という性別役割分担に基づく価値観があります。

 「女性も男性と同様のキャリア形成ができなければならない」ということは当然ですが、それを実現するためには、「家事育児(無償労働)は女の仕事」という女性を抑圧する固定観念を解消するだけでなく、「産休や育休を男性は使うべきでない」「仕事ができない男は格好悪い」「男らしくない男は気持ち悪い」「専業主夫なんてヒモと同じ」など、男性を抑圧する保守的な固定観念を解消していく必要もあります。「女性は生きづらい」=「男性は生きづらくない」という公式は成立しないからです。男性にも用意された規範があり、それを一部でも壊さずに維持させたままでは、ジェンダーギャップは解消されません。

 前者と後者をともに担うことがフェミニズムやジェンダースタディーズの役割ですが、女性に関する事柄が中心的なフェミニズムに比べて、後者を中心に思考していくメンズスタディーズは、「男性=マジョリティ」という認識が強いゆえか、日本において発展が乏しいことは否めません。

 メンズスタディーズが発展途上であることはすなわち、「男性の方が生き方の選択肢が少ない」こと、旧来の家父長的理想の男性像がそのまま機能していることに他なりません。

 「結婚しても子供が産まれても仕事をしたい」という女性の意見は、「家事育児(無償労働)は女の仕事」という価値観が実際には「家事育児(無償労働)とパートタイムなどの家計の補佐的な労働(低賃金・非正規雇用)は女の仕事」として運用されているので、「結婚したら/子供が産まれたら仕事をやめて育児に専念したい」という男性の意見よりは好意的に受け取られるでしょう。

 婚活市場では未だに、「高収入男性と若い女性」の組み合わせがスタンダードです。男に求められるのは年収、女は若さと美しさと家庭的な趣味なのです。

 メンズスタディーズが発展途上であることの背景には、「男性=マジョリティ」という認識が強いことだけでなく、ミサンドリー(男性嫌悪・男性の自己嫌悪)もあるでしょう。

 ミサンドリーがメンズスタディーズの発展の障害になるのは、複雑な前提があります。旧来の家父長的理想の男性像を地でいくような保守的でマッチョな男性<Aタイプ>は「男がつらいのは当たり前マインド」「男同士の絆で昇進できる」というムチとアメ(マゾヒズムとホモソーシャル)の構造によって、内面化した規範に鈍感になっています。他方、そうした鈍感さに耐えられない、「旧来の家父長的理想の男性像」につらさを覚えるような男性<Bタイプ>は、既存の「男性性」そのものを憎みがちになり、結果自己嫌悪を併発し、「男性で生きづらいですが女性の皆さんに比べたら全然マシなので文句は言いません」「被害者か加害者で言ったら加害者ですごめんなさい」という視点に陥ってしまいます。

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柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」

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