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演歌大好き国会議員が、演歌に税金を投じようとしています

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武田砂鉄

武田砂鉄/論男時評(月刊更新)

 本サイトを読まれる方が日頃手にすることがないであろうオヤジ雑誌群が、いかに「男のプライド」を増長し続けているかを、その時々の記事から引っ張り出して定点観測していく本連載。

街の方々で、新入社員と思しき初々しいスーツ姿が目に入る季節になった。入社してしばらくは大した仕事を与えられないが、その分、「社会のルールを教えてやるから勉強しろよ」コンテンツが、諸先輩から嵐のように襲いかかる。社員研修が終わった日に、部長にスナックへ連れて行かれ、「オレたち世代にも分かる古い曲を」と言われて鳥羽一郎『兄弟船』を熱唱、泥酔していた部長に「それは俺の曲だ!」と凄まれ深々と陳謝したエピソードを教えてくれた友人は、数年でその会社を辞めてしまった。

 さて。日頃、様々な立場で議論を重ねている国会議員が、こればっかりは一緒に盛り上げていきましょうよと、党を越えて一致団結し、ある議連を立ち上げた。その名は「演歌・歌謡曲を応援する国会議員の会」。低迷する演歌・歌謡曲を盛り上げるべく、「地方のカラオケ大会などに歌手を招いて演歌や歌謡曲に直接触れる機会を設けて愛好者の裾野を広げるなど、振興策を検討する」(産経ニュース・3月2日)という。第1回の会合で挨拶した今村雅弘元農林水産副大臣は「日本の国民的な文化である演歌、歌謡曲をしっかり応援しよう」(同前)と意気込んだ。会長は二階俊博総務会長、安倍首相が常に顔色をうかがう自民党の重鎮である。

 会に参加した自民党・保岡興治衆議院議員は、ブログに「議連ではこれから演歌歌手の方、音楽業界の方などからお話をよくよく聞かせていただき、演歌・歌謡曲業界のために、政治として出来ることを整理しきたい(原文ママ)」と書いた。政治で何とかします、と宣言している以上、そのうち税金が投入される可能性もある。

 超党派ということもあり、普段は共に活動することなどない日本共産党の面々も会合に出席している(穀田恵二国対委員長など3名が出席)。演歌のためなら活動を共にできる、とのことなのだろう。設立総会には歌手の山本譲二が参加し、民放で演歌を放送する番組が週に4本しかない現状をあげ、「歌い手はそんな状況のなかで歌い、命をかけてCDを売っている。しかし、それだけの番組で浸透するのか懸念がある。演歌に力を貸していただきたい」(しんぶん赤旗・3月24日)と要請した。「俺たちはこうやって“国民的な文化”を体現しているんだから、政治家の先生たち、助けてくれよ」、が機能してはいけない。言うまでもないが、命をかけて音楽を作っているのは、演歌だけではない。議員のオジ様たちが「やっぱり演歌だよね~」と結託する様を放任する気にはなれない。

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武田砂鉄

ライター。1982年生まれ。東京都出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、2014年秋よりフリー。著書に『紋切型社会──言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社、2015年、第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞)、『芸能人寛容論──テレビの中のわだかまり』がある。2016年、第9回(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞を受賞。「文學界」「Quick Japan」「SPA!」「VERY」「SPUR」「暮しの手帖」などで連載を持ち、インタヴュー・書籍構成なども手がける。

@takedasatetsu

http://www.t-satetsu.com/

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