賃貸物件の場合、多くは入居時に敷金を大家に預けている。東京では、退去時のハウスクリーニングは入居者の負担、という契約が入居時になされていることがほとんどである。退去時は、敷金からハウスクリーニング費用を引いて余ったお金があれば戻って来る仕組みだ。しかし敷金が戻ってくることは稀だと言われている。退去時の現況確認の際に、「ここに傷が」「ここにとれない汚れが」等と指摘され、追加料金を徴収されて結局は一円も敷金が戻ってこない、という場合も多いようだ。賃貸物件の退去時のトラブルはまさに数えきれないほどあるようだが、泣き寝入りはいけない。そのような際に相談できる窓口はいくつもあるのだ。満壽子さんのケースは弁護士に相談することが出来たようだが、弁護士相談のハードルが高いという人は、東京都都市整備局・住宅政策推進部不動産業課の賃貸ホットラインや、東京都不動産取引特別相談室など、所定の相談窓口の情報に当たってみてほしい。検索すれば電話番号もすぐにわかる。もし賃貸物件の退去時にトラブルが生じたなら、まずはこのような機関に電話して相談してみると良いだろう。
さて、話を澤家に戻すが、満壽子さんに対する大家の怒りは収まらず、「あんな人が教育の本を出版するなんてどうかと思う」と同誌に愚痴を垂れ流し、現在訴訟も検討しているという。しかし、改築など契約違反があったならいざ知らず、床や柱のキズなど20年以上も住んでいれば経年劣化があって当然。最低限の掃除は前の入居者がしていくべきだが、大量のゴミがそこに残されていたわけでもない。エアコン洗浄に壁紙や天井のクロス貼替えなどは、再びその部屋を新しい誰かに「貸したい」大家側が負担すべき費用であり、以前の入居者に「修繕費用をよこせ!」とゴネるのはいかがなものか。しかもこの大家、入居者がたまたま有名人だったのをいいことに、その生活ぶりをぺらぺらと喋り“ゴミ屋敷よばわり”までしている点から、逆に名誉毀損にあたる可能性すら考えられる。「家賃を何カ月も待ったこともあるのに、こんな仕打ちなんてあんまり」という台詞から、大家としては「(澤の収入や本の印税などで)お金があるんだから、払ってくれてもいいじゃないか」という考えなのかもしれない。しかしお金があろうとなかろうと、払う義務がないものはないのだ。
(エリザベス松本)