インタビュー

会社に支配され雑に扱われる男たち、怒ったり逃げたりしていいんじゃないか?/男性学・田中俊之さん

【この記事のキーワード】
田中俊之

『男が働かない、いいじゃないか!』田中俊之先生

 武蔵大学で男性学・キャリア教育論を専門に教鞭をとる田中俊之先生の新刊『男が働かない、いいじゃないか!』(講談社)は、主に20代の若者男性に向けて、「働きすぎる必要はない、君の人生なんだ」とエールを送る内容です。田中先生には以前、桃山商事の連載にもご登場していただきました。

■“理想の男らしさ”が重い。現代を生きる男性の抱える「生きづらさ」とは?

■男に「言葉を届ける」のはなぜこんなにも難しいのか? 男性問題を問い直せない社会構造と、男型の“演繹”発想

 女性の「家庭と仕事の両立」について考える記事を多く出してきたmessyですが、いつも突き当たるのは、長時間労働が当然視されているという社会問題。「たくさん働くことと、家庭で保育すること」の両方を求められれば、誰だって両立など不可能だということです。家庭で専業主婦の妻が家事育児をしている立場の男性が、残業や出張、接待などを厭わず朝から晩まで働く――その働き方が<フツウ>とされてしまえば、家庭と仕事は両立できません。男女どちらも、もっとゆるく働くことを<フツウ>にしたい。

 そのために、何がどう変わっていけばよいのか? 「一日5時間以上は働かない」「平日の昼間にぶらぶらしたい」とはっきり言う男である田中先生と、具体策を考えました。

世のルールでは「仕事に支障を来たさない範囲でしか育児をやれない」

――お子さんが誕生されたばかりなんですよね。おめでとうございます。

田中俊之先生(以下、田中)「ありがとうございます。息子は二カ月で、まだ夜中に三回は起きるんですねそのたびに授乳とオムツ替えをしています」

――夫婦どちらも一緒に起きるんですか?

田中「夜中の授乳は母乳→ミルク→母乳にし、奥さんは一回は起きないで寝ていてもらうようにしています。そうすればちょっとは休めるじゃないですか」

――田中先生は熟睡していても赤ちゃんの泣き声に気付いて体を起こします?

田中「はい、一緒の部屋で三人寝ているので、泣けば気付いて目が覚めますよね。あ、母乳のときも飲み終わった後のゲップは僕がさせるようにしています」

――え、じゃあ田中先生は夜中の授乳三回とも起きて。

田中「はい、そうですね」

――昼間に眠くなりませんか。

田中「なりますよ、はい(笑)。一月に産まれて、ここ二カ月は仕事のペースは以前の半分くらいになってますね。書き物とか、もともと僕は遅筆ですがますます遅くなっています」

――学問をきわめてらっしゃるわけで、大学のない日も論文や研究書などを書かれるわけですよね。基本的に自宅ではそういう書き物に集中する。

田中「でも同じ家の中で子供が泣いてれば無視するわけにいかないですよね(笑)。赤ちゃんって寝てる時間が長いから出来なくはないですよ」

――赤ちゃんの泣き声が気にならず、泣いてても平気でスマホを見ちゃう人もいます。夜はぐっすり寝ていて、ママだけが何度も起きて赤ちゃんの世話をしているという家庭も未だに多いです。

田中「それはこの本にも書きましたが、男の人って世の男性のルールに従うと、『仕事に支障を来たさない範囲でしか育児をやれない』んですよね。就寝中に赤ちゃんが泣いていても、翌日の仕事に支障を来たさないように眠り続けるとか。それが優先事項になるので、多くの人はそういう行動をとるんですよね」

――仕事のパフォーマンスを落とさないことが最優先事項だし善なんですね。一方で、妻であり新米ママという立場から見ると、そうした夫の態度がひどく冷淡に思えることもあるでしょう。

田中「そりゃあそうでしょうね。僕はちょうど大学の春休みの時期に出産があって、比較的、自宅にいることができたんですね。子供は正直、オムツ替えてミルクあげて寝かせてあげればすくすく育ちますけど、産褥期の女性ってメンタルも肉体も弱っているじゃないですか。とても通常通りの家事なんて出来ないよと思いました。世の、男性がその時期に育休をとらなかったご家庭はどうやってるのかな? と不思議な気持ちです」

――実家や実親にケアしてもらったりとか、ヘルパーさんをお願いしたりとか、あるいは産褥期でもツラいのを我慢して気合いと根性で乗り切ったりとか?

田中「そうですよね。すごい女性の我慢のうえに、社会が成り立っているんじゃないかと思ったんです。でも誰も見てないから、実態はわからないじゃないですか。耐えてるんだろうけど、表に出ませんよね。その時期に、夫であり子の父親である男性が、仕事を休んで彼女と赤ちゃんのケアをできれば、女性はそこまでつらい思いをしなくて済むんじゃないかと……。女性の忍耐のうえに、男性たちが休みもとらずに働き続けて生産する労働社会が成り立っているんじゃないか、と気付きましたね。

また、里帰り出産だったりすると、実親にケアしてもらえるから産後の女性の肉体的負担は軽くなるでしょうけど、ますます夫にはその時期の妻がどれだけ大変だったかなんてわからないじゃないですか。見えないから」

――むしろ「こっちは一人侘しくレトルト飯なのに、実家でゴロゴロして上げ膳据え膳でいいよな~」とか思ってる人も。

田中「ああ……。だから僕、育児書を読んでびっくりしたんですけど、産後の時期に『パパの分のご飯は、作って冷凍しておきましょう♪』とか書いてあるんですよね。赤ちゃんの生活リズムと大人の生活リズムって違うから、主に世話する人、この場合はママですが、ママは赤ちゃんのリズムに合わせることになる。するとパパのご飯をタイミングよく作ることが出来ないから、『事前に作って冷凍しておきましょう』って。えーって思いました。産褥期に!? って。パパが自分で作って食べる選択肢は想定されてないのかなと」

――ママは家にずっといるんだから食事の支度は当然ママがやるよね、みたいな。

1 2 3 4 5

[PR]
[PR]

messy新着記事一覧へ

男が働かない、いいじゃないか! (講談社+α新書) ゆるキャラのすすめ。