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「KABA.ちゃん、性別適合手術で女性になれてよかったね」という報道に社会的意義はあるのか

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株式会社プラチナムプロダクション公式HPより

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タレントのKABA.ちゃんがタイのバンコクで、性別適合手術(性器の形状を変えるなどのいわゆる性転換手術、以下SRS:Sex Reassignment Surgeryと略して記す)を受けたとの報があった。彼女は以前から整形手術などを行い、生来の男性の身体の女性化を進め、また戸籍変更も目指していた。4月10日放送の『ノンストップ!』(フジテレビ系)で、SRS前後のKABA.ちゃんに密着した15分ほどの取材動画が流れていたので、今回取り上げたい。

筆者も彼女と同じく、男性として生まれて女性化したMtF(Male to Female:男性から女性化する)トランスジェンダーだ。2012年にバンコクでSRSを受け、その後は毎年、同様にバンコクへ渡航するMtFに同行し、取材を重ねている。動画を見てみると、ネットでも散見される「女性になれて良かったね」という楽観的なムードに酔っていては見えない、MtFにありがちな困難な現実が漂っているように思われた。

誰がスカートを履くことの違和感を生んでいるのか

KABA.ちゃんはSRS前の取材で「もう次からスカート履けるし」「今住んでるマンションから(スカート姿で)出るときもすっごい気になりますもん」と発言していた。手術をし、戸籍の性別を変えることで(戸籍と身体が男性である)自分がスカートを履くことの違和感を解消できるのではないか、と示唆する発言を続けて吐露している。しかしこの違和感は、彼女自身に問題があるのではなく、彼女を「女装」と揶揄したり「オカマ」と嘲笑する周囲からの視線によって生み出されているのではないだろうか。

KABA.ちゃんは、規範的な性別の在り方を越境するゲイ、ニューハーフ(本稿では、水商売、風俗に従事するMtFトランスジェンダーを指す)、女装家といった人々を乱暴にひとくくりにする「オカマ」「オネエ」という芸能人カテゴリーを売りにしてきた時期が長い。女性化する過程で見知らぬ人から「KABA.ちゃんが女装してた」と笑いの的にされる経験を苦く噛み締めてきたのではないだろうか。

MtFは、男性的なしっかりとした骨格を持つ場合が多く、その生来の顔かたちのまま化粧や女性装をすると、傍目にはトランスジェンダーだとわかってしまう。MtFの当事者から、日常生活ですれ違った他人から「なんだ男か」と吐き捨てられたり、背の高さや声の低さを指摘されることに怯える声を何度も聞いたことがある。こういった周囲からの認識がネガティブに働くと、コミュニケーションに不全が生じ、KABA.ちゃんのように自身がスカートを履くことに違和感を覚えるようになるのではないだろうか。

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