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上から目線で男に評価を下す「女子会トーク」こそがイタい

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犬山紙子

(『高学歴男はなぜモテないのか』扶桑社)

 東大・京大・一橋といった著名な国立大、あるいは早慶上智といった難関私立大を卒業した人たちを、日本人のほとんどが「高学歴」と認めると思います。しかし、卒業したのが、東大・京大以外の旧帝大、私大の場合いわゆる「MARCH」や「関関同立」なら、高学歴と認める人の割合は少し下がるかもしれません。もちろん、大卒者の割合が少ない職場であれば、大学をでただけで「高学歴」ということになりますが、「日東駒専」、「大東亜帝国」といった(箱根駅伝では有名だが、難関私大とは呼ばれない大学を多く含む)レベルから「高いってほどでもない学歴」になってきます。

 「どこの大学をでたか?」という話は差別やハラスメントの原因にもなるため、最近はどこの企業でもあまり話題にのぼらない傾向にあるようです。私自身、偏差値が高い大学を卒業した新人が、過度の期待をされすぎて潰れてしまう、というケースを過去に目撃したことがありますが、上司にしてみれば「東大卒の新人」に対して、変な期待を持つな、というほうが無理な話なのかもしれません。一流大学の強烈なブランドは、根強いものがあるのです。

 かく言う私も、学歴が高すぎてプレッシャーを受けるほどではないものの、某私大を卒業しており、犬山紙子さんが書かれた『高学歴男はなぜモテないのか』(扶桑社)という新書のタイトルには興味を惹かれました。筆者は「美人なのになぜか恋愛が上手くいかない女性たちのエピソード」を集めたエッセイ『負け美女』(マガジンハウス)などの著作で知られ、最近ではテレビにもレギュラー出演されている女性エッセイスト。本書は「高学歴男」、「高収入男」、「高プライド男」、「痛男(※ 下心ゆえに不自然になってしまい、それがバレている恥ずかしい男性)」の振る舞いを紹介し、「こうすれば良いのに!」というアドバイスを添えた内容となっています。

 例えば「高学歴男」の痛いエピソードの最初には「屁理屈で女を論破する男」があげられています。

一般的に、男性は女性よりも理屈っぽい傾向にあります。その中でも喧嘩中や会議中などに屁理屈でネチネチ攻める男は、アリナシ以前に「生理的に無理」という評価を下されるんですね。(中略)でもって、屁理屈言ってる間にヘンなアドレナリンが出るのか、自分に酔っちゃうんですよね。「頭のいい俺かっこいー」みたいな。

 たしかにこれはイタい。その他にも本書には、高学歴男性は勉強ばっかりしていたので学生時代にモテておらず、そうした抑圧があって社会人デビューをしてしまうと、メンヘラ女にひっかかったり、性欲がないことをアピールするのがカッコ良いと思ったりして、イタい……など、おかしなエピソードが満載です。

 ただ、本書で紹介されているようなイタい男性は私自身の周囲にいなかったため、本書のエピソードに「あるある!」とはならず、アドバイスもオール素通り……。率直な感想を書かせていただくなら、あまりに無内容な本だったので、読んだ後、自然としばらく無表情になってしまうほどの虚無に襲われました。

男女反転させれば矛盾がわかる

 本書ではエピソードを「高学歴」、「高収入」、「高プライド」というカテゴリーに振り分けていますが、そのエピソードとカテゴリーとの論理的な結びつきが見えません。高学歴じゃなくても屁理屈まくしたてる男はいますし、高収入じゃなくても自慢話ばかりしている男もいます。要するに、ただ性格が悪くてモテない男を紹介しているだけです。そのため、仮に高学歴のモテない男性が本書を読んでも「高学歴だからモテない」という話が見当たらず、肩すかしに終わってしまうのでは……と思いました。そもそも「高学歴の人は屁理屈言いそう」って、イメージ論に過ぎないので失礼では……。

 また本書には「高学歴男のここがイヤだ!!」という座談会の内容も掲載されているのですが、これが最高に醜悪です。ここでは「○○な男ってイヤだよねー!」「ヤダー!!」と女性たちが居酒屋に集まって個室居酒屋でも壁を通り抜けて聞こえるような話が読めますが、私はこれを読んで「『○○な男ってイヤだよねー!』とか話している女ってイヤだな……」と思ってしまいました。上から目線の男性はモテない、といったことは本書にも書かれておりますが、この女子会的トークも男に対して上から目線じゃないか。

 「こんなイヤな男が職場にいて困っている……」という悩み事ならまだ読めたかもしれません。ただ、彼女たちは「合コンに行ったらイタい男がいてさー!」みたいな話をしているわけです。っつーか、なんでこの人たちは女代表みたいに喋ってるんでしょうね?

 特に「痛男」について書かれた部分では顕著ですが、本書は、男性の女性に対する振る舞いの行動原理をすべて「女性から評価を得るため」として扱っているように思えます。女性が何か行動したときに男側から「それ男にモテたくてやってんでしょ?」とニヤニヤ顔で言われたら、どうでしょう? 「ちげーし!! 好きでやってるだけだし!!」と全力で否定する女性は少なくないはずです。著名な映画評論家の方が「サブカルのマニアックな趣味を持ってる女は、大体男の影響」とかなんとか発言して、サブカル女性たちから「ちげーし!!」「女をバカにしてる!」と総スカンを食らったことも記憶に新しいものです。

 つまり、「他人からの評価」を気にしての戦略的行動ではなく、自分が気持ち良いからやっているだけ、という人は男女ともに当然いるわけです。あるいは、当初は「○○キャラ」を他人のために演じていたハズが、キャラを演じていた方が自分は楽だし、気持ち良い! と途中で、演じる理由がすり替わってしまうこともあるでしょう。いずれにしても、男性が女ウケを狙ってやっている行動ではないのに、女性から上から目線で「そんなんだからモテないんだよー!」とダメ出しをされても、響きません。なんか、そういうの不毛ですよね……。

本書で書いたのは、せっかくキュンと来てもそれを台無しにするような行動。
なんだかもったいないんですよね。

 これは「おわりに」からの引用ですが、女性が「男ウケが悪い服」を着ていても「自分が着たいから着ている(男のために服を選ぶわけじゃない)」と主張するのはアリなのに、男性は「MOTTAINAI!!」と言われてしまうのは、なんだか変ではありませんか?(こんなことを書いていると「カエターノとかいう奴は屁理屈を言うタイプだ!」と言われそうですが……)。自分が勝手に男から低評価を下されれば傷つくでしょうに、気に食わない男を上から目線で評価して「だからモテないんだよね~残念な男」とバカにしているようですと、それは高学歴男子の方からお断りでしょうね。

 ■カエターノ・武野・コインブラ /80年代生まれ。福島県出身。日本のインターネット黎明期より日記サイト・ブログを運営し、とくに有名になることなく、現職(営業系)。本業では、自社商品の販売促進や販売データ分析に従事している。

カエターノ・武野・コインブラ

80年代生まれ。福島県出身のライター。

@CaetanoTCoimbra

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