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親の経済力による教育格差 生活困窮家庭の大学進学率をあげるために必要な仕組みとは?

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Photo by Francisco Osorio from Flickr

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子育て支援で有名なNPO法人のフローレンスの駒崎代表らが、国による返済不要の給付型奨学金の創設を目指すため、同日から今月末までインターネット上での署名活動を実施するというキャンペーンがニュースになっています。奨学金返済の厳しさは貧困問題、経済格差とともに毎日のように報道されている状況を考えれば、このキャンペーンが目指す給付型奨学金の創設は急務と言えるようにも見えますが、報道によれば導入を先送りすることが判断されたようです。

今の日本学生支援機構の奨学金額は家計が厳しい学生にとって十分な金額を貸与できているとは言えません。奨学金の金額について、4分の3以上の学生が現在の支給金額で十分と考えている一方で、家計所得300万円未満の家庭出身者は、増額を望む学生が多いのです。

また、学生にとって「借金をする」ことの負担も非常に重いことも事実です。進学時に家庭の経済事情を重視せざるをえない学生ほど、日本学生支援機構の奨学金の申請見合せ(不申請)を行う際に「卒業後の返還が大変そうだったから」という理由を挙げる傾向があります。

駒崎氏の今回のキャンペーンに関するブログには「家庭の経済格差が学力格差を生んでいることが明確にわかります。こうした事態を解決するために、奨学金、特に給付型奨学金が必要です」「他の先進国を見てみると、大学は無償か非常に安価です。有償でも給付型奨学金があることで、負担が軽くなっていますが、有償なのに給付型奨学金がないのは、なんと日本のみ。天然資源に恵まれず、人が最大の日本なのにもかかわらず」と書かれています。

しかし、この議論にはかなりの飛躍があります。実際には、家庭環境などが整っているからこそ、大学進学を考えられるのであって、生活困窮家庭の場合はそもそも大学進学を考えることさえ難しいのです。給付型奨学金では、そういった家庭が大学進学を考えられるような状況を整えることはできません。大学に進学したいと思う程度の学力や家庭の文化水準、学校環境にあるからこそ、大学進学のための奨学金が必要なのです。

学力格差の解決に必要なのは大学進学のための給付型奨学金ではなく、福祉システムの改善であり、生徒に対する「進学希望」「就職希望」への導き方を含めた、幼少期から高校までの教育そのものです。

また、給付型奨学金は運用方法や支給基準によっては、かえって親の経済力による学力格差を悪化させる恐れがあります。

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古谷有希子

ジョージメイソン大学社会学研究科 博士課程。東京大学社会科学研究所 客員研究員。大学院修了後、ビジネスコーチとして日本でマネジメントコンサルティングに従事したのち、渡米。公共政策大学院、シンクタンクでのインターンなどを経て、現在は日本・アメリカで高校生・若者の就職問題の研究に従事する傍ら、NPOへのアドバイザリーも行う。社会政策、教育政策、教育のグローバリゼーションを専門とする。

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