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「愛だよ愛」で誤魔化さないで。家事育児を「愛」に回収させるのは、もう止めにしよう!!!

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Photo by Pieterjan Vandaele from Flickr

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 北海道の山林で行方不明になっていた7歳の男児が無事に保護され、安堵した。連日にわたり大規模な捜索がおこなわれたこと、両親が「しつけ」のつもりで山中に置き去りにしたと話していたこともあり、広く一般人の興味関心を惹く事件であった。特に「しつけ」の是非は議論になり、著名人が「虐待ではないか」と声を上げ、一方で「置き去りや締め出しは昔なら普通のしつけだった」とする意見も。

 この事件を受けて、ふと思い出した番組がある。子育て中の保護者が一度は立ち止まり考えるであろう「怒る」と「叱る」の違いについて取り上げた、5月17日放送の『ニッポンのぞき見太郎』(フジテレビ系)だ。同番組の調査によると、4~12歳の子を持つ母親の約8割が、子育てで「子供をよく怒ってしまう」という悩みを持つという。スタジオでは、いまや芸人ではなく“ママタレ”代表となった感のある三児の母・くわばたりえ(40)も、同じ悩みを持っていると告白。「自分の機嫌が悪いと、つい怒鳴ってしまう」と話した。

 そんなくわばたに、関根勤が「怒ってしまう理由を子供に説明したらどう?」と提案したが、くわばたは0歳11カ月、2歳7カ月、5歳の三児を抱えており、いちいち理由を説明することも難しくつい声を荒げてしまうのだという。たとえば下の子を寝かしつけてほっと一息つけると思うと、今度は上の子が甘えてきて休めずイラッとしてしまい、そのイラだちを子供への態度に表してしまう。そんな自分を、くわばたは責めている。「上の子は赤ちゃんにママの目が向くことを寂しく思い耐えているはず」で、「赤ちゃんが寝ている間ぐらい甘えたいのだろうとわかっているが、そんなに余裕を持てない」ことに自己嫌悪してしまうというわけだ。「今、抱っこして欲しいやなって。それがわかるから余計につらくなったり」というくわばた。そんな彼女を慰めるかのように、田中美佐子(一児の母)が「でも、愛は感じてるんですよ、絶対!」自身の体験談を話しはじめた。

 田中は娘が小学生のとき、娘に向かって「私、本当にダメダメだし、怒るけど、本当にゴメン!」と謝ったことがあるそうだ。すると娘は「怒ってくれていい。お母さんは、それだけ私のことをよく見てくれてるから、私のことを怒ってくれていい。お母さん怖いけど、私はお母さん大好きだから」と応じたという。この田中の談を受け、関根は「愛があれば伝わる!」、田中も「愛だよ愛」「だって、それだけよく子供のことを見てるから、怒るんでしょう?」と続けた。最終的にくわばたも「そうなんですよ」と納得したふうだったが……。

 いやいや、話が途中でおかしくなってる! 「叱る」じゃなくて「怒」ってしまうことを悩んでいるのに、「愛があるから怒るんでしょう?」って全然違う話だ。「愛があるから叱るんでしょう?」なら通じるが、子供が悪いことをしているわけではないのに、親側の都合で怒りをぶつけてしまうことに、くわばたも、8割の母親たちも悩んでいるのであって……番組側が「怒る」と「叱る」をごちゃまぜにするのはいい加減すぎるだろう。

 そして、「愛があれば大丈夫」という結論に持っていってしまうのもオカシイ。いや、危険すぎる。親が理不尽に子供を傷つけても、「本当は愛があるから」で許されてしまう、というより、子供が親を許さなきゃいけなくなってしまうからだ。「愛」を根拠にすれば何をしてもいいなんてことは断じてないし、「愛されている」からといって相手を許さなければいけないこともない。その「愛」を拒絶する権利だってあるのだ。

 番組では「愛」などというふんわりした言葉でまとめるのでなく、母親は普通の人間だからイラだちの感情を子供にぶつけてしまうことがある、良くないことだけれど現状では仕方がない、どうすれば「怒る」を抑制し、適切な場面での「叱る」のみ機能させることができるか――と、建設的な議論が出来れば良かったと思う。「愛してるから許して」も、「愛してるから許してくれるはず」も通らない。むしろ「愛」で縛り付けることになり、危険である。

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ヒポポ照子

東京で働くお母さんのひとり。大きなカバを見るのが好きです。

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