インタビュー

「出産おめでとう」と簡単には言えない/『れもん、うむもん!――そして、ママになる――』はるな檸檬さん【後編】

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前編はこちら>>>壊れそうな赤ちゃん、プレミアムな母乳信仰。初めての出産育児はヤバい精神状態だった/『れもん、うむもん!――そして、ママになる――』はるな檸檬さん

 宝塚オタクの日常を描いた人気漫画『ZUCCA×ZUCA』(講談社)の作者、はるな檸檬さんが、今年3月、自身の妊娠から出産をまとめたエッセイ漫画『れもん、うむもん!――そして、ママになる――』(新潮社)を上梓した。

「初めての妊娠・出産に戸惑い 身も心もズタボロになった 怒濤の日々のこと」がおさめられた同書に、当時のしんどさを思い出して涙したライター・ブログウォッチャー京子とmessy編集・下戸山うさこが聞き手となり、妊娠・出産と赤ちゃん育児について語り合った。

(聞き手・ブログウォッチャー京子、下戸山うさこ)

緊張・不安・責任感

京子 産んだ直後って、いきなり母性ほとばしりました??

はるな いきなりはなかったです。産後は本当に赤ちゃんの扱いが怖すぎて、助産師さんに預けてる方がすっごい安心で。抱っこしてくださいと言われても、「こんなか弱き生き物を持てないです!」みたいな。あと、他人感というか、自分の子どもという感覚もまだ特にないから、我が子に対して人見知りとかもしてました私……。「よろしくお願いします」って挨拶する感じで、母乳あげるにしても「えっ、なんでこんな初めて会った人にいきなり胸吸わせるんですか恥ずかしい」って戸惑いがあったくらいです。今は全然なんですけど、やっぱり育てていく過程の関係性で愛着がわいてくるものではないかというのが実感です。母性神話は私には当てはまらなかったです。

下戸山 私も入院中、助産師さんに見てもらうときが一番安心でした。「私が見てるんじゃないからあの子は死なない、大丈夫だ」って。数時間~数日前に産んだばっかりの母親になりたてな自分を、「お母さんだしちゃんとやれる」って信頼することはできなかったですね。

はるな 同感です。私の産んだ産院は母子同室OKだったので、産む前は同室にしてずっと一緒にいようと思ってたんです。それが子供にとっても嬉しいのだろうと。でもいざ産んでみると怖すぎて、「絶対嫌です、もう新生児室に入れといてください」。なんというか……先ほども言いましたが、生まれたての子供って生と死の境目にいるんですよね。お知り合いの方がおっしゃっていたんですけど、「産後の育児に一番役に立ったのは死にかけの子猫をみてたときの経験だった」と。それぐらい危ういものの面倒をみているわけで、少し扱いを誤っただけでも首がゴキってなりそうで恐ろしくて……。

京子 いつ頃までその気持ちは続きました?

はるな だいぶ長く続きました。私、1カ月検診のときも震えてたんで……。検診で病院まで行く時、とても緊張しませんでしたか? 自宅から歩いて行ける距離でしたが、タクシーに乗ってしまったくらい。しかも産後1カ月間は外に出る余裕も全くなかったから抱っこ紐を買ってなくて、おくるみに包んで抱いて行ったんですけど怖くて怖くて。「なんでこんなちっちゃい子を抱えて外に出なきゃいけないの」って感じで、ぶるぶる震えてました。

下戸山 私も徒歩5分なのにタクシーで検診行きました。落としたらどうしようと思った。育児本に「1カ月経ったら外気浴をさせてみましょう」とか書いてなかったですか?

はるな 全然無理全然無理! 6月に産んで1カ月後は真夏だったんで、猛暑の中、外に出すのなんて絶対によくないだろうと思って。しかもどこに菌がいるかもわからないですし……もう検診行くのしんどいからお医者さんが来てくれたらいいのに、って思ってました。

今思い出しましたが、1カ月検診の時、一人で行くのがあまりに不安でシッターさんに付き添いをお願いしたんです。ずっと横にいてもらいました。何をしてもらうってわけではないのですが、横にいてくれるだけで安心でした。病院でトイレにも行けないじゃないですか、子供を抱えていると。2~3時間だけでも一緒にいてくれたシッターさんが天使に見えました。帰りにガタガタ震えながらデパートに寄って抱っこ紐を買って、でも結局タクシーに乗りましたけどね(笑)。

京子 それ、抱っこ紐を買ったはいいけど「練習してないのに使うわけにいかない!」ってことですかね。

はるな そうそう。首が折れるかもしんない! と心配になって。

下戸山 今はもう、お子さんは2歳目前で、やんちゃに動いてますか?

はるな はい。とても健康でバリバリ元気に走り回ってます。1度こうやって新生児の世話を経験すると加減が分かりますけど、初めては本当に……怖いですよね。初心者のときのドキドキと不安と緊張みたいなものって、育児を経験した方でも忘れちゃうのかもしれません。あと経験した人って加減が分かるから「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ」など励ましてくれるのですが、緊張の最中にいる人は、いくら大丈夫って言われても怖い。そういう……経験者の方にもあまり分かってもらえないのかも、とその当時は感じましたね。同じ時期に産んで同じように緊張している人としか分かりあえないみたいな。

下戸山 自分でも封印しようとしていた産後の思い出があるんですが。当時、産んで4人部屋だったんですよ。新生児室に子供がいるときって寝てて良いじゃないですか。でもなんか眠れなくて。私、乳幼児突然死症候群が本当に怖かったんです。

はるな 分かる! 怖い!!!

下戸山 それでわざわざ、乳幼児突然死症候群で亡くなった著名人のお子さんのニュースを検索して、ipodに入れてた鬱系の曲とかイヤホンで聴いてすごい泣いたりしてて。そのとき病室で書いた日記の内容も暗すぎてひどい。

はるな だめですよ、そんな自分を追いつめるようなことをしちゃ……。でも、私も突然赤ちゃんが死んでしまうのではないかと怯えて、自宅で使うために『Babysense(ベビーセンス)』というセンサーを買って設置しました。呼吸を感知するセンサーパッドをベビーベッドに敷くと、正常に呼吸をしている間は静かなんですが子供をベッドから持ち上げたりして10秒くらい経つと、ビーーーーー!って音が鳴る。産院で使われていたのを夫が見て「これは買った方がいい」と即検索して購入しました。お高い商品なんですが、それがあるだけで気持ちがぐっとラクになりました。

「産後、実母と大喧嘩」はなぜ起こるのか

(C)Lemon Haruna 2016, Printed in Japan

(C)Lemon Haruna 2016, Printed in Japan

京子 本書の中で、私はなんと言っても、産後に実のお母さんと大喧嘩されたところが、強く心に残りました。もう、わだかまりはないんですか?

はるな 今は仲良しです。実はこの本を出して、妊娠出産を経験した方から一番反響があったのは実母との喧嘩のところでした。やっぱりみんな、喧嘩していたそうなんですね。なんでしょうね、あの感じは……。

京子 私も産後、遠方から母親に来てもらったのに大喧嘩して、怒鳴り合いになって、母親は予定より早く帰ったんです。

はるな 同じです。私はとにかく緊張していて、「助けてほしい」「何かあったらすぐ対応してほしい」というような気持ちでいたんですが、母は完全に初孫を可愛がりに来たおばあちゃんで。そこの意識の差みたいなものが大きかったんだろうと思うんですが……陸上のトラックで、並走して水とか差し出してくれると思ってたコーチが応援席にいた、という感じでしょうか。ものすごい全力で応援してくれるしそこに何の悪気もないんだけど、私は横を走って欲しいと期待してたのに、ていう。でも、経験はあるから応援席から昔の常識とかを言ってくる、みたいな(笑)。料理はしてくれていましたし、母なりに精一杯尽くしてくれていたことは今考えるとわかるんですけど、当時はそんなことを考える余裕が全くなくて。期待と違うことにイライラしてしまって、大げんかになって。

京子 ああ……。

はるな 後で聞いたんですが、義妹が夫に「実母と喧嘩するのはよくあることだから、もしそうなっても奥さんを責めたらいけないよ」と言ってくれていたそうで……私はホルモンバランスなのかとにかく猛獣のような精神状態というか、赤子を抱えて周りをガルルル〜!って威嚇している感じになっていたと思うんですけど、夫はそういう私に寄り添おうと努力してくれていました。母にもだいぶ気を遣っている感じではあったのですが、もしかしたらそういう夫の態度も私の味方という感じで、母を孤立させたところがあったのかもしれません。
 私も傷ついてズタボロでしたが、母もヒステリックな私に傷ついているのを感じました。離れたことはお互いにとって良かったのかな、と今は思います。

京子 あの気持ち、なんなんでしょうね、当時の。

下戸山 産後あるあるだし、それのほうが母性本能っぽいですよね。

はるな そうかもしれません。産後すぐの頃は赤ちゃんへの愛着やかわいさというよりは、とにかく、この命をとりあえず長く保たせなきゃいけないっていう使命感だけで必死にやってたというか。その危機感を母に共有してもらうことができず、お互いの感情にズレがあったことが、一番の不幸だったのだと思います。

京子 うちの場合は、母が当時の子育ての常識とかを先輩面して語り出したり、赤ちゃんが泣いてたら「おなか空いとるやないの、早く!」とか勝手に赤子の気持ちを代弁して「ああしろこうしろ」と指図してくるのでイライラして喧嘩に。

はるな サポートしてほしいのに、その具体的な内容や手順が共有できてないので、チームワークがとれないんですよね。

下戸山 たとえば赤ちゃんが泣いたら「おなか空いとるやないの、おっぱい上げて~」と言うんじゃなくって、「どうする?」って言ってもらえればいいのかもしれませんね。そしたらこっちは洗濯物畳んでる途中だとして、畳みながら「あ、じゃあミルクお願いします」「オムツお願いします」とか頼めるじゃないですか。

京子 昔の育児常識から情報更新してないのに育児アドバイザーであろうとする母親だと、喧嘩になりやすいのかもしれません。妊婦さんとその夫や親向けに、産後の喧嘩を回避するための情報も、もっと広めたいですね。

幸せいっぱいと思えなくて当たり前

(C)Lemon Haruna 2016, Printed in Japan

(C)Lemon Haruna 2016, Printed in Japan

下戸山 産後、緊張感から気が立っていて、精神が不安定だったんですよね。産後うつの傾向もありだったとか。エジンバラ産後うつ質問票(EPDS)というチェックリストがあるのですが、やりましたか?

はるな 住んでいる自治体の保健師さんが自宅に訪問し、母子の健康状態をチェックする新生児訪問でやりました。でもなんかこれもおかしくないですか? たとえば『笑うことができたかどうか』という項目とかね、命の瀬戸際にいる生き物を預かっているのに笑ってる余裕なんてないよ……と。

下戸山 『不幸せな気分なので眠りにくかった』『悲しくなったり、惨めになったりした』とか。そりゃ産後なんだからそういうこともあるでしょうよって思います。

はるな 「うーんまあ、そうかもね。母と喧嘩したからそうかもね」、みたいなね。だってそうそう幸せって思えなかったですよ、生後3カ月くらいまでは。バンジージャンプの台の上に立たされて「はいっ、幸せですか?」と質問されているようなものですよね。全然幸せじゃない……。徐々に慣れていって、いろんな「こんなもんかな」という案配が分かってきて初めて幸せって思えましたけど、産後1~2カ月でね……『することがたくさんあって大変だ』って大変に決まってますよね……(笑)。
 『物事がうまくいかなかったとき自分を不必要に責めた』なども、ホルモンバランスの変化とか何も考慮してないチェックシートじゃないかと思って。当たり前なんですよそういう気持ちになるのは。死ぬかもしれないもののお世話をビクビクしながらやってるのに、不必要に自分を責めずに「生後14日、今日も可愛いな♪」なんて思ってるのは逆に不思議という……。

京子 私もそうで、この時期、自分は地獄のまっただ中にいる気分なのに、周りからは「あんた幸せなんでしょ」って思われることも辛かったです……。

はるな そうそう、だから孤独になっていくのだと思います。産後の孤独って聞いただけでは意味が分からないと思うのですが、周りとの差とか理解してもらえないし、「じゃ理解して、私今こうなのよ」って言う暇も気力もないんですよね。まして順序立てて説明したりプレゼンしたりする力もあるわけがないし……。うちはまだ、夫が極力仕事を休んで近くにいてくれたから助かりましたが、毎日帰りが遅い旦那さんだったら、孤独になるのは当然だと思いますよね。

京子 うちはまさに夫が毎日帰りが遅いタイプで、しかも産後1カ月の間になぜか出張が続いて、家にいなかったんです。それもあっていつも泣いてましたね。

下戸山 うちも夜6~7時に帰宅するなんてまず無かった。9時でも早いくらい。朝から晩まで完全に母子で、寝る以外に何していいか分からなかった、話し相手もなく。

京子 地獄のまっただ中にいるとき、自分がそれをプレゼンする元気がないってその通りだと思います。

はるな このマンガを描いたのは、そういう意味もあって。母親にも旦那にも、私はこのとき本当はこういう気持ちだったんだよ!なんて、私も直接言うことはできません。元気であろうと、プレゼン能力が戻ろうと……。描いて初めて表現できることがたくさんありました。

京子 自分はその時期が辛すぎてもう二度と出産育児を体験したくないって思ったんですけど、はるなさんは漫画に「2人目を産みたいと思ってやる!」と描かれててそれは本当にすごいなと……。

はるな 私も絶対嫌だなと思ったんですけど、なんかその嫌だっていうのも悔しい、というか。負けねえ! みたいに。なんですかね……なんだろう。
 忘れたくない気持ちもすごく強くありました。これから先、周りに出産をする人がいたら、その子に、私がこの時の気持ちや経験を忘れちゃって能天気に「おめでとう♪」とは言いたくない。そんなこと言う自分にはならないぞという気持ちなのかもしれません。孤独にしちゃうだろうなと思って。ちょっとしたことで、分かってもらえないとか思ったり、説明しようがないみたいに思わせたらいけないなと。だからまず自分が忘れたくないなというのはありますね。

京子 育児本とかにもそういうこと書いてないんですよね。書いといてよって思いました。

はるな 書いてないですよね。変にエモーショナルなこと……「大丈夫、ゆっくりで大丈夫(^^)」みたいなことは書いてあるんですけど、それじゃ何にも伝わんない(笑)。もっと具体的に、たとえば「ミルクでも育つ」とかしっかり書いておいてほしいです。

下戸山 初乳飲まなくても成長に異常は出ないとか、紙おむつでいいとか、離乳食も手作りじゃなくて平気だ死にゃしないとかそういうこと、書いてほしいですよね。びっくりするのが、ベビーフードの広告バンバン入ってる育児雑誌でも、一方で手作り離乳食を頑張る母親のページがっつりあったり。

(C)Lemon Haruna 2016, Printed in Japan

(C)Lemon Haruna 2016, Printed in Japan

母親を追いつめてもいいこと1つもない

はるな 日本は母親を追いつめすぎだと思います。もうちょっとラフでもいいかもしれない。台湾に引っ越した知人から聞いたのですが、台湾は日本の感覚でいると引くぐらいラフらしくて、赤ちゃんを産んだ女性が「子育てとかホントやだよねー!」とか人前で平気で言うんですって。文化的にそれが批判対象にならない、母親が追いつめられない風土があるらしく。逆に衛生面とかは「いいの!?」って心配になることもあるほど適当だとか。それが全部いいとは思わないですが(笑)、母親はラクになれるかもしれないな、とは思います。子連れで夜中に歩き回っている人もいっぱいいるそうで、赤子を抱っこしたまま遊んでいる人もいたりすると。

京子 それ日本のママタレだったら大炎上ですよね。

下戸山 日本の炎上って「子供がかわいそう」って言い方する人が多いじゃないですか。子供を人質に取らないでよ、って思います。

はるな 母親は二の次にされてしまうところがどうしてもありますね。人格を無視されてしまうというか。食事も、材料から買って家で調理して何品も並べる、というのが当たり前みたいに思われてますが、外国では屋台の惣菜とか、サラミとパンとか切るだけのものを買ってきて皿にのせるだけで食事になる国がいっぱいあるんですよね。もちろん一から食事を作ることも素晴らしいし、それはそれぞれの哲学でいいと思うんです。けど……絶対作らないとダメ、って思った途端にものすごく自分を追い詰めてしまうから。
 離乳食も、ちゃんと作ろうとすると本当に大変だし、たまには手抜きしたり、レトルトも今はたくさんあります。レトルトだってダメじゃないんだよ、ってもし周りの人が言ってくれたら、それだけですごくラクになるってことはあると思います。私は義妹がそう言ってくれて、その言葉だけでかなり気持ちがほぐれました。

下戸山 昨年12月に、松江で開かれた裁判員裁判で、1歳2カ月の長女を母親が絞殺してしまった事件が扱われました。法廷では、被告が几帳面な性格で、不妊治療で授かった長女の生後1週間から「育児ダイアリー」として便をした時間やミルクの量など事細かに記録していたこと、離乳食作りが大きな負担になっていたことなどが話されたんですよ。弁護人が「どんな作業が大変?」ときくと「ホウレン草の繊維を取り除くこと。葉の筋を1本1本取るのに半日以上かかる」と……。離乳食教室に通って熱心に子育てしてたんですが「ほうれん草の筋を取りましょう」って言われて、律儀にやっていたんでしょうね。様子がおかしくなって双極性障害と診断されて、同居家族が支えてやっていこうとしていた矢先に、子供を絞殺して、被告自身も首を吊ってしまったんだそうです。

はるな そうやって何もかも真面目にやって自分を追い詰めてうつになって、それで子供を殺してしまうなんて……あまりに痛ましくてめまいがしますけど、全然人ごとではないと思います。みんなそういう状態と紙一重のところで、なんとか踏ん張って耐えている。だけど世間には、レトルトなんてかわいそう、母親が手を抜くなんてありえない、みたいな意見は珍しくもないですね。それが母親を追い詰めてしまうことを知ってほしいな、と思います。

編集Tさん ご主人の妹さんは「手作りの離乳食より、お母さんが笑顔でいるほうが大事」だって言ってたんですよね。

はるな そうそう。「お母さんが笑ってることのほうがよっぽど大事だから」って。私自身も、自分が子供だったときのことを思い返すとすごくそう思うんです。

下戸山 母親がお料理作ってる時間、すごい邪魔したくなってしまいますよね。私も小さい頃そうでしたし、今、自分の娘も、私が休日に台所に立つと遊んで攻撃めちゃくちゃ仕掛けてきます。

はるな かまってほしいんですよね。だから、買ってきたものをみんなで食べてお母さんが楽しそうにしてる方がいい。うちの母親はとても真面目だったので、ちゃんと料理もしてくれたし、ひとつひとつが全てちゃんとしてたんですよ。でも私が食物アレルギーになってしまったから「お母さんのせいでごめんね」っていつも謝っていて、眉間にしわを寄せていて。
 買ってきたものでいいと言いつつ、私、アレルギーのせいで食べられないものがとても多い子供だったんですね。大豆製品、乳製品、牛肉、鶏卵がダメで。大豆がダメだと醤油もダメだし味噌汁も飲めない。味噌っぽいけど味噌じゃないとか、醤油っぽいけど実は醤油じゃないみたいな代替品をわざわざ買って、母は私用の料理を作ってくれました。そんなだから小学校の頃、給食を食べることもできなくてお弁当だったんですが、母は給食の献立表を見てその日のメニューに合わせたものも作ってくれました。卵の代替品だったら、とうもろこしで黄色っぽく……見た目をかなり似せてくれるように頑張ってくれてたんです。

全員 お母さん頑張り屋すぎる!

はるな 今考えても本当に大変だっただろうと思いますし、すごいことだな、私には出来ない、とも思います。そこに関してはものすごく感謝しています。正直、私自身は自分の肌が荒れていることに女子のくせにほとんど関心がなくて、でも母の心配そうな顔はよく覚えていて……私の肌なんかどうだっていいから、お母さんにはニコニコしていてほしい、という気持ちがありました。笑って抱きしめてもらうことが何より嬉しかったこともよく覚えています。
 だからこそ、自分の子育ては、たとえご飯がレトルトでも子供をいつでも抱きしめられるようにしようとか、自分がリラックスして笑っているようにしようと思ってます。私は宝塚ファンなので、宝塚も観て。家ではほとんどきかんしゃトーマスに画面を奪われてますけど(笑)、どうしても観たい時は我慢しない。私が楽しんでることは息子にも伝わると思うので。最近は息子も一緒に踊ったりしてます(笑)。

(C)Lemon Haruna 2016, Printed in Japan

(C)Lemon Haruna 2016, Printed in Japan

男親の新生児育児を必須にしてほしい

下戸山 最後に、はるなさんの旦那様はどんな方なんですか?

はるな 旦那はオトメンで、私より美容用品に詳しかったり、香水も毎日必ずつけるんですけどレディースを使ってて、しかも10本くらいを使い分けていて。あまり「男性」っぽくありません。産後はすごく大変だ、と彼も義妹に散々言われていたので、最初から協力的で、かなり休みを取ってくれました。産後1カ月の地獄を共有したので……「あんたがミルクやって、私は寝るから!」なんてこともままあり、彼自身が育児当事者として「しんどい~辛い~寝たい~」と感じていたので、いろいろ共有できたことはありがたかったです。
彼には妹の子供もちょこちょこ面倒をみていたという自負があったらしいんですけど、産後の1カ月、つきっきりで新生児の世話なんてもちろん初めてだから、こんなにリアルに寝られなくてしんどいんだって体感して分かり、今では周りで出産した人がいると「大変ですよね~(涙)」と話しかけてます。なんなら私よりも彼の方が精神的にしんどい時期があったかも……ものすごく用心深い性格で神経質なんですよ、彼は。だから、哺乳瓶だけじゃなく赤ちゃんが触れるものの消毒とかも絶対ちゃんとするし、そういうところでピリピリしてしまう大変さもあったみたいで。乳幼児突然死症候群も恐れていたから、親子3人で寝静まっても物音がするとパッと起きてましたね。
なので、産後クライシスはなかったかなと思います。
なかなか難しいかもしれませんが、他のご夫婦もこの産後地獄は共有したほうがいいと思います。産後1カ月、旦那さんも強制的に仕事を休むって法律を作って、各企業に遵守させてほしいぐらいです。
弁護士タレントの大渕愛子さんは、旦那さんが産後1カ月家事も育児も全部やってくれたらしいです。大渕さんはすぐ仕事に復帰されたけど、ご主人の金山一彦さんは眠れなさすぎて頭痛がした、とテレビでおっしゃってました。でもそれくらいしないと男性には伝わらないと思います。経験しないと、命を請け負わないと本当にはわからない。今まさに少子化対策に取り組んでくださってる政治家さんにも知ってほしいですね。

京子 石原慎太郎さんとかにも、知ってほしいですよね(笑)。はるなさんの旦那さんは育児を共有できる方で、良い配偶者ですね。

はるな でもちょっと、そんな中でも、険悪なムードになることはありました。どっちも眠いから。それに両方に「ちゃんとしなきゃ!」というこだわりや意識があったから、私が眠すぎて適当にほったらかしてしまい「これがこうなったら死んじゃうかもしれないんだよ!」と彼に怒られたりとか。目の前で大音量で泣かれているのに気付かず、座った姿勢のまま意識が飛んでて、自分でもハラハラするほど眠くてやばい時とかもあって。そういう、お互いに神経質になってしまうがゆえの険悪シーンはわりとありました。

下戸山 それって旦那さんも父親として子供への関心が高いから、という側面もある。

はるな それはそうですね。ともかく産後1カ月は夫婦の信頼関係を固める上でも大事なので、仕事している男親もできる限り休むようにしてほしい。もっと言えば、産後1カ月は母体を安全に休ませてあげられるようになってほしい。なんならもう、寝てるだけというように……体が本当にキツイですから。
それに、男性も育児に参加すればするほど、出来るようになっていきますし。NHKスペシャルで放送された番組『ママたちが非常事態!?』を見たんですけど、たとえば我が子の泣き声が聞こえると母親はすぐに立ち上がるんですけど、父親はずーっとパスタ食べてるんです(笑)。そもそも泣き声が男性にとってはストレスじゃなく、ほかの騒音と全く同じレベルでしか感知されないから、泣いててもあまり気にならないらしくて。でも、男性でも世話をすることでオキシトシンというホルモンが分泌されて、子供に対する愛情も深まっていくらしいので、自分から関わって、世話をしていけばいいんですよ。

京子 母親だって世話をしていかないと親にはなれないですもんね。『うむもん』、続編の予定はありますか? 『子育て編』とか。

はるな 今はないですね。子育てについて描かれた名作が世にたくさんあるので……『テンパリスト』もそうですし。私の出る幕はないです(笑)。

京子 どうもありがとうございました。

ブログウォッチャー京子

1970年代生まれのライター。2年前に男児を出産。日課はインスタウォッチ。子供を寝かしつけながらうっかり自分も寝落ちしてしまうため、いつも明け方に目覚めて原稿を書いています。

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