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“王子様”というシステムの破壊と、抑圧された女性が解放され自立を目指すこと【少女革命ウテナ考察前編】

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柴田英里

(C)柴田英里

 今週は前後編に分け、アニメ映画『少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』についてお話していきたいと思います。全39話から成るテレビアニメ『少女革命ウテナ』の放送終了から約一年半後の1999年夏に劇場公開された『少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』は、TV版の後日談ではなく、設定やキャラクターをリニューアルし、独立した物語です。

 実験的な表現や多くの比喩がこれでもかといわんばかりに詰め込まれており、初見では見落としてしまうような難解な表現が細部に散りばめられてはいますが、TV版のテーマが発展し、かつ、よりわかりやすく再構成されているため、TV版未視聴でも文句なく楽しめる傑作です。

 ですが、この作品をより楽しむためには、やはり、TV版との変更点を注視する必要があります。

TV版と劇場版の違い

 TV版と劇場版ではじめに注目すべき違いは2点です。ひとつ目は、主人公である天上ウテナと、もう一人の主人公である姫宮アンシーの髪型や眼鏡の有無といったキャラクターデザインの変更。ふたつ目は、TV版では強くて悪くてかっこ良い王子様として存在した男性達(桐生冬芽と、姫宮アンシーの兄である鳳暁生)の変化です。

 TV版のウテナのヘアスタイルは、ピンク色のストレートロングヘアーで、アンシーは紫色のウェーブがかかったロングヘアーを普段は結ってショートボブ風にアレンジしています。対して劇場版では、ウテナはピンク色のウェーブがかかったロングヘアーを結ってショートカット風にアレンジしており、アンシーは紫色のストレートロングヘアーです。TV版と劇場版では、ウテナとアンシーの髪型が入れ替わっています。

 また、TV版では眼鏡をかけていた姫宮アンシーは、劇場版では眼鏡をかけていません。アンシーは、TV版のラストで、「薔薇の花嫁」「お姫様」であることをやめ、行方不明になったウテナを探す旅に出ます。学園の外に出るにあたり、アンシーは自ら眼鏡を外し、学園で王子様を続ける兄・暁生の元に置いていったのです。

 次に、王子様の変化についてです。TV版では強くて悪くてかっこ良い王子様として、時にウテナやアンシーを導き、時に彼女たちを利用し立ち塞がった桐生冬芽と鳳暁生という二人の「王子様」は、劇場版ではずいぶん弱々しくなっており、彼女たちとデュエル(決闘)することもありません。

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柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」

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