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「ドS彼氏」は人間じゃない!? 何者でもないオンナノコの成長物語『GIRLS』

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スターチャンネル『Girls』公式サイトより

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「男って本当に変な生き物!」

現在、日本の少女マンガや恋愛映画では「ドS彼氏」が人気なのだと言う。平凡で気弱なヒロインをいじめたり貶める言動をする美形の相手役が魅力的な男性として登場し、単なるモラハラとしかとれない言動を「好意を素直に見せられない不器用さ」として解釈しているようだ。ヒロインを「自分のモノ」だと言い切り、傲岸不遜に相手をふりまわす男になぜ少女たちは惹かれるのだろうか。

ゼロ年代に大ヒットした海外ドラマ『SEX AND THE CITY』(以下、『SATC』)は「何者かである」女性たちの物語だった。署名記事を新聞に連載しているコラムニストやハーバード・ロースクール出身の弁護士である彼女たちは住宅事情の悪いNYで広々としたアパートメントにひとり暮らしし、ハイブランドの服を日常着とする生活を実現している。そんな「生まれながらに(なぜって私たち視聴者は彼女たちがそれを獲得した過程を全く目にしていないのだから!)」多くを持った彼女たちを唯一悩ませるものは恋愛であり、ドラマの起伏を形作るのもそういった男たちとのあれこれである。

シリーズ開始時など、このドラマは、ボーイフレンドカタログと言わんがばかりに毎回毎回キャリーやその友人たちが様々な職業、個性の男性たちとデートしていた。そして初めは魅力たっぷりに見えても30分のドラマの終わりには彼らの本性を暴くオチが必ずついてその短い恋は終わる、いわば恋愛ショートショートといった体をとっていた。そう、この『SATC』に登場する女性はみな「何者かである」のに対して、男性たちはその内面がまるで見えない「他者」であるのだ。恋愛における数々の奇行を披露する彼らがなぜそんな男になったかにこのドラマはまるで興味を持っておらず、それはヒロインたちも同様だった。男がそれまでひた隠しにしていた秘密を知ったとたんドン引きしてサヨウナラだ。男って本当に変な生き物!

それは交際相手も同じである。このドラマにおける「いい男」の象徴、Mr.ビッグはまさに“内面の見えない男”で、むしろそれこそが男性的魅力であると描かれている。彼はパリに転勤になることもキャリーに相談せず、距離をおいたたった数カ月の間に出会ったばかりの他の女性と結婚してしまう。キャリーは振り回されながらも、心を開いて付き合ってくれる素朴な男エイダンでなく結局Mr.ビッグを選ぶ。なぜならこのドラマではそれこそが“男”だからだ。考えてみると、キャリーに冷たい仕打ちを繰り返すこのMr.ビッグこそが、「ドS彼氏」の典型であるかもしれない。冷酷さという鎧で自分の内面を見せない男に惹かれるのは少女たちに限らないのだ。

『SATC』はそれまでの男の物語で「女は怖い」「女は男とは別の生き物だ」と描かれていた女性像をそのままなぞって男を描いているにすぎない。相手の内面など分からないのだから理解し合うことなどそもそも彼女たちは求めていないのだ。むしろこちらに内面を見せてくる男は異性と思えなくなってくる。実際にドラマの中でも「ソウルメイトは女友だちなのだ、男はその時々の楽しみにすぎない」とのセリフが言われる。だからこそその相手の愛情を測るのが、「照明付きのシューズラックのある巨大なウォーク・イン・クローゼット付き高級アパートメントのプレゼント」になるのだ。すでに「何者かであった」はずのヒロインが男に望むものが「惜しみなく自分に金を使ってくれること」である映画版のラストを見て私は正直落胆した。

(注:これから『GIRLS』のネタバレに入ります。気になる方は本編をご覧になってからお読みください)

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