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政治に無知な女の子を「オレたちのルール」で染めようとするオッサン臭

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武田砂鉄

武田砂鉄/論男時評(月刊更新)

 本サイトを読まれる方が日頃手にすることがないであろうオヤジ雑誌群が、いかに「男のプライド」を増長し続けているかを、その時々の記事から引っ張り出して定点観測していく本連載。今回は、来月10日の参議院選挙にあわせるように、各誌で組まれている選挙特集記事に注目していく。

女子「さんいんナントカって私も行けるんだっけ!?」
男子「そんなことも知らねーの? 親にでも聞いてみろバーカ」

自民党作成の選挙広報漫画(『軽いノリじゃダメですか?』)

 まず取り上げるのは、自民党が作成した広報用パンフレット『国に届け』。今回の参議院選挙から選挙権が18歳に引き下げられることを受けて、若い世代向けに作られたデジタルパンフレットだ。冒頭から始まる漫画のタイトルは「軽いノリじゃダメですか?」。

 高校3年の教室を舞台にした漫画の主人公は、ドジな女の子・安田。遅刻してきたところを先生に叱られるのだが、安田に冷たい目線を送る男の子が1人。「生徒会長を務めるかたわらイケメンで女子にモテモテ!少しツンデレだけど…その上お母さんは地元の議員さんをやってる」という朝倉。日頃、同級生と経済の話を交わしているほど頭のきれる朝倉に近付こうと、安田は「さいいんナントカって私も行けるんだっけ!?」と話しかけたものの、「そんなことも知らねーの?」とバカにされてしまう。それでも朝倉と仲良くなるための手段を探る安田は、一緒に投票に行こうと誘うのだが、「誰に投票するのか決めたのかよ。テキトーに」と、再びバカにされてしまう。

 「色々知ってるツンデレ男子」と「何にも知らないドジっ子女子」という、いまどきどの漫画編集部でも門前払いを決め込むはずの薄っぺらい設定に呆れるが、これでも自民党広報部が必死に絞り出した若者への啓蒙なのだろう。自民党広報本部の担当者は、東京新聞の取材に対して「漫画の主人公のように、政治に全く興味がない子に読んでもらい、共感を得る狙いもある」(5月27日)と答えているが、あからさまな男女差を晒すことに躊躇が無いというか、そもそも気付いていらっしゃらないのだろう。

 この漫画に対し、ネットを中心に「女性蔑視だ」との批判が相次いだが、蔑視というより、彼らが日頃からこういった頭で若い女性を視ていることを再確認するコンテンツ、と理解するべきだろう。何も知らない女性議員をオレたちのルールで染め続けてきたわけだが、どうぞ、そちらの世界だけに留めてもらいたいものである。

 東京都選挙管理委員会が作成した、若者に投票を促すサイト「TOHYO都」も、同じような構図だった。メインのイメージキャラクターは、このところテレビで頻繁に見かけるタレント、りゅうちぇる(男)とぺこ(女)。サイト内の「TOHYOガイド」なるコンテンツは、彼らが「そもそもどうやって投票したらいいのか」わからず、古市憲寿に投票方法について教えを請う構成で、りゅうちぇるが「じゃ~あ、今度のデートコースは、投票デートにしようねっ!」と誘うと、ぺこが「おいしいごはん屋さん調べとくね! たのしみーっ!」と答える。これまた、「軽いノリで選挙に行っていいんだよ」と押してくる内容だが、なぜこういう、「女子や若者は何にも知らない」という目線しか用意できないのだろう。自民党の広報パンフにあった「日本には若い力が必要です。」には頷く。なぜなら若い力は、こういう価値観を薄めたり改めたりするのに必要だからだ。

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武田砂鉄

ライター。1982年生まれ。東京都出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、2014年秋よりフリー。著書に『紋切型社会──言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社、2015年、第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞)、『芸能人寛容論──テレビの中のわだかまり』がある。2016年、第9回(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞を受賞。「文學界」「Quick Japan」「SPA!」「VERY」「SPUR」「暮しの手帖」などで連載を持ち、インタヴュー・書籍構成なども手がける。

@takedasatetsu

http://www.t-satetsu.com/

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