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昭和エログロサブカルvsおしゃれサブカル、少女のための『少女椿』が描いた復讐

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(C)柴田英里

(C)柴田英里

 実写映画『少女椿』を観てきました。

 映画館は立ち見も多く、観客には『KERA』や『Zipper』に登場するような青文字系ファッションや、主演の中村里砂がモデルをつとめる雑誌『LARME』に載っているようなガーリー系ファッションの女性が目立ちました。

 映画自体も、原作のアングラサブカル感は残しつつ、昭和90年代というSF的な時代設定がされており、「ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)」や「縷縷夢兎」など気鋭のブランド衣装と古着の着物をミックスしたスタイリングや、舞台装置にグラフィックアーティストの作品を使用するなど、原作のエログロナンセンス全開な雰囲気とは少々異なる、アングラポップでお洒落な仕上がりになっていました。

 昭和90年代というSF的な時代設定やアングラポップな描写の背景には、近年の表現者や施設責任者・出版編集者などによる表現の自主規制や自粛といった傾向への、「世の中の汚いものは本当に汚いのか、タブーは本当にタブーなのか」「汚いものを隠して奇麗な世界が出来るとは思えない」というTORICO監督の態度と問題提起がありますが、こうしたアングラポップな描写自体に賛否両論あるようです。

まずは「原作と違う!」という不満

 『少女椿』のあらすじなどを簡単に説明すると、浪花清雲の母子の不幸な別れと再会がテーマの紙芝居『少女椿』(ラストはハッピーエンド)を下敷きに、社会的にタブーとされている事象をダークかつエログロ、過激かつ露悪的に描いた丸尾末広の代表作が原作。父が蒸発、病気で寝たきりの母を亡くし(死因は女性器からねずみが侵入し内蔵を食い破られるという衝撃的なもの!)た花売りの幼い少女みどりが、山高帽をかぶった老人に騙され見世物小屋へ売り飛ばされ、その後もたくさんの不幸な目にあい、新加入した小人の西洋手品師ワンダー正光に救われそうになるが結局ままならないというものです。

 いわゆる「ガロ系」の作品の中でも特に人気が高く、昭和エログロサブカルに、白土三平やつげ義春的な「昭和貧困のリアルと全共闘左翼的ジャーナリズム」を求める層と、女子中高生などの「受動的な少女のままならなさと反抗」を見いだす層を中心に、30年以上愛されている作品です。

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柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」

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